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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第042話 極振りヒーラー、神獣の戦利品

フルグラウスが消え去ったあと、雷鳴の名残だけが静まり返った空間に残っていた。


「……あれ?宝箱、出ないんだね」

周囲を見回しながら、ステラがぽつりと呟く。

普段なら、ボスを倒した瞬間に金色の宝箱が現れるはずなのだが――今回は、何も出現しなかった。


「何もないってことはないでしょ。化け物みたいに強かったあのボスだよ?絶対何かあるって」

そう言って前に出たのはノエルだった。大剣を肩に担ぎ、フルグラウスが最後に立っていた爆心地へと視線を向ける。


「まずはボスのいたところを見に行ってみましょう。モンスターの素材が残ってるかもしれないわ」

リリアの提案に、四人は頷き合い、その場へと向かった。

地面には、雷に焼かれた痕跡がまだ生々しく残っている。

その中心部、まだ熱気すら漂う場所に、それは散らばっていた。


「……うわ、これ……爪?」

ノエルが拾い上げたそれは、大剣の刃先ほどもある巨大な爪だった。表面には雷光が走ったような細かな紋様が刻まれ、触れるだけで微かな痺れが指先を這う。


「こっちは……鬣だね。すごい、まだ雷が残ってる」

リリアが恐る恐る手に取ったのは、金属のような光沢を帯びた獣毛の束。まるで生きているかのように、淡い電気が表面を走っている。

他にも、砕けた角の欠片、雷を宿した骨片のようなものがいくつか散らばっていた。どれも触れただけで、ただならぬ気配を放っている。


「名前は……あとで鑑定しないと分からないけど」

「でも、明らかに普通じゃないよね。レア素材っぽさがすごい」

ステラの言葉に、ヒマワリも深く頷く。

ひと通り確認したあと、ヒマワリがふと周囲を見回した。


「ねえ、ほかにも何かあるかも。さすがに素材だけってことはないよね?」

「そうだね。あんなに苦労して倒したんだし、もっと探してみようよ」


ステラが提案する。

「このあたりを中心に探して、終わったらここに集合でどう?」

「賛成。その方が効率いいね」


自然と二組に分かれた。

ステラとヒマワリは岩陰や地面の裂け目を中心に、ノエルとリリアは高台の方を探索することになった。

ステラとヒマワリは、雷に削られた地形の奥を慎重に進んでいく。不自然に残された小さな空間――その奥に、ヒマワリが何かを見つけた。


「……ステラ、これ見て。なんか……光ってる」

そこにあったのは、淡く光る卵だった。

手のひらに収まるほどの大きさで、雷光を封じ込めたような複雑な模様が表面に浮かんでいる。触れると微かに鼓動するように脈打ち、まるで生きているような感触があった。


「卵……?でも、アイテム情報が……」

ヒマワリがウィンドウを開くが――説明欄は完全に空白だった。


【封印された雷獣の卵】


「封印……されてる?説明が何も出ないよ」

「謎のアイテムだね……今は使い道わかんないけど、とりあえず持っておこう」


その近くで、ステラが小さな光の粒を拾い上げる。

「あ、こっちは……《古の宝石》だ!」

「ほんとだ。あ、ここにも!こっちにも!」


数えてみると、ちょうど十個。

イベント用の収集アイテムとして告知されていたもので、「集めるのが大変」と評判のレアアイテムだった。


「運、良すぎじゃない?まさかこんなにまとめて手に入るなんて」

二人は顔を見合わせ、思わず笑みがこぼれた。




一方、ノエルとリリアのペアは、少し離れた高台で異質な光を放つものを見つけていた。


「……あれ、杖じゃない?」

岩に突き刺さるように立っていたそれは、雷を象った装飾が施された美しい聖杖だった。

白銀の柄に、先端には雷の結晶が輝いている。


「雷属性……それも、かなり高位の魔力を感じる」

「ヒーラー向け、かな。それとも攻撃型の魔法使い向け?」


リリアがそっと手に取ると、杖は静かに光を収めた。

装備情報が表示され――その性能に、二人は思わず息を呑んだ。


【雷光の聖杖】

装備効果:INT+25、WIS+20

特殊効果:攻撃魔法使用時、雷撃が追加発動

特殊効果:回復魔法使用時、対象に一時的な雷属性耐性バフ



「……これ、すごいよ」

「うん。かなりの高性能装備だね」





探索を終え、四人は最初の場所に集まる。

戦利品を地面に並べると、その量と質に、全員が思わず顔を見合わせた。


「……宝箱なくても、大当たりじゃん」

「ほんとだね。こんなに色々手に入るなんて」


ノエルが咳払いをひとつしてから、素材の山に目を向ける。

「あの……この素材なんだけどさ。俺、生産職だし……もらってもいいかな?」

