第029話 極振りヒーラー、戦闘狂の称号
第二階層に進出してから、数日が経った。
ステラとヒマワリは、ハネリ村を拠点に少しずつ二階層の探索を進めていた。
青い空が広がり、風が心地よく吹き抜けるこの階層は、一階層とは雰囲気がまるで違う。
色とりどりの鳥たちが空を舞い、草原には花が咲き乱れている。
「今日もいい天気だね!」
ステラが空を見上げながら、嬉しそうに笑った。
「うん。でも、今日はレベル上げの前に――情報収集しよっか」
「情報収集?」
「うん。掲示板に新しいスキルの情報が載ってるかもしれないし」
二人は村の中央にある冒険者掲示板へと向かった。
掲示板には、プレイヤーたちが書き込んだ情報がびっしりと並んでいる。
「えっと……スキル情報、スキル情報……」
ヒマワリが掲示板をスクロールしていくと、ある書き込みが目に留まった。
『新スキル情報!
《MP強化・小》
習得条件:MPポーションを累計30本消費する
効果:最大MPが+10される
《MPカット・小》
習得条件:累計でスキルを500回使用する
効果:全スキルの消費MPが5%減少する』
「おお……これ、便利そう!」
ヒマワリが目を輝かせる。
「うん!特にMPカット・小は、長期戦になった時に助かりそう……!」
「でも……MPポーション30本かぁ……」
ヒマワリは少し困ったように眉を寄せた。
「結構高いんだよね、これ。累計だから、今まで使った分も含まれるけど……私、そんなに使ってないかも」
「あ……そっか。ヒマワリちゃん、ほとんどダメージ受けないもんね」
「うん。MPポーションも、あんまり使わないし……これは厳しいかも」
一方、ステラはメニューを開き、自分のアイテム履歴を確認した。
「えっと……私は……あ、26本消費してる!」
「おお、結構使ってるね」
「うん。ボス戦とか、長期戦になった時に結構使ったから……あと4本で習得できそう!」
「じゃあ、ステラは習得しよっか。私は……また今度でいいかな」
「ごめんね、ヒマワリちゃん……」
「ううん、気にしないで!ステラが強くなるのは嬉しいし」
ヒマワリは笑って、ステラの肩を叩いた。
「それじゃあ、まずMPポーション買ってくるね」
「うん!」
ステラは露店でMPポーションを4本購入し、その場で消費した。
MPが満タンの状態で飲んでも意味はないが、習得条件を満たすためには仕方ない。
「……4本目……!」
最後の一本を飲み終えた瞬間、スキル習得のウィンドウが表示された。
《MP強化・小》を習得しました!
「やった!」
ステラは嬉しそうに拳を握る。
「おめでと、ステラ!」
「ありがと!次は、MPカット・小だね」
「累計でスキルを500回……結構時間かかりそうだね」
「うん。でも、普通に冒険してれば、そのうち習得できると思う」
「じゃあ、レベル上げしながらカウント数稼ごっか」
「うん!」
二人は村の外へと出た。
二階層の草原には、色とりどりのモンスターが生息している。
《スカイ・ラビット》、《ウィンド・バード》、《フラワー・ウルフ》――。
どれも一階層より少し強いが、二人にとっては十分に狩れる相手だ。
「それじゃあ――行くよ!《挑発》!」
ステラが詠唱すると、周囲のモンスターが一斉に集まってくる。
「《ヒール》!《リジェネ》!《ドレイン・オーラ》!」
次々とスキルを発動し、カウント数を稼いでいく。
一方、ヒマワリは集まったモンスターを次々と切り裂いていく。
「《スラッシュ》!《ソニック・ブレイク》!」
剣が風を切り、モンスターが光の粒となって消えていく。
その動きを見ながら、ステラはふと気づいた。
「……ねえ、ヒマワリちゃん」
「ん?どうしたの?」
「なんか……剣の振り方、剣道みたいだね」
