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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第026話 極振りヒーラー、第一階層のボスへ

ヒマワリが迅雷シリーズを手に入れてから三日後――。

朝、ログインしたステラとヒマワリを迎えたのは、広場中央に浮かぶ巨大な告知ホログラムだった。


『《アップデート実装完了》

 第二階層《天翔の鳥籠》が解放されました!

 第一階層最北部のボス《ガルドラ》を討伐し、新たな冒険へ――』


「おおっ……!ついに来たね、二階層!」

ヒマワリは目を輝かせながら、告知文を指差した。


「天翔の鳥籠……?なんだか、綺麗な名前だね」

「うん。きっと、空が近くて鳥がいっぱいいる場所なんじゃないかな」

「わぁ……楽しみ!早く行きたいね!」


ステラが嬉しそうに笑うと、ヒマワリもにこりと頷いた。

だが、その時――広場のあちこちから、プレイヤーたちの声が聞こえてきた。


「おい、聞いたか?レヴィンがもう二階層行ったらしいぞ」

「マジで!?アップデートから一時間ちょいしか経ってないのに!?」

「流石だよな……ボス瞬殺して即突破とか、化け物かよ」

「俺らもさっさとボス倒して二階層行こうぜ!」


ヒマワリの表情が、一瞬だけきゅっと引き締まった。

「……レヴィンさん、か」

その名前を聞いた瞬間、心の奥で小さな炎が灯る。

アルカディア・カップで一位を取った剣士。

誰よりも早く、次のステージへ進んだプレイヤー。


(負けたくない……!)


ゲーマーとして、一人の剣士としての闘志が、じりじりと胸の内で燃え上がる。

だが――その熱を感じた次の瞬間、ヒマワリはふとステラの顔を見た。

隣にいるのは、楽しそうに空を見上げている、大切な友達。


「……うん。でも、急ぐ必要はないよね」

ヒマワリは小さく笑って、ステラの肩を軽く叩いた。


「え?どうしたの、ヒマワリちゃん?」

「ううん、なんでもない。ただ――せっかくステラと一緒に冒険してるんだし、焦って進むより、ちゃんと楽しみながら行きたいなって」

「ふふっ、そうだね。私も、ヒマワリちゃんと一緒だから楽しいんだよ」

ステラの笑顔を見て、ヒマワリの胸に温かいものが広がる。


(そうだ。私には私のペースがある。ステラと一緒に、ちゃんと楽しんで――その上で、勝つ)

