表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/57

第053話 極振りヒーラー、水の神殿4

扉の向こうは、想像以上に広大な空間だった。


円形の広間。天井は高く、壁一面に水が流れ落ちている。

床は浅く水に覆われ、中央には何もない。


「……誰もいない?」


ステラが不思議そうに呟く。


「いや、何かある」


ヒマワリは剣を構えたまま、警戒を解かない。

二人は慎重に中央へと歩を進める。

水音だけが響く、静かな空間。


広間の中央に差し掛かったとき――

水面が、激しく揺れた。


「きゃっ!?」


二人の足元から、水が吹き上がる。

柱のように立ち上った水が、二人の前で渦を巻き――


人の形を取った。

一つは、杖を持った少女、水鏡のステラ

もう一つは、剣を持った少女、水鏡のヒマワリ


「……嘘」


ステラが息を呑む。


「私たち……?」


水で作られた、ステラとヒマワリ。


装備も、姿も、完璧に再現されている。

水鏡のステラが杖を掲げ、水鏡のヒマワリが剣を構える。


「まさか、こんな……」


ヒマワリも動揺を隠せない。

水鏡の二人は、無言のまま戦闘態勢を取った。

その動きは機械的ではなく、まるで本物のように滑らかだ。


「ヒマワリちゃん!」


ステラが即座に杖を掲げる。


「《鳳翼転生》!」


不死鳥の力が、ステラ自身を包む。光の翼が一瞬だけ背中に現れ、そして消えた。

続けて、ヒマワリにも同じスキルをかける。


「完全蘇生……ありがとう」


ヒマワリが頷く。万が一のときの保険。これで、一度だけは死を回避できる。


「《プロテス》!」


防御強化の光が、二人を包んだ。VITが大幅に上昇する。体が軽く、しかし硬くなったような感覚。


「《ヒール》!《リジェネ》!《再生の祝炎》!」


ステラは自分に回復魔法を重ねがけする。

リストア・ヴェールが展開され、光の膜が体を覆った。

これだけ重ねれば、多少の攻撃は耐えられるはずだ。


「準備、完了……!」


その瞬間――

水鏡のヒマワリが、《加速》で飛び出した。

水を蹴る音すら聞こえない。ただ、視界に残像が走る。


「速い!」


本物のヒマワリも《加速》で迎え撃つ。

剣と剣がぶつかり合い、火花が散った。金属音が広間に響く。


「《ストライク》!」


水鏡のヒマワリが基本攻撃を繰り出す。シンプルな一撃だが、その速度は本物と変わらない。

本物のヒマワリは剣で受け止め、力で押し返した。


「《サンダーラッシュ》!」


雷を纏った三連撃を放つ。一撃目が水鏡のヒマワリの肩を切り裂き、二撃目が脇腹を貫く。三撃目――

水鏡のヒマワリは《跳躍》で大きく飛び上がり、回避した。

だが、同じ技では返してこない。着地と同時に、再び《ストライク》で接近してくる。


「……使ってこない?」


ヒマワリが気づく。技のレパートリーが、明らかに少ない。


「《フェニクス・フレア》!」


ステラが水鏡のヒマワリに向けて炎を放つ。不死鳥の形をした炎が、一直線に飛ぶ。

だが――


「え?」


水鏡のステラが、全く同じタイミングで同じスキルを放った。

二つの炎がぶつかり合い、激しい爆発を起こして相殺される。熱と光が広間を照らした。


「同じ動きを……!」


ヒマワリが水鏡のヒマワリから距離を取る。《加速》で後方に跳び、間合いを広げた。

水鏡のヒマワリが追撃してくる。《スラッシュ》を繰り出しながら、水面を蹴って迫る。


「《ウィンドスラッシュ》!」


本物のヒマワリは風の刃で迎撃する。風を纏った斬撃が空気を切り裂き、水鏡のヒマワリに直撃した。

水鏡のヒマワリが吹き飛ばされる。体が一瞬、水に戻りかけて――すぐに元の形に戻った。


