表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/57

第037話 極振りヒーラー、全焼戦法で燭台を点す

朝日が窓から差し込み、小屋の中を明るく照らした。


「……んー……」

ヒマワリが目を覚まし、大きく伸びをする。

隣では、ステラがまだ寝息を立てていた。


「ステラ、起きて。朝だよ」

「んー……あと五分……」

「ダメだよ。今日、ボス倒しに行くんでしょ?」


ヒマワリが肩を揺すると、ステラはようやく目を開けた。


「……ふぁ……おはよう、ヒマワリちゃん」

「おはよう。よく眠れた?」

「うん。ヒマワリちゃんは?」

「まあまあかな。夜中はちょっと怖かったけど」


二人は笑い合い、身支度を整えた。


「朝ごはん、簡単に済ませちゃおう」

「うん」


ヒマワリはインベントリから乾パンと干し肉を取り出し、二人で分け合った。

簡素な食事だが、これから戦いに挑む二人には十分だった。


「さて……作戦会議しよう」

ヒマワリが地図を広げ、×印を指差す。


「ここがネクロマンサー・ヴェルグのいる場所。

 部屋の四隅に《生命の燭台》があって、全部に火を灯さないとダメージが通らない」

「うん。北東が崩れた石柱の影、南西が骸骨の山の下、北西が祭壇の裏、南東が魔法陣の中心だったよね」

「そう。ステラが燭台を探して火を灯して、私がヴェルグの攻撃を引き付ける」

「わかった。頑張る!」


ステラが頷くと、ヒマワリは少し不安そうな表情を浮かべた。


「……ねえ、ステラ」

「ん?」

「もし……アンデッドとか出てきたら、どうしよう……」

「あ……そっか。ヒマワリちゃん、アンデッド苦手だもんね」


ステラは少し考えてから、にっこりと笑った。


「大丈夫!もしアンデッドが出てきたら、私が《挑発》で引き付けるから!」

「ほ、本当?」

「うん!ヒマワリちゃんはヴェルグだけに集中して。アンデッドは任せて」

「……ありがとう、ステラ。助かる」

ヒマワリはほっと胸を撫で下ろした。





二人は頷き合い、小屋を出た。

地図を頼りに森の奥へと進む。

焼け焦げた木々の間を抜け、やがて――古びた石造りの建物が見えてきた。


「……あれかな」

「多分。行こう」

二人は慎重に扉を押し開け、中へと入った。

薄暗い広間には、中央に黒い宝石が浮かんでいた。

そして――その前に、ボロボロのローブを纏った痩せこけた男が立っていた。


《ネクロマンサー・ヴェルグ》。


「……来たか……新たな実験体……」

しゃがれた声が響く。

ヴェルグがゆっくりと杖を掲げると、周囲に不穏な魔力が渦巻いた。


「行くよ、ヒマワリちゃん!」

「うん!」


ステラは杖を掲げ、《ヒール》を連続で唱える。

光が二人を包み込み、《リストア・ヴェール》のバリアが展開される。


「《プロテス》!」

さらに二人のVITを大幅に上昇させ、防御を固める。


「よし、行くよ!」

ヒマワリは剣を抜き、前へと飛び出した。


「《ソニック・ブレイク》!」

素早い二連撃が、ヴェルグへと叩き込まれる――

だが、剣はまるで霧を切るように、すり抜けてしまった。


「やっぱり……ダメージが通らないか……!」


ヴェルグが杖を振るうと、黒い魔弾が放たれる。

ヒマワリは素早く跳躍して回避し、再び斬りかかる。


「《サンダーラッシュ》!」

雷を纏った三連撃――だが、やはりダメージは通らない。


「くっ……!ステラ、燭台を探して!」

「わかった!えっと……どこだろう……!」


ステラは必死に周囲を見渡すが――隠された燭台は、どこにも見当たらない。


その時――ヴェルグが杖を高く掲げた。

「死者よ……我が声に応えよ……」

部屋中に禍々しい魔法陣が浮かび上がり、無数の黒い光弾が生成される。

「っ!?」

ヒマワリが咄嗟に跳躍して回避するが、光弾は追尾するように方向を変えた。


「《加速》!」

瞬時に速度を上げ、光弾の雨を縫うように駆け抜ける。

だが――光弾は次々と追加で生成され、部屋中を飛び交い始めた。


「やばっ……!」


さらにヴェルグが床を杖で叩くと、地面から黒い触手が次々と這い出してくる。

触手がヒマワリの足を掴もうと伸び上がった。


「《跳躍》!」


ヒマワリは大きく跳び上がり、触手を回避。

しかし――空中は逃げ場が少ない。

光弾が“狙いすました”ようにヒマワリの軌道を追いかける。


「っ……!」


ヒマワリは空中で体をひねり、ギリギリで光弾の軌跡を外れる。

頬をかすめるほどの距離。

直撃は避けた――が、着地地点にはすでに触手が蠢いていた。



「まずっ――!」


「《セラフィック・リザーブ》!」


ステラの放った聖属性の光が、着地点の触手を一瞬だけ硬直させる。

触手の動きが止まった、その“ほんの刹那”――


ヒマワリは転がるように着地し、距離を取った。


「サンキュー、ステラ!」


「うん……!でも、まだ大丈夫だよね?無茶はしないで!」



ステラもヒマワリのサポートをしつつ、必死に燭台を探すが――


「見つからないよ……!どこにあるの……!?」


その時、ヴェルグが再び杖を振るう。

今度は巨大な闇の槍が生成され、ステラへと放たれた。


「ひゃっ!?」


ステラは咄嗟に横に飛び、間一髪で回避する。

闇の槍は床に突き刺さり、爆発して周囲を巻き込んだ。

