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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第059話 極振りヒーラー、魔眼の戦い2

「……フルグラウスの時みたいに、バリアを極限まで積んでみる!」


ステラが顔を上げた。目に、光が宿る。


「え?」

「あの時と同じ!バリアを限界まで積んで、反射ダメージで倒す!」


ヒマワリの表情が、パッと明るくなる。


「そうか……! じゃあ、私が視線を全部引きつける!その間にバリアを積んで!」

「えっ、でも危ないよ!」

「大丈夫!《陽炎》があれば視線は当たらないから!」


ヒマワリが自信たっぷりに笑う。


「それに、《蜃気楼》もまだ温存できてる。全部使えば、絶対避けきれる!」

「……うん、分かった!お願い、ヒマワリちゃん!」


二人は頷き合い、再び立ち上がった。

ヒマワリが前に出る。剣を構え、ベルゼノアを睨みつけた。


「《陽炎》!」


周囲の空気が揺らぎ始める。視界が歪み、ヒマワリの姿がぼやけた。


「《蜃気楼》!」


三体の虚像が現れ、四人のヒマワリがベルゼノアを囲む。どれが本物か、見分けがつかない。


「こっちだよ!当ててみなよ!」


ヒマワリが挑発するように叫ぶ。剣を振り回し、大きく動き回った。

ベルゼノアが反応する。巨大な眼球が、ヒマワリに向いた。


ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ!


視線が次々と放たれる。赤い光線が、四人のヒマワリに向かって飛んでくる。

だが――


全て虚像を貫くだけだ。

陽炎で揺らぐ視界では、狙いが定まらない。光線は空を切り、壁や床に着弾する。


「全然当たらないね!」


ヒマワリが笑いながら、さらに動き回る。

《加速》で縦横無尽に駆け巡り、ベルゼノアの視線を完全に引きつけた。



その隙に――

ステラが《ヒール》を連打し始める。


「《ヒール》!《ヒール》!《ヒール》!」


回復魔法が次々と発動し、バリアが積み上がっていく。

光の膜が何重にも重なり、体を包んだ。


「もっと…もっと…!」


ステラは休むことなく、ヒールを撃ち続ける。MPが減っていくが、気にしない。

今は、バリアを積むことだけに集中する。

バリアが厚くなり、眩いほどの光を放ち始めた。



一方、ヒマワリは完璧に囮を演じていた。

ベルゼノアの全ての視線が、ヒマワリに向いている。

光線が雨のように降り注ぐが、紙一重で避け続けている。


「こっち、こっち!」


ヒマワリが虚像を操りながら、ベルゼノアの周りを駆け回る。

本物はどこにいるのか、ベルゼノアには分からない。


しかし――

時間が経つにつれ、ベルゼノアの攻撃が激化し始めた。

触手がより激しく蠢き、視線の数が増える。一本、二本、五本、十本――


「うわっ、数が増えた!?」


ヒマワリが驚く。視線が、あらゆる方向から放たれ始めた。

範囲も広がり、回避するのが難しくなる。



「くっ……!」

ヒマワリは《加速》を限界まで使い、視線の隙間を縫って動く。

陽炎が揺らぎ、虚像が翻弄し、ヒマワリの高いAGIが全てを回避する。


だが――


「っ……MP、結構減ってきた……」


ヒマワリのMPが、徐々に減っていく。《陽炎》と《蜃気楼》の維持に、MPが必要だ。

このままでは、長くは持たない。


「ステラ、私のMP、そろそろ限界…!」

「もうちょっと…もうちょっとだけ!」


ステラが叫ぶ。バリアは、まだ十分ではない。

もっと積まなければ、反射ダメージで倒しきれない。


「わかった!全部避けきってみせる!」


ヒマワリは歯を食いしばり、最後の力を振り絞る。視線が、さらに激しく降り注ぐ。


ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ!


光線が、まるで弾幕のように襲いかかる。だが、ヒマワリは避け続ける。

《加速》で跳び、《陽炎》で惑わし、《蜃気楼》で翻弄する。


一秒、二秒、三秒――

時間が、永遠のように長く感じられた。


そして――


「……いける!」


ステラのバリアが、限界突破レベルまで積み上がった。

全身が眩い光のバリアに包まれ、まるで天使のように輝いている。


「ヒマワリちゃん、ありがとう!交代!」

「オッケー!後は任せた!」


ヒマワリが後退し、MP回復ポーションを取り出して一気に飲み干す。

MPが回復し、息を整えた。

ステラが前に出る。杖を高く掲げ、ベルゼノアを睨みつけた。


「《挑発》」


周囲に赤色の波紋が走り、ベルゼノアの全ての魔眼が、ステラに向いた。

触手が激しく蠢き、視線が集中する。


――そして。


ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ、ビシュッ!


全ての視線が、同時に放たれた。

十数本の光線が、ステラに向かって一斉に飛んでくる。まるで、光の槍のように。

バリアに、凄まじい衝撃が走る。


バリバリバリッ!