「風の技、使ってこない……」


ヒマワリの表情が険しくなる。明らかに、動きに偏りがある。

水鏡のステラが詠唱する。杖を掲げ、光を集めた。


「《ヒール》!」


水鏡のヒマワリを回復し、光の膜が、傷ついた体を包む。


「回復も、プロテスも……使える」


ステラが呟く。自分が使えるスキルを、全て使っている。


「ねえ、ヒマワリちゃん。水鏡の私、全部のスキル使えてる気がする」

「うん……」


ヒマワリは水鏡のヒマワリを観察する。剣の構え、足の運び、全てが本物と同じだ。

だが、使ってくるスキルは――

《ストライク》《スラッシュ》《跳躍》《加速》――

基本的なスキルは使ってくる。

だが、《ウィンドスラッシュ》《サンダーラッシュ》《ストームスタンス》は使わない。

本来なら、今の状況で使ってきてもおかしくないのに。


「待って……あの光!」


ヒマワリが気づく。頭の中で、点と点が線で結ばれていく。


「二層で、ステラが三回スキャンされた。あれ、スキルを読み取られてたんだ!」

「え……」

「だから水鏡のステラは、全部のスキルを使える。でも、水鏡の私は――」

「スキャンされてないから、基本スキルしか使えない……?」


ステラが目を丸くする。


ヒマワリの推測は、正しかった。

あの光は、スキルを読み取るためのもの。

スキャンされるたびにスキルが読み取られ、三回目のスキャンで全てのスキルをマネされるようになる。

そうして集められた情報が、この水鏡を作り上げていた。

だからこそ、水鏡のステラは完璧で、水鏡のヒマワリは不完全なのだ。


「そういうこと!」


水鏡のヒマワリが再び《加速》で接近してくる。剣を構え、一直線に迫る。

本物のヒマワリは《ストームスタンス》を発動させた。

風と雷を纏う。体が軽くなり、剣に力が宿る。


「《サンダーラッシュ》!」


雷を纏った連撃が、水鏡のステラに叩き込まれる。一撃、二撃、三撃――全てが直撃した。


「効いた……!」


水鏡のステラの体が揺らぎ、一部が水に戻る。

だが、水鏡のステラは《ヒール》で即座に回復する。

リストア・ヴェールも展開され、ダメージを軽減した。まるで、本物のステラと同じように。


「《プロテス》!」


水鏡のステラが、水鏡のヒマワリに防御強化をかける。

光が水鏡のヒマワリを包み、その体が一層硬くなる。


「厄介……!」


ヒマワリは舌打ちする。完璧に再現された回復役。

これでは、いくら攻撃しても倒しきれない。

水鏡のヒマワリが再び接近してくる。

《加速》で距離を詰め、剣を振るう。


本物のヒマワリは《ウィンドスラッシュ》で迎撃した。

風の刃が水鏡のヒマワリを襲い、その動きを止める。

風の刃が水鏡のヒマワリを弾く。体が大きく後方に飛ばされた。

その隙に、水鏡のステラが詠唱する。杖を高く掲げ、炎の力を集めた。


「《フェニクス・フレア》!」


炎が本物のヒマワリに向かって飛ぶ。不死鳥の形をした炎が、軌道を描いて迫る。


「まずい――!」


ヒマワリは《加速》で横に跳ぶ。炎が水面に着弾し、激しく蒸気が立ち上る。

間一髪の回避だった。もう少し遅ければ、直撃していた。


「助かった……!」


ヒマワリは即座に水鏡のヒマワリと距離を取る。《加速》で後方に跳び、間合いを広げた。

だが、水鏡の二人は執拗に追ってくる。水面を蹴り、距離を詰めてくる。


「連携が……」


ヒマワリが気づく。二人の動きを観察しながら、違和感の正体を探る。


「いや、違う」


水鏡の二人の動きを観察する。

水鏡のヒマワリは、接近戦を仕掛けてくる。

だが、水鏡のステラとの連携は――取れていない。


本物の二人なら、ステラが敵の動きを止め、ヒマワリが畳み掛ける。

