表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/58

第048話 極振りヒーラー、巨大魚ダンジョンの探索3

中ボスが光の粒子となって霧散した瞬間、洞窟の奥に垂れ下がっていた水の膜が、すうっと消え去った。


「あ……道、できてる」


最初に声を上げたのはステラだった。


「本当ですね。先ほどまで、完全に遮断されていましたのに」


ティアが弓を下ろしながら、奥を覗き込む。


「中ボス討伐で解放、って感じかな」


ヒマワリが剣を肩に担ぎながら言う。


「おそらく、その認識で合っていると思います」


ティアは小さく頷き、ふとステラに視線を向けた。


「……あの、少しよろしいでしょうか」


ティアが静かに手を挙げた。


「先ほど使用されていた《挑発》について、お伺いしたいのですが」


「うん、なに?」


ステラが首を傾げる。


「ステラさんはヒーラー職ですよね。にもかかわらず、前衛用のスキルを所持されている理由が気になりまして」


「あー……それね」


ステラは少し考えてから、照れくさそうに笑った。


「それ覚えたの、まだソロしかしてなかった頃なんだ」


「ソロ、ですか?」


ティアが猫耳をぴくりと動かす。


「うん。回復職だと火力がなくて、敵を倒せないことが多くて……」


「ああ、回復職の宿命ですね」


ティアが頷く。


「それで、バリア張って反射ダメージで倒してたら、いつの間にか《挑発》覚えてたんだよね」


「……なるほど」


ティアはゆっくり頷いた。


「スキル習得条件を確認したことがあるのですが、"一定時間、敵の攻撃を一身に受け続ける"というものでしたね」

「うん、それ見た。でも、まさか自分が条件満たしてるとは思わなくて……」

「つまり……」


ティアは言葉を選びながら続ける。


「ステラさんは、敵を倒すために耐えていたら、無意識にタンクの立ち回りをしていた、ということです。……ですが、理屈としては、納得できました」


ティアの猫耳が、満足そうに揺れる。


「さて、先に進みましょうか」


三人は奥へと進んでいく。


通路の先は、巨大な空洞だった。


天井から淡く発光する水滴が落ち、中央には湖のような水溜まりが広がっている。

空気は湿っており、呼吸するたびに生臭い匂いが鼻をつく。


その湖面が、不気味に波打っている。


「……あそこ、ボス部屋ですね」


ティアが静かに告げた。


「みたいだね。じゃあ、準備しよう」


ヒマワリが剣を構える。


「バフかけるね!《プロテス》!」


ステラが杖を掲げ、光が三人を包み込み、VITが大幅に上昇する。


「《ヒール》!《再生の祝炎》!」


さらにステラ自身に回復魔法をかけ、《リストア・ヴェール》のバリアを展開する。

《再生の祝炎》の温かな炎が全身を包み込み、時間経過でHPが回復する効果が付与される。


「じゃあ、行こう」


三人は慎重に空洞へと足を踏み入れた。


その瞬間――湖面が激しく波打った。


水面から姿を現したのは、半透明の巨大クラゲだった。

全長は3メートルほど。

傘の内側で雷光が脈動し、三本の触手が湖奥――巨大魚の肉壁へと繋がっている。


《ストーム・メデューサ》


ヒマワリが《加速》を発動させ、クラゲへと突進する。


「《サンダーラッシュ》!」


雷の三連撃が、クラゲの傘を切り裂く。


――ダメージが表示される。

だが――傷口が、みるみる塞がっていく。


「え……!?回復してる!」


ヒマワリが再び斬りかかる。


「《ウィンドスラッシュ》!」


風を纏った斬撃が、クラゲを切り裂く――

だが、やはり傷は瞬時に塞がる。

その瞬間、クラゲに繋がれた三本の触手が、ドクン、ドクンと脈動した。


「……あれです」


ティアが触手を指差す。


「触手が脈動するたびに回復している……おそらく、触手を通じて栄養を吸収しているんです」

「じゃあ、触手を断てば回復が止まる!?」

「その可能性が高いです。触手を狙いましょう」


ティアが矢を番え、触手を狙う。


「《シャープ・アロー》!」


矢が触手に突き刺さる――だが、触手は思ったよりも硬い。


「……一撃では断てません」


その時――クラゲの傘が発光した。


ビリビリと電撃が走り、小型のクラゲが次々と生成される。


「っ!増えた!」


小型クラゲが三人へと飛来してくる。


「《ヒール》!」


ステラが自分自身に回復魔法をかけ、バリアを強化する。

小型クラゲがバリアに触れた瞬間――


バチンッ!


