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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第055話 極振りヒーラー、砂漠探索と砂時計の試練

さらに砂漠を進むと、視界に奇妙なものが映り込んできた。


「……あれ、何?」


ステラがヒマワリの背中から指差す。

遠く、砂の海の中に――不自然なほど目立つ何かが立っていた。


「オアシス……?いや、違う」


ヒマワリは目を凝らす。

近づくにつれ、その正体が明らかになっていく。

大きな砂時計のオブジェだ。人の背丈の三倍はある、巨大なもの。

周囲には、複数の石柱が円形に立ち並んでいる。

まるで、何かの儀式場のような光景だ。


「砂時計……?」

「地図にあった、《砂時計の試練》かな」


ヒマワリはステラを下ろし、砂時計に近づいた。

砂時計の下には、石の台座がある。平らな面に、手形のような窪みが彫られていた。


「これ、触っていいのかな」

「試練って書いてあったから……多分、何かの仕掛けだと思う」


ヒマワリは慎重に手を置いた。

その瞬間――

砂時計が動き出した。

上部の砂が、ゆっくりと下へと落ち始める。サラサラという音が、静かに響いた。


「動いた……!」


同時に、周囲の石柱が淡い青白い光を放った。

光は表面を這うように走り、砂の上に長い影を落とす。


「……影?」


ステラが目を凝らす。


影が、動いていた。

太陽は変わらないのに、影だけがゆっくりと位置を変えていく。

まるで、時計の針のように。


「砂時計が落ちるにつれて、影の位置が変わってる」


ヒマワリが気づく。

砂時計の砂が落ちるたびに、石柱の位置が微妙にずれ、影の角度が変化していく。


「これ、制限時間があるってこと?」

「たぶん。砂が全部落ちる前に、何かしないといけないんだと思う」


二人は周囲を観察する。

石柱は全部で十二本。それぞれが異なる場所に立ち、異なる方向に影を伸ばしている。


「……影が重なる場所を探すんじゃないかな」

「ありそう。でも、地上からだと見づらいな」


 少し考えたあと、ステラが言った。


「ヒマワリちゃん、私を高いところに連れて行って」

「高いところ?」

「うん。上から見れば、影の全体が見えるかも」

「なるほど……!」


ヒマワリはステラを背負い、近くの岩場へと駆けた。《加速》を使い、素早く登る。

岩の上からなら、砂時計の周囲全体が見渡せる。


「よし、ここなら見える」


ステラは岩の上に座り、周囲を見渡した。高い視点から、影の配置を確認する。


「ヒマワリちゃんは、影が重なりそうな場所を探して!私が上から指示する!」

「了解!」


ヒマワリは再び砂の上へと降りた。剣を構え、周囲を探索し始める。

砂時計の砂は確実に落ちていき、残された時間は限られている。


「まず、右側!」


ステラが叫ぶ。

ヒマワリは右側へと駆ける。《加速》を使い、一気に距離を詰めた。

だが――


「ここは……影が二本だけ」

「違うね。次、前方!」


ヒマワリは方向を変え、砂時計の前方へと移動する。砂を蹴立て、素早く駆けた。


「ここも……二本」

「まだ足りない。左の岩陰!」


ステラの声が響く。

ヒマワリは左へと向かった。岩の陰、石柱が密集している場所。


「ヒマワリちゃん、そこ!影が三本重なってる!」

「了解!」


ヒマワリは指定された場所へと飛び込んだ。

確かに、三本の影が重なっている。長い影、短い影、斜めの影――それらが一点で交差していた。


「ここだ……!」


ヒマワリは剣を砂に突き立てる。目印として、その場所を固定した。

砂時計の砂が、最後の一粒まで落ちる。


カラン――


澄んだ音が響いた。

その瞬間――


ヒマワリの足元の砂が、崩れ始めた。


「うわっ!?」


