第035話 極振りヒーラー、不気味な森の奥で
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二人は、元いた草原に戻っていた。
青い空、緑の草、そして遠くに見える山脈。
「……戻ってきた!」
「うん。さて、次はどうする?」
「とりあえず、《古の宝石》を探そう!まだまだ足りないし!」
「そうだね!頑張ろう!」
二人は笑い合い、再び探索を開始した。
草原をひたすら歩き続ける。
だが――不思議なことに、モンスターにも、他のプレイヤーにも一切出くわさない。
「……なんか、静かだね」
ステラが呟く。
「うん。さっきはゴブリンがいたのに……」
ヒマワリも周囲を警戒しながら歩を進める。
1時間、2時間――
ひたすら草原を歩き続けたが、何も起こらない。
「……疲れたね」
「うん……でも、まだ時間はあるし、諦めずに探そう」
「そうだね」
やがて――視界の先に、うっそうと茂る森が見えてきた。
「あ……森だ」
「うん。ちょっと不気味だけど……入ってみる?」
ヒマワリがステラを見た。
「……うん。もしかしたら、《古の宝石》があるかもしれないし」
「そうだね。じゃあ、行こう」
二人は森へと足を踏み入れた。
森の中は、予想以上に薄暗かった。
木々が密集し、枝葉が光を遮っている。
時刻は夕方――太陽が傾き始め、森の中はさらに暗さを増していた。
「……なんか、不気味だね」
ステラが小さく呟く。
「う、うん……ちょっと怖いかも」
ヒマワリは剣を抜き、警戒しながら進む。
木々の間を縫うように歩いていくと、時折、風が吹き抜けて枝が揺れる。
ざわざわと葉が擦れる音が、妙に不安を煽る。
「……ねえ、ステラ」
「ん?」
「なんか……変な音しない?」
「え?」
ステラが耳を澄ますと――
ガサッ。
背後で、何かが動く音がした。
「っ!?」
二人は同時に振り向く。
そこには――
ボロ布を纏った、骸骨の姿があった。
《スケルトン・ソルジャー》。
さらに、その隣には半透明の幽霊のような姿が並んでいる。
《レイス》。
「ひ、ひぃっ……!?」
ヒマワリの顔が一気に青ざめた。
「ちょ、ちょっと待って……アンデッド系……!?」
スケルトンがカタカタと骨を鳴らしながら、錆びた剣を構える。
レイスがふわりと浮かび上がり、冷たい視線を二人へと向ける。
「ひ、ひぃぃ……!」
ヒマワリは剣を構えるが、その手が震えている。
「だ、大丈夫……私、戦える……戦えるから……!」
そう言いながらも、足が前に出ない。
スケルトンが一歩踏み出すたび、ヒマワリは一歩後退する。
「ヒマワリちゃん……?」
「だ、大丈夫……!ちょ、ちょっと待って……心の準備を……!」
だが――スケルトンは容赦なく襲いかかってきた。
「ひゃあああっ!?」
ヒマワリは咄嗟に剣で受け止めるが、その動きはいつもの鋭さがない。
「ヒマワリちゃん、後ろ!」
「え……きゃああっ!?」
レイスが背後から迫り、冷たい手が伸びる。
ヒマワリは慌てて飛び退くが、完全にパニック状態だった。
「む、無理……!ステラ、ごめん……!ちょっと、これ無理……!」
「わ、わかった!任せて!」
ステラは杖を構え、前に出た。
「《ヒール》!」
光が体を包み、《リストア・ヴェール》が展開される。
スケルトンの剣がバリアを叩くが、ダメージは通らない。
「よし……《セラフィック・リザーブ》!」
ステラが杖を掲げると、眩い光が爆ぜた。
聖属性のエネルギーが、スケルトンとレイスを包み込む。
悲鳴のような音を上げて、二体は光の粒となって消えた。
「ふぅ……倒した……」
ステラが胸を撫で下ろした、その瞬間だった。
――ガサッ、ガサガサッ……!
