第041話 極振りヒーラー、神獣の戦い3
ヒマワリは《加速》を最大まで発動させ、フルグラウスへと突進した。
風のような速さで、フルグラウスの周囲を駆け巡る。
右から、左から、上から――三次元的な高速移動で、フルグラウスを翻弄する。
「《ウィンドスラッシュ》!」
風を纏った斬撃が、フルグラウスの横腹を切り裂く。
「《サンダーラッシュ》!」
雷の三連撃が、背中に叩き込まれる。
「《ソニック・ブレイク》!」
素早い二連撃が、前脚を切り裂く。
フルグラウスが反撃しようと身を捩るが――その動きすら追いつけない。
ヒマワリの速度は、先ほどよりもさらに上がっていた。
攻撃の瞬間だけ姿が見え、次の瞬間にはもう別の位置から斬撃が飛んでくる。
「すげぇ……あんなに速く動けるのか……」
ノエルが呆然と呟く。
ヒマワリの体が淡く光り始めた。
《戦闘狂》の効果が最大まで貯まり、STRが30%上昇している。
「《ストームスタンス》!」
風と雷を纏い、さらに移動速度が上昇する。
ヒマワリの剣が、光の軌跡を描きながらフルグラウスを切り刻んでいく。
一方――ステラは杖を握りしめ、次々とスキルを発動させていた。
「《リジェネ》!《再生の祝炎》!《ドレイン・オーラ》!」
三つの継続回復スキルが重なり、ステラのHPが絶え間なく回復していく。
そして――《ヒール》を連打する。
「《ヒール》!《ヒール》!《ヒール》!」
光が体を包み込むたびに、《リストア・ヴェール》のバリアが積み重なっていく。
最大HPを超えた回復分が、全てバリアとして蓄積される。
「……なんで、今まで気付かなかったんだろ。
《リジェネ》の継続回復って、バリアの上限を押し上げてた……」
ステラは、これまでの戦いを思い返す。
リストア・ヴェールに守られている状態でも、リジェネによる継続回復は無駄にならず、回復した分だけ確実にバリアの上限を押し上げていた。
――なら、答えはひとつ。
MPが続く限り《ヒール》を撃ち続けて、バリアを極限まで厚くする。
そして、フルグラウスの攻撃を受け止め、そのダメージを反射として返す。
わずかに回復量を底上げする《回復の心得Ⅰ》も、WIS極ぶりのステラには有用な効果となる。
ヒールはもちろんの事、リジェネも、再生の祝炎も、ドレイン・オーラも同様に回復量が強化され、その分だけバリアの“器”が広がっていく。
幸い、《蒼流の指輪》と《マナ・サーキュレーション》のおかげで、戦闘中でもMPは緩やかに自然回復している。
さらに《MP強化・小》と《MPカット・小》が、ヒールを撃てる回数を底上げしていた。
ヒマワリが命がけで時間を稼いでいる、その間に――
ステラはMPが続く限り《ヒール》を撃ち続け、バリアをひたすら積み重ねていく。
そして――最後に。
「《鳳翼転生》!」
ステラ自身に、完全蘇生の魔法をかけた。
これで――一度だけ、HPが0になっても蘇ることができる。
その時――ヒマワリのMPが尽きかけていた。
「くっ……!」
動きが鈍り、フルグラウスの爪が迫る。
「準備できたよ!《挑発》!」
ステラが杖を掲げ、淡い赤の衝撃波が広がった。
フルグラウスの視線、そして殺意がステラへと向く。
「ステラ!?」
「大丈夫!任せて!」
フルグラウスが雷翼を展開し、ステラへと突進してくる。
「来い……!」
ステラは一歩も引かず、杖を正面に構えたまま受けに入る。
轟音と共に、フルグラウスの突進が《リストア・ヴェール》を叩いた。
バリアが激しく軋み――7割が削られる。
だが――《リフレクト・ヴェール》の効果で、膨大なダメージが反射される。