砂が渦を巻き、下へと吸い込まれていく。


「ヒマワリちゃん!」

「大丈夫!」


ヒマワリは《跳躍》で後方に飛び退いた。砂の渦から離れ、安全な場所に着地する。

砂が崩れ去った後、そこには階段が現れていた。


石造りの階段。地下へと続く、暗い道。


「……地下、あったんだ」


ステラが驚いた様子で見つめる。


「試練、クリアしたってことかな」

「みたいだね。降りてみる?」

「うん」


ヒマワリはステラを背負い、階段を降り始めた。

一段、一段。慎重に足を進める。

階段を降りきると、薄暗い地下通路に出た。

壁は石で造られ、所々に苔が生えている。天井からは、微かに光が漏れていた。隙間から差し込む、太陽の光だ。


「これ、迷路だね」


ステラが呟く。

通路は複数に分かれており、どこに続いているのか分からない。曲がりくねり、入り組んでいる。


「うん。慎重に進もう」


ヒマワリは剣を抜き、警戒しながら進む。

最初の分岐点で、左の道を選んだ。壁に手を当て、道を確認しながら。


しばらく進むと――


「……モンスターがいる」


前方に、何かが動いている。

砂で形作られた、人型のモンスター。《砂のエレメンタル》だ。

そして、もう一体。同じ姿のエレメンタルが、通路の奥に立っていた。


「二体……」


ヒマワリはステラを下ろし、剣を構える。


「新しいスキル、試してみる?」

「うん。任せて」


ヒマワリは深呼吸し、スキルを発動させた。


「《蜃気楼》!」


その瞬間――

ヒマワリの周りに、三体の虚像が現れた。全く同じ姿、同じ構え。四人のヒマワリが、通路に立つ。

エレメンタルが反応する。砂の体が揺らぎ、注意が分散した。

どれが本物なのか、判断できないようだ。


「よし……」


本物のヒマワリは、静かに移動を始める。

虚像も同じように動くが、本物だけが剣を握る手に力を込めていた。

エレメンタルが、虚像の一体に向かって砂の刃を放つ。

虚像が砂の刃を受け、消えた。


「今だ!」


ヒマワリは《加速》でエレメンタルの背後に回り込んだ。残像が通路に残る。


「《サンダーラッシュ》!」


雷を纏った三連撃が、エレメンタルの背中に叩き込まれる。一撃、二撃、三撃――全てが直撃した。

エレメンタルの体が崩れ、砂となって崩れ落ちる。


「すごい!全然気づかれてない!」


ステラが感嘆の声を上げる。

もう一体のエレメンタルが、残りの虚像に向かって砂の刃を放つ。

虚像が消える。

だが、本物のヒマワリは既に移動していた。《加速》で側面に回り込み、剣を構える。


「《ウィンドスラッシュ》!」


風の刃が、エレメンタルを切り裂いた。体が真っ二つに割れ、砂となって崩れる。


「……よし」


ヒマワリは剣を下ろす。虚像も消え、通路に静寂が戻った。


「《蜃気楼》、すごく使えるね」

「うん。敵を混乱させられる」


ヒマワリが微笑む。

二人はさらに奥へと進んだ。

通路は複雑だったが、壁に印をつけながら進むことで、迷わずに済んだ。


やがて、最深部に辿り着く。

そこは小さな部屋になっており、中央に宝箱が一つ置かれていた。


「宝箱……!」


ステラが駆け寄る。

ヒマワリが蓋を開けると――


中には、《古の宝石》が一つ。

そして、砂漠用の装備が入っていた。軽くて丈夫そうな、砂色のマントだ。


「宝石、十八個目だね」

「うん。順調、順調」


二人は宝箱の中身を確認し、装備を整えた。

「じゃあ、戻ろう」

ヒマワリはステラを背負い、来た道を戻る。

階段を上がり、地上へと出た。



その瞬間――


「……え?」


空が、急に暗くなった。

太陽が雲に隠れたわけではない。砂が、空を覆っている。


「砂嵐……!?」


ヒマワリが叫ぶ。

遠くから、轟音が聞こえてくる。砂の壁が、こちらに向かって迫っていた。


「これ、まずい!避難場所を探さないと!」

「階段、戻ろう!」