「え?」
ヒマワリは一瞬動きを止め、ステラを見た。
「ほら、踏み込み方とか、剣の軌道とか……すごく綺麗で、型にはまってる感じがするの」
「あー……うん、実はね」
ヒマワリは少し照れたように笑った。
「明日、剣道の予選があるんだ。それで、ゲームで覚えた技を現実で再現できないかなって……ちょっと特訓してたんだよね」
「へぇ~!すごい!できそう?」
「うーん……もうちょっとでできそうなんだけどなぁ。ソニック・ブレイクみたいな速さ、現実でも出せたら最高なんだけど」
「……それ、そのうち人間の限界超えそうだね」
ステラが真顔でツッコむと、ヒマワリは笑って肩をすくめた。
「まあね。でも、イメージトレーニングにはなるかなって」
「ふふっ、頑張ってね」
「ありがと!」
二人は再び狩りに集中する。
ステラは次々とスキルを使い、カウント数を稼いでいく。
《ヒール》、《リジェネ》、《ドレイン・オーラ》、《プロテス》、《挑発》――。
ヒマワリも負けじと、スキルを連発していく。
《スラッシュ》、《ソニック・ブレイク》、《ウィンドスラッシュ》、《サンダーラッシュ》――。
数時間後、ようやく二人ともスキル習得のウィンドウが表示された。
《MPカット・小》を習得しました!
「やった……!これで、もっと長く戦えるようになるね!」
「うん!これでステラのMP問題も少しは楽になるね」
「そうだね!……あ、そういえば、一応スキル確認しておこうかな」
ステラはステータスウィンドウを開き、スキル欄をスクロールした。
「えっと……あ、MPカット・小がちゃんと追加されてる!」
「私も確認しとこっと……あれ?」
ヒマワリも自分のスキル欄を見て、目を瞬かせた。
「……なんか、もう一個スキル習得してるんだけど」
「え、本当?」
ステラも慌ててもう一度自分のスキル欄を確認する。
「あ……私も習得してる。気づかなかった……!」
二人は顔を見合わせ、スキルの詳細を読み上げた。
《戦闘狂》
習得条件:3時間以上、戦闘状態を維持する
効果:戦闘状態になってから10秒ごとにSTRが1%増加する。最大30%まで上昇。戦闘終了時にリセット。
「……戦闘狂、って」
ステラが呆然とした顔でヒマワリを見た。
「3時間も戦闘状態って……ヒマワリちゃん、完全に戦闘狂じゃん……」
「ちょ、ちょっと待って!ステラも習得してるでしょ!?」
「う、うん……でも私はヒーラーだから……ほら、回復してたら自然と長くなっちゃうっていうか……」
「それ言ったら私だって!レベル上げしてたら自然と……!」
「でもヒマワリちゃん、楽しそうに戦ってたよね?」
「そ、それは……まあ、ちょっとは……」
ヒマワリは視線を逸らし、頬を掻いた。
「……でも、このスキル、攻撃力上がって便利かも。戦闘が長引いた時に役立ちそう」
「そうだね。……私はSTRゼロだから、意味ないけど」
「あー……そっか。ステラには恩恵ないね」
「うん……まあ、でもレアスキルみたいだし、嬉しいかな」
「えへへ……ありがと、ヒマワリちゃん」
二人は満足そうに笑い合った。
空はすっかり夕焼けに染まり、村の明かりが灯り始めている。
「……そろそろ、戻ろっか」
「うん。今日はここまでだね」
二人は村へと戻り、広場の噴水前で立ち止まった。
「それじゃあ……またね、ステラ」
「うん。……あ、そうだ」
ステラはふと思い出したように、ヒマワリを見つめた。
「明日の試合、頑張ってね」
「……ありがと」
二人は手を振り合い、ログアウトのウィンドウを開いた。
光が二人を包み込み、姿が消えていく。
静かな夕暮れの村に、再び鳥の声だけが響いていた。
2人とも戦闘狂になりました(笑)
次は1/20に投稿予定です。