あるいは、ヒマワリが敵を引きつけ、ステラが援護する。

だが、水鏡の二人は、ただ個別に攻撃しているだけだ。


「別々に動いてる……!」


ヒマワリは《加速》で水鏡のヒマワリから離れた。水面を強く蹴り、一気に距離を開ける。

水鏡のステラが、距離が開いたことに反応し、杖を向けて詠唱を始めた。


「《フェニクス・フレア》!」


炎を放つ。

ヒマワリはさらに距離を取る。《加速》で横に跳び、回避する。


「《フェニクス・フレア》!」


また炎。今度も同じスキル。


「《フェニクス・フレア》!」


さらに炎。三度目も、同じスキルを繰り返す。


「……連打してる」


ヒマワリの目が鋭くなる。パターンが見えてきた。

本物のステラは、状況を見て魔法を使い分ける。

回復が必要なら回復を、攻撃が必要なら攻撃を。

距離が離れていても、《ドレイン・オーラ》や《リジェネ》で持久戦に持ち込むことだってできる。


だが、水鏡のステラは――

距離が離れると、ただ《フェニクス・フレア》を連打するだけ。思考がない。判断がない。


「ステラ!」


ヒマワリが叫ぶ。


「水鏡は、連携が取れてない!別々に動いてる!」

「え?」

「距離を離せば、水鏡のステラは炎を連打するだけ!」


ステラは水鏡のステラを見る。

杖を掲げ、また炎を放とうとしている。

確かに、ただ炎を放ち続けている。状況判断をしていない。


「じゃあ――」

「うん。そこが突破口だ!」

「作戦を変える!」


ヒマワリは剣を構え直す。刀身が、青白い光を反射した。


「ステラ、水鏡のステラを引きつけて!」

「え、私が!?」

「うん。距離を保って、炎を撃ち合って。MPを削るんだ!」


ステラは一瞬躊躇したが、すぐに頷いた。


「分かった!任せて!」


ステラは水鏡のステラから距離を取る。水面を蹴り、後方へと跳んだ。

水鏡のステラが反応する。杖を向け、詠唱を始めた。


「《フェニクス・フレア》!」


炎が放たれる。


「《フェニクス・フレア》!」


ステラも同じスキルで応戦する。二つの炎がぶつかり合い、激しく爆発した。

その間に、ヒマワリは水鏡のヒマワリと対峙する。


「さあ、剣士らしくタイマン勝負だ」


ヒマワリは剣を構える。水鏡のヒマワリも、全く同じ構えで剣を握った。鏡を見ているようで、妙な感覚だ。


「《加速》!」


二人が同時に動く。水面を蹴る音が重なり、剣と剣がぶつかり合った。火花が散り、金属音が響く。


「《スラッシュ》!」


水鏡のヒマワリが斬撃を放つ。重い一撃が、真っ直ぐに振り下ろされる。

ヒマワリは剣で受け止め、力で押し返した。腕に痺れが走るが、踏ん張る。


「《サンダーラッシュ》!」


雷を纏った三連撃が、水鏡のヒマワリを襲う。一撃目が肩を、二撃目が腹を、三撃目が――

水鏡のヒマワリは《跳躍》で高く飛び上がり、回避した。空中で体を捻り、着地の体勢を整える。


「《ファイアボルト》!」


空中から、火の弾が飛んでくる。赤い光の尾を引きながら、真っ直ぐに迫った。


「同じ魔法なら――」


ヒマワリは剣を構え直す。


「《ウィンドカッター》!」


風の刃が火の弾を切り裂き、消滅させた。炎が散り、消えていく。

着地した水鏡のヒマワリが、間を置かず魔法を放つ。杖を――いや、剣を掲げ、雷を呼ぶ。


「《サンダーボルト》!」


雷撃が飛んでくる。青白い光が視界を焼く。

ヒマワリは《加速》で横に跳び、回避した。雷撃が水面に着弾し、激しく弾ける。水が爆発的に蒸発した。


「《ストームスタンス》!」


風と雷を纏う。体が軽くなり、剣に力が宿った。風が、雷が、体の周りを駆け巡る。


「これは――使えないだろ!」