ステラが振り返ると同時に――

背後で、ゴゴゴと重い音が響いた。

二人が出てきたばかりの階段が、砂に呑まれて崩れていく。

地下遺跡の入口が、みるみるうちに砂で埋まっていった。


「嘘……!塞がった!?」

「くっ……!別の場所を探さないと!」


ヒマワリは周囲を見回す。砂漠の中、遮るものは何もない。


「あっちに岩場が……!」


ステラが指差す。

ヒマワリはステラを背負って、全速力で駆けた。

《加速》を限界まで使い、砂を蹴立てて走る。

岩場に辿り着き、小さな洞窟を見つけた。


「入れる……!」


二人は洞窟の中へと滑り込んだ。ギリギリのタイミングだった。


直後――

砂嵐が、洞窟の入口を叩く音が響いた。


ゴォォォォォ――


激しい風と砂の音。外は、もう何も見えない。


「……危なかった」


ヒマワリが息を吐く。


「うん……」


ステラも安堵の表情を浮かべた。

二人は洞窟の奥へと進み、少し広い場所に座った。

暗い洞窟内。外の光が遮られ、ほとんど何も見えない。


「明かり、欲しいね」

「じゃあ……」


ヒマワリはバッグからランプを取り出し、そっと明かりを灯した。

ゆらゆらと揺れる淡い光が、焚き火のように二人の周囲を静かに照らし出す。


「これで、少しは見えるね」

「うん」


二人は炎の前に座り、砂嵐が過ぎるのを待った。

外では、砂が洞窟を叩き続けている。だが、中は静かだ。


「......そういえば、これまでいろいろあったね」


ステラが呟く。


「うん。フルグラウスとか、本当に強かった」

「水鏡も、変な戦いだったよね」


ヒマワリが苦笑する。


「自分のコピーと戦うなんて、思ってもなかった」

「あれ、不思議な感じだったね。私のコピー、ずっと同じ魔法ばっかり撃ってて」

「うん。連携も取れてなかったし......本物の私たちとは、全然違った」


ステラがランプの灯りを見つめながら続ける。


「でも、スキルは完璧にコピーされてたよね。私が使える魔法、全部使ってた」

「あの光......三回もスキャンされたからだね」

「ヒマワリちゃんは一回もスキャンされなかったから、水鏡のヒマワリちゃんは基本スキルしか使えなかったんだよね」

「そうそう。だから、戦いやすかった」


ヒマワリが笑う。


「でも、ステラの水鏡はバカでよかったね」

「......バカって言わないでよぅ」


ステラが頬を膨らませる。


「あ、ごめん。そういう意味じゃなくて!」


ヒマワリが慌てて訂正する。


「戦い方が単調で助かったって意味!」

「分かってるけど......私のコピーだし......」

「だから違うって! ステラは状況見て判断できるじゃん。水鏡は、ただ同じこと繰り返してただけ」

「......まあ、そうだけど」


ステラも笑顔を見せた。


「でも、あれで自信ついた気がする」

「私も。あの戦い、めちゃくちゃ怖かったけど......勝てたときは嬉しかった」

「新しいスキルも手に入ったし、順調だね」

「宝石も、十八個集まったし」


二人は笑い合う。


「......ヒマワリちゃんと一緒だから、楽しいんだと思う」


ステラが小さく言う。


「え?」

「一人だったら、きっとここまで来れなかった。怖くて、諦めてたかも」


ステラは炎を見つめる。


「でも、ヒマワリちゃんがいてくれるから......頑張れる」

「......私も」


ヒマワリが微笑む。


「ステラと冒険するの、楽しい。毎日、新しいことがあって......飽きない」

「えへへ」


ステラが嬉しそうに笑う。

二人は並んで座り、炎を見つめた。

外の砂嵐は、まだ続いている。

だが、ここは安全だ。

二人で、一緒に。

時間が、ゆっくりと流れていく。


次は3/3 21時投稿予定

お楽しみに!

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