電撃が弾け、バリアが削られる。



「ステラ!大丈夫!?」


「う、うん……バリアで防げてる……!」


だが――小型クラゲは次々と襲いかかってくる。


「《ウィンドスラッシュ》!」


ヒマワリが風を纏った斬撃で小型クラゲを薙ぎ払う。


その瞬間――床から緑色の液体が湧き出してきた。


「っ!?何これ!?」

「胃酸……!?」


ティアが叫ぶ。

緑色の液体がステラとティアの足元を這い上がる。


「うわっ……!」


ステラのHPバーに、紫色の状態異常アイコンが表示され、じわりじわりとHPが削られていく。


【状態異常:酸蝕】


「継続ダメージ……!」


ティアも同じく状態異常に陥る。


「《クリーンセンス》!」


ステラが咄嗟にスキルを発動させる。

光が体を包み込み、状態異常が解除される。


「ティアちゃんも!《クリーンセンス》!」


ステラがティアにも状態異常解除をかける。


「助かります!」


一方――ヒマワリは《加速》と《跳躍》を駆使し、胃酸の流れを読んで回避していた。


「これ、床全体に広がる前に倒さないとまずいね!」

「私が小型クラゲを処理します!ヒマワリさんは触手を!」


ティアが矢を連射し、小型クラゲを次々と撃ち落とす。


「了解!」


ヒマワリは《加速》で触手へと接近する。


「《ソニック・ブレイク》!」


素早い二連撃が、触手を切り裂く。

だが――触手は硬く、一撃では断てない。


「もう一発!《サンダーラッシュ》!」


雷の三連撃が、触手を貫いた。

一本目の触手が、ぷつりと切れた。


「よし!一本断った!」


だが――その瞬間。

巨大クラゲの傘が、激しく発光した。


「っ!?何か来る!」


床が雷光に包まれ始める。

バチバチと電撃が床全体を走り、ステラとティアのHPが削られる。

ヒマワリは直感に従って、《跳躍》で飛び上がり、電撃を回避する。


「範囲攻撃……!感電フィールドです!」


ティアが叫ぶ。


「《ヒール》!」


だが――《プロテス》と《再生の祝炎》の効果で、ダメージは許容範囲内に抑えられるが、胃酸が再び湧き出してくる。


「また胃酸!」


ヒマワリは《跳躍》で胃酸を回避するが、ステラとティアは再び状態異常に陥る。


「《クリーンセンス》!」


ステラが自分とティアの状態異常を解除する。


「ありがとうございます!」

「耐えられる……!このまま触手を断つよ!」


ヒマワリが二本目の触手へと斬りかかる。


「《ウィンドスラッシュ》!《ソニック・ブレイク》!」


連続攻撃が、触手を切り裂く。


二本目の触手が断たれた。


「あと一本!」


その時――巨大クラゲが触手を振り回し、ステラへと襲いかかった。


「ステラ!」

「《挑発》!」


ステラが杖を掲げ、淡い赤の衝撃波が広がる。

巨大クラゲの視線が、ステラへと向く。

触手と小型クラゲが、一斉にステラへと集中する。

小型クラゲがバリアに次々と体当たりし、電撃を放つ。


バリアが激しく削られていく――

だが、《再生の祝炎》の効果で、継続的に回復が入り、バリアの耐久力を上げていく。

そして、小型クラゲの攻撃を受けたことで、そのダメージがエネルギーに変換され、ステラの体が眩く輝き始めた。


「《セラフィック・リザーブ》」


蓄積された光の力が、聖属性の爆発として解き放たれる。

轟音と共に、ステラを取り囲んでいた小型クラゲが光の粒となって消え去った。


「今だ!最後の触手!」


ヒマワリが《ストームスタンス》を発動させ、風と雷を纏う。


「《サンダーラッシュ》!」


雷の三連撃が、最後の触手を貫いた。

三本目の触手が断たれる。


「全部断った!」


巨大クラゲの回復が止まる。

だが――その瞬間。

巨大クラゲの体が、ゆらりと浮き上がった。


「っ!?動いた!?」

「触手が拘束の役割も果たしていたんです!」


ティアが叫ぶ。

巨大クラゲの傘が激しく発光し、雷のレーザーが、一直線にヒマワリへと放たれた。


「危ない!」


ヒマワリは《加速》で横に飛び、紙一重で回避する。

レーザーが壁を焦がし、煙が上がる。


「レーザー攻撃……!速い!」


巨大クラゲが再び傘を光らせ、今度はティアへと雷のレーザーを放つ。


「くっ……!」


ティアは咄嗟に横へ転がり、回避する。


「《ヒール》!」


ステラがティアのHPを回復する。