「いいよ!どうぞどうぞ!」


ステラは即答だった。

「私たちが持ってても、使い道ないしね。ノエルさんなら、きっと素敵な装備作ってくれるよね」

「ありがとう。じゃあ、遠慮なくもらうね」


ノエルは少し照れたように笑う。

「この素材で……そのうち、何か武器でも作ってあげるよ。楽しみにしててくれ」

「期待してる!」



次に、ヒマワリが例の卵を持ち上げる。

「これなんだけど……初めて見るアイテムだよね」

「うん。ウインドウを開いても何の説明も書いてないね」


ノエルも首を傾げる。

「謎アイテムか……でも、あのボスが守ってたってことは、何か重要なものなんだろうね」

「とりあえず、ヒマワリちゃんが持ってたほうがいいんじゃない?」


ステラが提案すると、ヒマワリが少し驚いた表情を見せる。

「え、いいの?私が?」

「うん。なんか……ヒマワリちゃんに合ってる気がするんだよね」

「じゃあ、ありがとう。大事に持っとくね」

ヒマワリは驚きながらも、大切な預かり物のようにそれを抱えた。



最後に、雷光の聖杖をリリアが手に取った。

「ステラちゃん、これ……あなたがもらって」

「え?」


リリアが真剣な表情で続ける。

「今回、一番活躍したのはステラちゃんだよ。あなたがあの戦法を思いついてくれなかったら、私たち全滅してたと思う」


ステラは慌てて首を振った。

「そんなことないよ!みんなで協力したから勝てたんだし……それに、私、始めたばかりの頃にリリアさんにすごく助けてもらったから……リリアさんが使ってほしいな」

「でも……」

「お願い!私、リリアちゃんに恩返ししたいの」


ステラの真っ直ぐな瞳に、リリアは少し迷ったあと、静かに頷いた。

「……わかった。じゃあ、ありがたくもらうね」

杖を受け取ると、リリアは少し考えてから口を開いた。

「じゃあ……お礼に、教えてあげる」

「え?」

「《ディバイン・シールド》っていうレアスキル」


リリアが真剣な表情で説明を始める。

「盾状で、対象を追尾するWIS依存のバリアを張るスキルなんだ。ヒーラー向けで、ステラちゃんのビルドにすごく相性がいいと思う」

「ほんと!?それ、すごく便利そう!」

「うん。でも、習得条件が厳しいの。第二階層のはずれの森――《聖域の泉》っていう隠しエリアがあって、そこでNPCをモンスターの大群から守り切る試練をクリアしないといけないんだ。」

「……それ、絶対大変だよね」


ヒマワリが苦笑いを浮かべる。

「うん。実際かなり難しいよ。回復職専用のクエストだから、誰かに助けてもらうこともできないしね。でも、ステラちゃんなら……きっとクリアできると思う。」


リリアが優しく微笑む。

「場所は第二階層の東の森、滝の裏に隠し通路があるから。今はまだ、どこにも情報が出てないはずだよ。場所は後で地図を送るわね」

「わかった!絶対挑戦してみる!教えてくれてありがとう、リリアちゃん!」



最後に宝石を分け合った。

フルグラウスの苛烈な猛攻を正面から受け流し、勝利への決定機を作り出したステラとヒマワリには、それぞれ三石。

それ以外の局面を支えたノエルとリリアには二石ずつ。





戦利品の分配が終わり、四人は魔法陣に足を踏み入れた。

光の粒子が視界を埋め尽くし、次に目を開けた時、そこには夕焼けに染まる穏やかな山嶺が広がっていた。


「ふぅ……やっと戻れた。生きた心地がしなかったよ」

「うん。ほんと疲れたね」


ヒマワリが大きく伸びをすると、ノエルとリリアが顔を見合わせた。


「俺たちは、これから他に素材がないか探しに行こうと思うんだけど……」

「そっか。私たちは宝石を探しに行きたいから、ここでお別れだね」


ステラが少し寂しそうに笑う。

「うん。でも、またね!今度一緒に冒険しようね」

「ああ、また会おう!その時は、もっといい装備作っとくからさ」


ノエルとリリアは手を振り、山を下りていった。

その背中を見送ってから、ヒマワリがステラを見る。


「私たちは……どうする?」


ステラは少し考えてから、ふわりと笑った。

「んー……疲れたから、今日はどこかでゆっくり探索したいな。激しい戦闘じゃなくて、のんびりできるところ」

「そうだね。じゃあ、のんびり山を下りながら、景色でも楽しもうか」

「うん!それがいい!」


二人は笑い合い、ゆっくりと山道を下り始めた。

夕日が二人の背中を照らし、長い影が地面に伸びる。

遠くには、まだ見ぬ冒険が待っている――

今日の冒険が、静かに幕を閉じた。


何やら、謎の卵をゲットしましたね。


次は2/17 19時投稿予定

お楽しみに!

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