バリアが削られ、光が弾ける。状態異常も次々と付与された。


【呪い】【麻痺】【毒】【混乱】


「《クリーンセンス》!」


ステラが即座にスキルを発動させる。

光が体を包み、状態異常が解除されたが、また付与される。

ループが続く。だが、ステラは耐え続ける。


《リフレクト・ヴェール》が発動し、バリアが受けたダメージの一部が、反射されてベルゼノアに返っていく。

光線が、そのままベルゼノアに跳ね返る。


ドガッ、ドガッ、ドガッ!


反射ダメージが、ベルゼノアの眼球に叩き込まれる。


「まだ…まだ耐えられる!」


ステラが叫ぶ。バリアは削られているが、まだ厚い。まだ耐えられる。


「頑張ってステラ!」


ヒマワリが後方から援護射撃を始める。

回復したMPで、魔法を放った。


「《ファイアボルト》!」


火の弾が、ベルゼノアに直撃する。

追加ダメージが入り、ベルゼノアのHPが削られていく。

視線が、さらに激しくなる。


ベルゼノアが、全力で攻撃してくる。光線の数が増え、威力も上がる。


だが――

反射ダメージも増大する。

受ければ受けるほど、反射ダメージが増える。ベルゼノアのHPが、みるみる減っていく。


「もう少し……!」


ステラが歯を食いしばる。

バリアがどんどん削られていくが、まだ耐えられる。

《リジェネ》が体力を回復し、《ドレイン・オーラ》がHPを吸収する。



そして――

蓄積された光の力が、最大に達した。


「《セラフィック・リザーブ》!」


ステラが叫ぶ。

体に蓄積された光の力が、聖属性の大爆発として解放された。


ドゴォォォォォン!


聖なる光が、ベルゼノアを包み込む。

反射ダメージと聖属性爆発のダブルパンチが、ベルゼノアの本体を直撃した。


「ギャアアアアアァァァ――!」


ベルゼノアが悲鳴を上げる。

巨大な眼球が砕け、触手が崩壊していく。


光が収まった後――

ベルゼノアは、光の粒となって消えていった。

静寂が、広間に戻る。


「……勝った……?」


ステラが呟く。


「勝ったよ!」


ヒマワリが駆け寄ってくる。笑顔で、ステラの肩を叩いた。


「やったね、ステラ!」

「う、うん…なんとか…」


ステラは座り込む。MPがほぼゼロ、疲労困憊だ。体が重く、動けない。


その時――

【スキル習得:呪い無効】

【スキル習得:麻痺無効】

【スキル習得:毒無効】

【スキル習得:混乱無効】

ステラの視界に、メッセージが表示された。


「え……?」

「どうしたの?」

「スキル、覚えた……状態異常無効のスキル……」


ステラが驚いた様子で呟く。


「すごい!ボス撃破報酬だね!」


ヒマワリが嬉しそうに笑う。


「ヒマワリちゃんが完璧に囮になってくれたおかげだよ…ありがとう」

「えへへ、《陽炎》、役に立った!」


ヒマワリが嬉しそうに笑う。

二人は少し休んでから、ドロップアイテムを確認した。

地面に、四つの宝石が転がっている。


《古の宝石×4》


「これで宝石、合計…えっと…」


ヒマワリが指を折って数える。


「全部で三十個!」

「うん!イベント、大成功だね!」


ステラが笑顔で答える。

二人は顔を見合わせ、笑い合った。

疲れたけど、楽しかった。

そして――

達成感に満ちた笑顔が、広間に響いた。




イベント終了まで、残り一時間。


他のプレイヤーに見つかれば、最後の一悶着になるかもしれない。

二人は視線を交わし、無言で頷き合った。


「……ここ、少し奥に入ろう」

「うん。静かそう」


岩陰に身を寄せ、草木に視界を遮られる位置を選ぶ。

ヒマワリは周囲を警戒し、ステラは気配遮断用のバフを控えめに展開した。

派手な行動はもうしない。ただ、嵐が過ぎるのを待つだけだ。


やがて、遠くの足音や戦闘音も聞こえなくなった。


二人は並んで腰を下ろし、砂漠の向こうに沈みゆく夕日を眺める。

赤く染まった空が、ゆっくりと夜へと移り変わっていった。


そして――


【第2回イベント「秘境アヴァロンの踏破」終了】


システムメッセージが、静かに表示される。


「……終わったね」

「うん。長かったけど、楽しかった」


イベントが終わり、張り詰めていた空気が、ふっとほどける。

もう、誰にも追われることはない。

静かな時間が、二人を包み込んだ。


「次は、何しようか」

「うーん……まだ、第二階層も全部探索してないし」

「そっか。じゃあ、また冒険だね」

「うん!」


二人は顔を見合わせて笑い合い、

それぞれの胸に、次の旅路を思い描く。


こうして――

第2回イベントは、静かに幕を閉じた。


次は3/7 21時投稿予定

お楽しみに!

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