「動き回られると、倒しにくい……!」


ヒマワリが舌打ちする。

巨大クラゲが再びレーザーを放とうと、傘を光らせる。


「今なら倒せます!総攻撃!」


ティアが矢を連射する。

ヒマワリが《加速》で接近し、連続攻撃を叩き込む。


「《ウィンドスラッシュ》!《ソニック・ブレイク》!《サンダーラッシュ》!」


巨大クラゲのHPバーが、みるみる削られていく。

巨大クラゲが最後の抵抗とばかりに、雷のレーザーを乱射する。

ヒマワリは《跳躍》と《加速》を駆使し、全てのレーザーを回避する。


「ステラ!トドメ!」

「うん!《不死鳥》!」


ステラが杖を高く掲げると、魔力が爆発する。


「《フェニクス・フレア》!」


轟音と共に、巨大な不死鳥の炎が巨大クラゲへと襲いかかった。

炎がクラゲの全身を包み込み――

巨大クラゲが、光の粒子となって消えていった。


「……やった」


三人は同時に息を吐く。


その瞬間――空間全体が激しく揺れ始めた。


「え……?」

「まずい……!」


床が傾き、湖の水が逆流し始める。


「外へ吐き出される……!」


三人の体が、激流に飲み込まれた。


「うわああああっ!!」


視界が真っ暗になり――


次の瞬間、三人は湖面へと叩き出されていた。






バシャァァン!


「ぷはっ……!」


水面を割って、ステラが必死に顔を出す。


「ぷはっ……! た、助けて……! およ、泳げない……!」


手足をばたつかせるが、体は沈みも浮きもせず、その場でもがくだけだった。


「ステラ!」


ヒマワリが叫び、すぐさま水に飛び込む。


「今行くから! 動かないで!」


「む、無理……沈む……!」


ヒマワリはステラの背中に回り、しっかりと体を支える。


「つかまって。力抜いていいから!」


「う、うん……!」


ヒマワリに引かれ、ステラの体がようやく前へ進き出す。

少し遅れて、ティアも無言のまま泳ぎ、岸を目指した。


やがて三人は、岸辺に這い上がる。


「はぁ……っ、はぁ……」


水を滴らせながら、ステラはその場にへたり込んだ。


「……さすがに疲れた」

ヒマワリが大きく息を吐く。


ティアは服についた水を軽く払いつつ、二人を見て小さく首を傾げた。


「……AGIが0に近いと、水中移動はかなり厳しい仕様なのですね」


「あ、うん……」

ステラは申し訳なさそうに視線を落とす。

「体が全然、言うこときかなくて……」


「……ステラさんのビルドだと、水中ではかなり厳しいですね。仕様上、仕方ありません」

ティアは淡々と言い、ふと足元に目を向けた。


「あ……これは」


砂浜の上に、淡く光るものが転がっている。

月明かりを受けて、《古の宝石》が三つ、静かに輝いていた。


「宝石だ!」

ステラがぱっと顔を上げる。


「ボスを倒したから、ここに出たのかな?」


「その可能性が高いですね」

ティアが頷く。

「討伐完了後、元の地点へ転送される仕様のようですし」


「じゃあ……」

ステラは三つの宝石を見比べて、にこっと笑った。

「三人で倒したんだから、一人一つずつでどうかな?」


「公平ですね」

「うん、それでいい」


三人はそれぞれ宝石を拾い上げる。


「これで、少し集まったね」

ヒマワリが満足そうに言う。


「無事にクリアできて、何よりです」

ティアも小さく微笑んだ。


「うん……ほんとに」

ステラも頷く。


少しの沈黙のあと、ティアが立ち上がった。


「それでは……私は別のエリアを探索してきます」


「そっか……」

ステラが、少しだけ名残惜しそうに呟く。


「あ、待って!」

思い出したように顔を上げる。

「ねえ、フレンド登録しようよ。また一緒に冒険したいし!」


ティアは一瞬だけ目を瞬かせ――

すぐに、柔らかく微笑んだ。


「……はい。喜んで」


三人はメニューを開き、フレンド申請を送り合う。


「また会いましょう」

ティアは丁寧に一礼し、森の方へと歩き出した。


「じゃあ、私たちも行こっか」

「うん!」


ヒマワリとステラは顔を見合わせ、別の道へと歩き出す。


月明かりが、静かに湖面を照らしていた。


無事巨大魚から脱出できて、フレンドも増えました。


次は2/24 21時投稿予定

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