光弾、触手、闇の槍――次々と繰り出される攻撃に、二人は回避だけで精一杯だった。

ステラも焦りながら、必死に燭台を探し続ける。


「ねえ、ヒマワリちゃん!」

「何!?」

「要は、燭台に火を灯せればいいんだよね!?」

「え……?多分、そうだと思うけど……!」


ステラは杖を高く掲げた。


「なら――《不死鳥》!」

魔力が爆発し、ステラの周囲に炎が渦巻く。

そして――


「《フェニクス・フレア》!」

轟音と共に、不死鳥の形をした巨大な炎が部屋中を駆け巡った。

壁を、床を、天井を――全てを炎が包み込む。

廻り一面を火の海に変えてしまえば、魔法で見えていなくても関係ない。

隠されていた《生命の燭台》も、その炎に触れて次々と点火していく。


「ちょ、ちょっと!?強引すぎない!?」

ヒマワリがジト目でステラを見る。


「え?でも、場所が分からないなら、これが一番早いかなって……」

ステラが無邪気に笑うと、ヒマワリは深く息を吐いた。


「まあ……結果オーライだけどさ……」


その時――四つ全ての燭台に火が灯り、ヴェルグの体が淡く光った。


「……なに……!?」

ヴェルグが驚愕の声を上げる。

霧のように攻撃を受け流していた防御が、完全に消失した。


「今だよ、ヒマワリちゃん!」

「うん!《加速》!」


ヒマワリの体が光り、瞬時に加速する。

風のような速さで、ヴェルグへと肉薄した。


「《ストームスタンス》!」

風と雷を纏い、移動速度がさらに上昇する。

ヒマワリの剣が、光の軌跡を描きながらヴェルグを切り刻んでいく。


「《ウィンドスラッシュ》!《サンダーラッシュ》!」

連続攻撃が次々と叩き込まれ、ヴェルグのHPがみるみる削られていく。


「くっ……このままでは……!」


ヴェルグのHPが50%を切った瞬間――

部屋中に禍々しい魔力が満ち、地面から次々と骸骨が這い出してきた。


《スケルトン・ウォリアー》

《レイス・エリート》

《ゾンビ・ナイト》


「ひっ……!?ま、また出た……!?」

ヒマワリの動きが止まる。

さらに強化されたアンデッドの軍勢が、二人を取り囲んだ。


「ひ、ひぃ……!や、やっぱり無理……!」

ヒマワリは剣を構えるが、その手が震えている。


「大丈夫!任せて!」

ステラは杖を掲げ、《再生の祝炎》を発動させた。


温かな炎が体を包み込み、状態異常耐性が大幅に上昇する。

さらに――一定時間ごとにHPが中回復する効果が付与される。


「《ヒール》!」

さらにバリアを強化し、《リフレクト・ヴェール》の耐久力を最大まで高める。


「《挑発》!」

淡い赤の衝撃波が広がり、アンデッドたちの視線が一斉にステラへと向く。


「こっちだよー!」

ステラは杖を振り、アンデッドたちを引き付ける。

骸骨の剣が、幽霊の爪が、次々とバリアを叩く。

だが――《再生の祝炎》の効果で、ダメージはすぐに回復していく。


「……あ、あれ?ステラが壁になってくれてる……?」

ヒマワリが目を見開く。

アンデッドたちは全てステラに群がり、ヒマワリの視界からは完全に消えていた。


「……アンデッドが見えないなら、戦える……!」

ヒマワリは剣を握り直し、再びヴェルグへと向かった。


「待たせたね、ネクロマンサー!」

「くっ……小娘が……!」


ヒマワリの剣が、再び光の軌跡を描く。


その時――ステラの体が眩く輝いた。


「《セラフィック・リザーブ》」

蓄積された光の力が、聖属性の爆発として解き放たれる。

轟音と共に、アンデッドたちが光の粒となって消え去った。


さらに――その爆発の余波が、ヴェルグにも直撃する。


「ぐあっ……!?」

ヴェルグがバランスを崩し、一瞬だけ隙ができた。


「今だよ!」

「わかってる!」


ヒマワリは全速力で駆け抜け、剣を振り上げた。


「《サンダーラッシュ》!《ソニック・ブレイク》!《ウィンドスラッシュ》!」

雷、風、連撃――全てが一点に集中する。

ヴェルグの体が光に包まれ――やがて、粒子となって消えていった。


「……やった……!」

二人は同時に叫び、ハイタッチを交わした。


中央に浮かんでいた黒い宝石も光に包まれ、砕け散る。

その瞬間――部屋の中央に、宝箱が現れた。


「宝箱だ!」

ステラが駆け寄り、蓋を開ける。

中には、《古の宝石》が二つ、輝いていた。


「やったね、ステラ!これで合計四つ!」

「うん!頑張ったね!」


ヒマワリはほっと息を吐き、消えたヴェルグのいた場所を見つめた。


「……アンデッド苦手なのに、あんなの出すとか絶対ひどいよ!反則だよ!」

「ひ、ヒマワリちゃん、途中で固まってたよね……?」

「そりゃ固まるよ!私、ほんと無理なんだよあれ!」

「知ってるよ。でもヒマワリちゃんのことは、私がちゃんと守るから」

「……っ、急にそんなこと言う!?……でもありがと、ほんとに」


ヒマワリが笑いかけると、ステラも嬉しそうに笑った。

二人は宝箱を回収し、小屋へと戻った。


これで――イベントで集めた《古の宝石》は、合計四つ。

二人の冒険は、まだまだ続く――。


場所が分からなければ、全部燃やせばいいじゃない。

そんな燃焼系のマリーアントワネットのお言葉をお借りしました(笑)


次回更新:2/8 日曜日

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