第027話 極振りヒーラー、二人でボス討伐
「それじゃあ――行くよ!」
ヒマワリが剣を構えると同時に、ステラは杖をヒマワリへと向けた。
「《プロテス》!」
淡い光がヒマワリを包み込み、VITが大幅に上昇する。
「よし……それじゃあ、私も準備!」
ステラは自分自身に杖を向け、深く息を吸った。
「《ヒール》!」
光が体を包み、HPが全快する。
さらに、回復の光が超過した分がバリアとなり、淡い水色の膜が、ステラの全身を優しく包み込んだ。
「よし……いくよ、《挑発》!」
ステラの足元に魔法陣が広がり、赤色の波紋がガルドラへと伸びる。
ガルドラの赤い瞳が、ゆっくりとステラを捉えた。
次の瞬間――
ドンッ!
地面が揺れるほどの轟音と共に、ガルドラが巨大な戦斧を振り下ろした。
「ひゃあっ!?」
ステラは思わず目を瞑る。
――だが、衝撃は思ったより軽かった。
いや、軽いわけではない。
リストア・ヴェールが音を立てて砕け散り、その衝撃がステラの体を貫く。
HPバーが一気に半分まで削れた。
「う、うそ……一撃で!?」
「ステラ!大丈夫!?」
「だ、大丈夫……!《ヒール》!」
慌てて回復魔法を唱えると、光が体を包み、HPが全快する。
同時に、再びリストア・ヴェールが展開された。
「ふぅ……間に合った……」
ステラはほっと息を吐くと、続けて詠唱した。
「《ドレイン・オーラ》!」
蒼い光の輪が広がり、ガルドラから生命力を吸い上げていく。
吸収した光がリストア・ヴェールに流れ込み、バリアの耐久がさらに増していく。
「よし……これなら!」
その時、ヒマワリがふと疑問を口にした。
「ねえステラ、プロテスって自分にもかけられないの?」
「え?」
ステラはきょとんとした顔でヒマワリを見た。
「……かけられるの?」
「えぇぇ!?今まで気づいてなかったの!?」
ヒマワリは思わず剣を持ったまま頭を抱えた。
「だ、だって……補助魔法って、味方を強化するものだと思ってたし……」
「自分も"味方"でしょ普通!」
「そ、そうなんだ……!? じゃ、じゃあ――」
ステラは慌てて自分に杖を向け、
「《プロテス》!」
光が体を包み込む。
瞬間、体が軽くなり――先ほどとは比べ物にならないほどの安定感が生まれた。
「お、おお……すごい!体が軽い!」
「いや、軽くなったんじゃなくて防御が上がったんだけど……まあいいや」
ヒマワリは呆れたように肩を落としたが、すぐに気を取り直して剣を構えた。
「これで安心して攻撃できる!行くよ、ステラ!」
「うん!」
ステラが挑発を維持する中、ヒマワリは風のように駆け出した。
「《ストームスタンス》!」
全身が風と雷を纏い、移動速度が一気に上がる。
「《スラッシュ》ッ!」
鋭い斬撃がガルドラの脚を切り裂く。
「《ソニック・ブレイク》ッ!」
二連撃が腹部に叩き込まれ、ガルドラのHPがじりじりと削れていく。
だが、ガルドラも黙ってはいない。
巨大な戦斧を横薙ぎに振るい、ヒマワリを狙う。
「――遅いっ!」
ヒマワリは低く身を屈め、紙一重で躱す。
だが、次の瞬間――
ガルドラの左手の盾が、ヒマワリめがけて突き出された。
「っ!?」
予想外の攻撃に、ヒマワリは咄嗟に剣で受け止める。
ガキィンッ!
鈍い衝撃が腕を伝い、ヒマワリの体が後方へ弾かれる。
「ヒマワリちゃん!」
「大丈夫!」
ヒマワリはすぐに体勢を立て直し、再び前へ出た。
「《サンダーラッシュ》ッ!」
雷の速度で三連撃を繰り出し、ガルドラの胸部を切り裂く。
一方、ステラは挑発を維持しながら、ガルドラの攻撃を受け続けていた。
プロテスの効果も加わり、リストア・ヴェールは容易には壊れない。
攻撃を受けるたび、リフレクト・ヴェールの反射ダメージがガルドラを削り――
ドレイン・オーラが生命力を吸い上げ、バリアを強化していく。
「いける……!このままなら……!」
ステラが希望を抱いた、その時。
ガルドラのHPバーが、ついに50%を切った。
――その瞬間。
ガルドラの体が淡く光り始めた。
「え……?」
ヒマワリが攻撃を続けるが――
カンッ、カンッ。
まるで硬い壁を叩いているかのような音が響き、ダメージが一切入らない。
「ヒマワリちゃん!?ダメージが通ってないよ!?」
「多分何かのギミック……だね!どこか、弱点があるはず。
ちょっと観察するからそのまま挑発で防御を受け持ってくれる?」
「分かったよ!《リジェネ》」
ステラはリジェネでリストア・ヴェールの耐久値をさらに上げて攻撃を耐え続ける
その隙にヒマワリは後退し、冷静に周囲を見渡した。
ガルドラの体を覆う淡い光――その光は、広間の四隅にある石柱から伸びているように見える。
「あれだ……!ステラ、あの石柱を壊して!」
「わ、わかった!セラフィック・リザーブで壊すから戻ってきて!」
ガルドラの攻撃を躱しながらステラの後ろまで下がる。
「お願い!」
「最大出力じゃないけど…《セラフィック・リザーブ》!」
眩い光が爆ぜ、聖属性のエネルギーが石柱へと叩き込まれる。
轟音と共に、四つ全ての石柱が砕け散り、ガルドラを覆っていた光が消えた。
「今だっ!」
ヒマワリは剣を構え直し、全力で踏み込んだ。
「《ウィンドスラッシュ》ッ!」
風を纏った斬撃がガルドラの胸部を深く切り裂く。
「《スラッシュ》ッ!」
追撃の一撃が叩き込まれ、ガルドラのHPがさらに削れていく。
ガルドラは怒りの咆哮を上げ、戦斧を振り回す。
だが、その攻撃はステラのリストア・ヴェールに阻まれ――
反射ダメージで、さらにHPが削れていく。
やがて、ガルドラのHPバーが残り1割を切った。
「よし……もう一回!」
ステラは杖を高く掲げた。
「《セラフィック・リザーブ》!」
眩い光が再び爆ぜた。
轟音と共に、聖属性のエネルギーがガルドラを包み込む。
光の奔流が広間を満たし――
ガルドラの巨体が、ゆっくりと光の粒となって消えていった。
静寂。
「……や、やった……!」
ステラはその場に膝をつき、大きく息を吐いた。
「やったね、ステラ!」
ヒマワリが駆け寄り、ステラの肩を叩く。
「うん……!ヒマワリちゃんのおかげだよ……!」
「ううん、二人でやったんだよ」
ヒマワリは笑って、ステラの手を引いて立ち上がらせた。
そして――広間の中央に、淡い光を放つ転送陣が現れた。
「あれが……二階層への入り口、だね」
「うん……!」
二人は顔を見合わせ、笑い合う。
「それじゃあ――行こう!」
「うん!」
二人は手を繋ぎ、転送陣へと足を踏み入れた。
光が二人を包み込み――
次の瞬間、視界が真っ白に染まった。
次は1/13に投稿予定です。