ヒマワリは一気に距離を詰める。水面を蹴り、残像が残るほどの速度で迫った。

水鏡のヒマワリが剣を構えるが、反応が遅い。


「《ウィンドスラッシュ》!」


風の刃が水鏡のヒマワリを襲う。体が大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。




一方、ステラは水鏡のステラと炎の撃ち合いを続けていた。


「《フェニクス・フレア》!」


水鏡のステラが放つ。また同じスキル。何度目だろう。


「《フェニクス・フレア》!」


ステラも応戦する。二つの炎がぶつかり合い、相殺される。爆発の熱が、肌を焼いた。

だが、完全に相殺されるわけではない。

余波がステラのバリアに当たり、少しずつ削られていく。

光の膜が揺らぎ、薄くなっていく。


「くっ……」


バリアの光が弱まる。もうすぐ消えそうだ。


「《ヒール》!」


ステラは自分を回復し、バリアを再展開した。

光の膜が再び体を覆い、輝きを取り戻す。


「《フェニクス・フレア》!」


水鏡のステラが、また同じスキルを放つ。パターンが全く変わらない。

まるで、それしか知らないかのように。


「ずっと同じ……!」


ステラも《フェニクス・フレア》で応戦する。

炎と炎がぶつかり合い、熱と光が広間を満たした。

蒸気が立ち上り、視界が白く霞む。



ヒマワリは水鏡のヒマワリとの戦いを続ける。


「《ウォーターショット》!」


水鏡のヒマワリが水の弾を放つ。複数の弾が、弧を描いて飛んでくる。


「《アースバレット》!」


ヒマワリは土の弾で相殺した。水と土がぶつかり合い、泥となって落ちる。


「魔法は使える。でも――」


ヒマワリは剣を構え直す。観察していて分かった。動きに、"読み"がない。


「私の動きまでは、真似できないだろ!」


《加速》で一気に接近する。水面を強く蹴り、残像を残して迫った。

水鏡のヒマワリが剣で迎え撃とうとするが――


ヒマワリはフェイント。

左に踏み込むと見せかけて、右に回り込んだ。

視線を誘導し、体重移動を誤認させる。


水鏡のヒマワリの剣が、空を切った。


「《サンダーラッシュ》!」


雷を纏った三連撃が、水鏡のヒマワリの背中に叩き込まれる。

一撃目で体が揺らぎ、二撃目で崩れ、三撃目で――


水鏡のヒマワリの体が揺らぐ。一部が水に戻りかけ、形が崩れる。


「まだだ!」


ヒマワリは追撃する。剣を振り上げ、全力で叩きつけた。


「《ウィンドスラッシュ》!」


風の刃が水鏡のヒマワリを切り裂いた。体が大きく裂け、水が飛び散る。

水鏡のヒマワリが膝をつく。HPバーが、残りわずかになった。赤く点滅している。


「とどめ――!」


ヒマワリは剣を構え、最後の一撃を繰り出した。


「《ストライク》!」


シンプルな一撃が、水鏡のヒマワリの胸を貫く。

水鏡のヒマワリが、光の粒となって消えた。水が床に落ち、波紋を広げる。


「よし……!」


ヒマワリは息を整え、即座に水鏡のステラに視線を向ける。

水鏡のステラは、まだステラと炎を撃ち合っている。同じ光景が、ずっと繰り返されている。


「「《フェニクス・フレア》!」」



二つの炎がぶつかり合う。だが――

水鏡のステラの動きが、わずかに鈍くなった。詠唱の速度が、明らかに落ちている。


「MP……切れかけてる!」


ヒマワリが気づく。

回復魔法を連打し、攻撃魔法を撃ち続けた結果、MPが底をついたのだ。

燃費の悪い戦い方をすれば、当然の結果だ。


「ステラ、今だ!」


「うん!」


ステラは杖を高く掲げる。体に蓄積された光の力が、限界に達していた。

炎の撃ち合いで受けたダメージが、全て光として溜まっている。