闘志は消えない。

けれど、それ以上に大切なものがここにある。


「よしっ、それじゃあ――準備しよっか!」

ヒマワリが元気よく拳を握ると、ステラも嬉しそうに頷いた。

「うん!ボス討伐の準備、始めよう!」



二人は広場の露店が並ぶエリアへと歩き出した。

広場の端にある露店街は、朝から活気に満ちていた。

ポーション、装備、素材――色とりどりの商品が並び、NPC商人たちが威勢よく声を上げている。


「えっと……MPポーション、買っておこうかな」

ステラが立ち止まったのは、薬屋の前。

店先には、赤いHPポーションと青いMPポーションが綺麗に並んでいる。

「ボス戦、長引いたら困るもんね」

「うん。初めての階層ボスだし、少し多めに買っておこうかな」

ステラはMPポーションを10本ほど購入し、インベントリに収める。


「これで準備OKかな?」

「うん。あとは、ボスがどんな敵か……だよね」


ステラは少し不安そうに、杖を握りしめた。


「《ガルドラ》……どんなボスなんだろうね」

「わかんないけど、きっと大きくて強そうな敵だと思うよ」

「う……一撃が重かったりするのかな……」

「かもね。でも大丈夫だって。私が前に出て削るから、ステラは後ろで回復してくれればいいよ」

「うん……!気をつけてね、ヒマワリちゃん」

「任せて!」

ヒマワリは自信たっぷりに笑うと、ステラも少し安心したように頷いた


「よしっ、それじゃあ――行こっか!最北の洞窟へ!」

「うん!」

二人は拳を軽く合わせ、街の北門へと駆け出した。




第一階層の最北にある洞窟へ向かう道。

ステラはいつものように、ヒマワリの腰へロープを結びつけられていた。


「はいっ、結んだよ!」

「今日も引っ張る流れなんだね……ヒマワリちゃん、移動スピード速いから……」

「AGIにステータスをぜんぜん振ってないのが悪いんだよ? ほら、しゅっぱーつ!」

「ちょ、待っ……わ、わぁぁあああああっ!!」


ステラが若干ふわっと浮く勢いで、ヒマワリが一気に森を駆け抜けていく。

通りすがりのプレイヤーがまた噂する。


「ほら来た! 第一階層名物!」

「引っ張られてるヒーラーだ!」

「今日も楽しそうだなあいつら……」


完全に名物扱いだった。



洞窟の入り口に到着すると、ヒマワリがロープを解きながら深呼吸する。

「――到着!」

ヒマワリがようやく足を止めると、ステラはよろよろとその場に座り込んだ。


「ふぅ……生きてる……」

「えらいえらい。じゃあ、ちょっと休憩してから入ろっか」

「うん……」

ステラは息を整えながら、洞窟の入り口をじっと見つめた。

暗く、冷たい空気が漂う。

奥からは、かすかに地響きのような音が聞こえてくる。


「……なんか、すごく強そうな気配がするね」

「うん。でも――大丈夫。私たち、ちゃんと準備してきたから」

ヒマワリは剣を軽く抜いて、刃を確認する。

「それじゃあ、入る前に――準備しとこっか」

「うん!」


ステラは立ち上がり、杖をヒマワリへと向けた。

「《プロテス》!」

淡い光がヒマワリを包み込む。

瞬間、体が軽くなり、どこか強固な鎧を纏ったような感覚が広がった。


「おお……なんか、すごく守られてる感じ!」

「うん。VITが大幅に上がってるから、多少の攻撃なら耐えられるはず」

「ありがと、ステラ!」


次に、ステラは自分自身に杖を向ける。


「《ヒール》!」


光が体を包み、HPが全快する。

さらに、回復の光が超過した分がバリアとなり――

リストア・ヴェールの淡い水色の膜が、ステラの全身を優しく包み込んだ。


「よし……準備完了!」

「うん。それじゃあ――行こう!」

二人は顔を見合わせ、頷き合う。

そして――暗い洞窟の中へと、足を踏み入れた。


洞窟の中は、予想以上に広かった。

天井は高く、ところどころに青白く光る鉱石が埋め込まれている。

その光が、道を照らす唯一の明かりだった。


「うわ……綺麗……」

ステラが感嘆の声を漏らすと、ヒマワリも頷いた。

「うん。でも、油断は禁物だよ」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに――


ガサッ。


岩陰から、黒い影が飛び出してきた。

《ケイブ・バット》――洞窟に棲む、巨大なコウモリ型モンスターだ。


「来たっ!」


ヒマワリは即座に剣を抜き、低く構える。

バットが鋭い牙をむき出しにして突進してくる。


「――遅いっ!」


ヒマワリは半身をずらし、紙一重で躱す。

そのまま剣を振り抜き――


「《スラッシュ》ッ!」

鋭い斬撃がバットの翼を切り裂く。


悲鳴を上げて墜落したバットに、追撃の一閃。


「《ソニック・ブレイク》ッ!」


二連撃が炸裂し、バットは光の粒となって消えた。


「ふぅ……一匹目、撃破!」

「すごい……あっという間だったね」

「まあね。でも、これからもっと強い敵が出てくるはずだから――気を引き締めていこう」

「うん!」


二人は再び歩を進める。

洞窟の奥へ、奥へと。

道中、何度かモンスターと遭遇した。


《シャドウ・ウルフ》、《ポイズン・スパイダー》、《ケイブ・リザード》――。

どれも、初心者には手強い相手ばかりだ。

だが、ヒマワリの剣は迷いなく敵を切り裂いていく。


「《ストームスタンス》!」


ヒマワリが叫ぶと、全身が風と雷を纏う。

移動速度が一気に上がり、攻撃に追加ダメージが乗る。


「たあああっ!」


風を切るような速さで敵の懐に飛び込み、連続斬撃を叩き込む。


「《ウィンドスラッシュ》ッ!」


風を纏った斬撃が、離れた位置にいるスパイダーを一刀両断。


「《サンダーラッシュ》ッ!」


雷の速度で三連撃を繰り出し、シャドウ・ウルフを瞬殺。


「……すごいね、ヒマワリちゃん。全然ダメージ受けてないよ」

「当然でしょ?攻撃は、もらわないのが基本だから」


ヒマワリは得意げに胸を張った。

「でも、ステラがいてくれるから安心して前に出られるんだよ。ありがとね」

「えへへ……どういたしまして」


ステラは照れたように笑い、杖を握り直した。

「それじゃあ、最後まで――頑張ろうね!」

「うん!」

二人は再び歩を進める。



やがて――洞窟の最奥、巨大な石扉が現れた。

扉には、翼を広げた竜の紋章が刻まれている。


「……ここが、ボス部屋、だね」

「うん。準備、いい?」

「……うん。いつでも大丈夫!」


ステラは深く息を吸い、杖を握りしめた。

ヒマワリは剣を抜き、低く構える。


「それじゃあ――行こう!」


二人は扉に手をかけ――

ゆっくりと、押し開いた。

ギィィィ……と重い音が響き、扉の向こうに広がる光景が姿を現す。

そこには――

巨大な空洞。


そして、中央にうずくまる、巨大な人型の影。


《ガルドラ》。

第一階層のボスが、ゆっくりと頭を持ち上げた。

その姿は、古の戦士を思わせる重厚な鎧を纏った巨人。

右手には巨大な戦斧、左手には盾。

全身から放たれる威圧感が、二人を圧倒する。


「……で、でかい……!」

ステラの声が震える。


「うん……でも、やるしかないよね」

ヒマワリは剣を構え直し、一歩前に踏み出した。


「ステラ、準備はいい?」

「う、うん……!」

ステラは杖を握り直し、深く息を吸う。


「それじゃあ――始めよう!」


ヒマワリが叫ぶと同時に――

ガルドラが、重い足音を響かせながら立ち上がった。

戦いの幕が、今、上がる。


いよいよ階層ボスとの闘い!


次は1/11に投稿予定

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― 新着の感想 ―
ちょっと前まで第一階層しかなかった世界で何で「第一階層」名物なんて名前になってるんだろう? 第二階層では見られなくなる性質のものでも無いのに
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