森の奥から、ざわり、と不気味な気配が広がった。
倒した直後の光に反応したのか、木々の間からアンデッドたちの影が次々と姿を見せた。
《スケルトン・ソルジャー》
《レイス》
《ゾンビ》
他にもアンデット系のモンスターがまるでパレードをするかのようにこちらに向かって歩いてくる。
「ふ、増えたぁぁぁ!?なんでぇぇ!?」
「ひぃぃぃ……!ステラ、助けて……!」
ヒマワリはもはや戦う気力を失い、ステラの後ろに隠れた。
「ま、待って……落ち着いて……!任せて……!」
ステラは少し前に出て杖を構え直し、敵を引き寄せるあのスキルを口にした。
――が、それはすぐに後悔することになる。
「《挑発》!」
魔法陣が広がり、淡い赤の衝撃波が森へと走った。
その瞬間――
ガサガサガサガサガサッ!!
本来なら届かないはずの“少し離れた位置”にいたアンデッドたちまで、
一斉にこちらへ向かって歩き出す。
「ちょっ!?なんであんな遠くのやつまで来てるの!?
ステラ!?いじめ!?これいじめでしょ絶対ーー!!」
「えっ!?違うよ!?そんな広いと思わなかっただけだよ!?仕様だからぁ!」
だが言い訳もむなしく――
森の細い通路を抜けて来たモンスターたちは、
なぜか“わざわざヒマワリの真横”を通過してからステラへ向かおうとしていた。
「ひっ……ひぃぃぃっ!!なんで私の横通るの!?
絶対わざとでしょ!?わざとだよね!?アンデッドのいじめだぁぁ!!」
「わざとじゃないってばぁぁ!!」
ステラは慌ててヒマワリを庇い、杖を振りかざす。
「《フェニクス・フレア》!」
炎が爆ぜ、轟音が森を震わせた。
今回はただの炎ではない。
不死鳥の形を成した炎が、森全体を飛び回り――
残らずアンデッドたちを浄化していく。
「え……?」
ヒマワリが目を見開く。
不死鳥の炎が森全体を包み込み、木々を焼き払い、アンデッドモンスターたちを一掃していく。
轟音と共に、森が炎に包まれる。
やがて――炎が消えた後には、焼け焦げた地面と、消え去ったアンデッドモンスターたちだけが残っていた。
「……や、やった……」
ステラが肩を落としながら呟く。
「す、すごい……ステラ、すごかった……!」
ヒマワリが駆け寄り、目を輝かせる。
「えへへ……ありがと……」
「でも……ごめんね、ちゃんと戦えなくて……」
ヒマワリは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ううん、気にしないで。昔からお化け屋敷とか、怖い系はダメだったもんね」
「う、うん……女の子はホラー苦手なの……」
「……私も一応女の子なんだけど」
ステラがむくりと頬を膨らませると、ヒマワリは照れ笑いを浮かべた。
「ステラは強いから……!」
「そ、そんなことないよ……!」
二人は笑い合い、ようやく緊張が解けた。
その時――
焼け焦げた木々の向こうに、小さな小屋が見えた。
「あ……あれ、小屋?」
「本当だ……森を焼いたから見えたのかも」
「行ってみよう!」
二人は小屋へと駆け寄った。
古びた木造の小屋で、扉は半開きになっている。
「……入ってみる?」
「うん。もしかしたら、《古の宝石》があるかも」
二人は慎重に扉を押し開け、中へと入った。
小屋の中は薄暗く、埃が積もっている。
だが――幸いなことに、モンスターの気配はない。
「……ふぅ。とりあえず、ここで休憩しよっか」
「うん。さっきは怖かった……」
ヒマワリは床に座り込み、大きく息を吐いた。
「お疲れ様、ヒマワリちゃん」
「うん……ステラもお疲れ様」
二人は小屋の中で、しばし休息を取ることにした。
外では、焼け焦げた森が静かに佇んでいた――。
あっさり森を焼き尽くすステラちゃん、恐ろしや(笑)
次は2/3に投稿予定。