「《セラフィック・リザーブ》!」


聖属性の光が、爆発的に解放された。

光の奔流が水鏡のステラを包み込む。

バリアが砕け散り、光の破片が舞う。

HPが大きく削られ、体が揺らいだ。


だが――


「まだ、残ってる……!」


水鏡のステラのHPバーは、まだ半分ほど残っていた。黄色く表示されている。


「任せて!」


ヒマワリが《加速》で駆ける。水面を強く蹴り、一気に距離を詰めた。残像が水面に映る。

水鏡のステラが杖を向ける。詠唱を始めようとするが――


だが、もうMPは残っていない。杖の先に光が集まらない。


「《ストームスタンス》!」


風と雷を纏い、剣を構える。力が満ちる。


「《サンダーラッシュ》!」


雷を纏った三連撃が、水鏡のステラに叩き込まれる。

一撃、二撃、三撃――全てが直撃した。

雷が体を貫き、内側から崩壊させる。


水鏡のステラの体が、水へと戻っていく。

形を保てず、崩れていく。

そして――



光の粒となって、消え、広間に静寂が戻る。


「……勝った」


ヒマワリが息を吐く。肩で呼吸しながら、剣を下ろした。


「やった……!」


ステラも安堵の表情を浮かべた。杖を抱え、その場に座り込む。


「はぁ……疲れた」

「うん……」


二人は同時に笑った。

水音だけが、静かに響いている。


「でも、水鏡のステラがバカでよかったね」


ヒマワリが笑いながら言う。


「え……」


ステラは一瞬、固まった。


「水鏡の事なんだろうけど、バカって言われるのヤダな……」


「あ、ごめん」


ヒマワリが慌てて訂正する。


「そういう意味じゃなくて!戦い方が単調で助かったって意味!」

「分かってるけど……」


ステラは少し拗ねたように頬を膨らませた。


「でも、私のコピーだし……」

「だから違うって!」


ヒマワリが笑う。


「ステラは、状況見て判断できるじゃん。水鏡は、ただ同じこと繰り返してただけ」

「……まあ、そうだけど」


ステラも笑顔を見せた。


その時、中央の床が光った。


「……何?」


二人が近づくと、光の中から二つの宝石が浮かび上がる。

青白く輝く、《古の宝石》だ。


「宝石、二個……!」


ステラが嬉しそうに拾い上げる。手のひらに乗せると、温かな光を放った。


「これで、合計……」

「十五個、かな」


ヒマワリが数える。イベントで集めた分と合わせて、かなりの数になった。


「まだまだ足りないね」

「うん。でも、いいペースだよ」


二人が宝石を確認していると――

足元の床が、再び光り始めた。今度は、広範囲に広がる光だ。


「え?」


光が二人を包み込む。転送魔法陣だ。足元に複雑な紋様が浮かび上がる。


「転送される……!」


視界が白く染まり――



次の瞬間、二人は外に立っていた。


「……あれ?」


周囲を見回す。

神殿の外。湖のほとりだった。波が静かに打ち寄せている。



そして――


「夜……?」


空には、満天の星が輝いていた。

月が湖面を照らし、幻想的な光景を作り出している。


「えっと……いつの間に?」


ステラが首を傾げる。ダンジョンに入ったときは、まだ昼だったはずだ。


「ダンジョンに入ってから、結構時間経ってたんだね」


ヒマワリが苦笑する。時間の感覚が、完全に狂っていた。


「でも、無事に終わった」

「うん……」


二人は顔を見合わせ、笑った。

夜風が、静かに二人を撫でていく。

長い戦いが、終わった。


自分のニセモノと戦うときって、どんな感情になるんでしょうかね?


次は3/1 21時投稿予定

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