おびただしい量のダメージエフェクトが飛び散り、フルグラウスのHPバーが、大きく削れた。
反射で体勢を崩しながらも、フルグラウスは渾身の力を込めて追撃し、爪を振り下ろす。
今度こそバリアを粉々に砕き、ステラのHPが0になった。
「ステラ!」
だが――《鳳翼転生》の効果が発動する。
不死鳥の炎がステラを包み込み、まるで生まれたての雛のように――
ステラがHP全快で完全蘇生した。
「……え?」
ヒマワリが目を見開き、リリアとノエルも驚愕の声を上げる。
「ステラ……!?」
蘇生と同時に、反射ダメージが再びフルグラウスを襲う。
二度目の特大ダメージで、HPバーはさらに大きく、大きく削られた。
「《バインド・チャーム》!」
リリアが即座に反応し、魔導チャームから青い鎖を放つ。
フルグラウスの巨体が、一瞬だけ拘束された。
その一瞬の隙を見逃さず、ヒマワリはステラを抱え、《加速》で戦場から高速離脱した。
「ステラ、大丈夫なの!?」
「う、うん……でも、もう一回攻撃を受けたら、今度こそやられちゃう……」
ステラが小さく呟いたその時――フルグラウスが天を仰ぎ、全身のエネルギーを解放する咆哮を上げた。
全方位に、殲滅的な雷撃が放たれる。
「《セラフィック・リザーブ》」
ステラの体が眩く輝き、蓄積された光の力が聖属性の爆発として解き放たれる。
聖なる光と邪悪な雷がぶつかり合い―
光が勝った。
爆発がフルグラウスを包み込み、HPバーを削っていく――
だが、HPバーは、僅かミリ単位だけ残ってしまった。
「そんな……あと少し……!」
その瞬間――ヒマワリが動いた。
「ステラが作ってくれたチャンス……無駄にしない!」
《加速》を発動させ、フルグラウスへと急接近する。
「《ソニック・ブレイク》!」
素早い二連撃が――フルグラウスの首を切り裂いた。
フルグラウスの体が光に包まれ――やがて、無数の粒子となって消えていった。
「……やった……!」
四人は同時に叫び、糸が切れたようにその場に崩れ落ちた。
「勝った……勝ったよ……!」
「う、うん……すごかった……」
リリアとノエルが、安堵の息を吐く。
「ステラ……さっきの、何?死んだのに蘇ったよね?」
「えへへ……《鳳翼転生》っていう、不死鳥のスキルなんだ。1日に1回だけなんだけど、HPが0になった時に全回復して復活できるみたい。」
ステラが照れくさそうに笑うと、ヒマワリは呆れたように肩を落とした。
「……もう、びっくりしたよ」
「ごめんね。でも、勝てたから良かったよね!」
ヒマワリはじっとステラを見る。
「……で?死ぬの、怖くなかったの?」
「めちゃくちゃ怖かったよ、心臓バクバクだったし」
ステラは即答した。
「じゃあ何でやったの……」
「だって、これしか思いつかなかったんだもん」
ヒマワリは呆れたようにため息。
「死ぬの怖くてヒーラーになった人が、 一番危ないことしてどうするの。それにあんたが蘇生している間に二発目が来てたら、どうするつもりだったの?!」
杖の先を地面に突きながら、小さく囁いた。
「……そこまで、考えてなかった。」
「……あんたねぇ」
ヒマワリは頭を抱える。
ノエルが苦笑いで口を挟む。
「結果オーライ、ってことで……?」
リリアもくすっと笑った。
「次からは、事前に言ってくれたら助かるけど」
「はーい……次はちゃんと相談します!」
四人は笑い合い、ようやく肩の力が抜けた。
反射は大正義!けど、イベント終了後に・・・
次は2/15 21時投稿予定
お楽しみに!




