第023話 極振りヒーラー、新スキル求め西の廃道へ
ログインの光が収まると、広場の中心にいたのは昨日と同じ顔ぶれ――
《ステラ》と《ヒマワリ》の2人だ。
「おはよ、ステラ!」
「おはよ、ヒマワリちゃん。……今日もすっごい元気だね」
「当然でしょ?だって今日はスキル探しだよ!」
まだ装備もスキルも初期状態のヒマワリは両拳をぐっと握りしめ、意気込みを見せる。
一方、ステラは淡いローブ姿に、昨日の森で手に入れた銀のアクセサリーをさりげなく身につけていた。
「ステラ、その耳飾り……昨日のドロップ?」
「うん!魔法防御+5のやつ。見た目もかわいいでしょ?」
「うん……かわいいけど……なんか私、完全に初心者って感じだなぁ……」
ヒマワリは自分の初期装備(通称:ジャージ)を見下ろし、ちょっと肩を落とした。
「まぁそうだよね、ヒマワリちゃんまだ初期装備だもんね」
「ぐっ……!言い方ぁ!」
「でも、そのぶん伸びしろがあるってことだよ!だから今日はスキルとか装備とか、いっぱい情報探そうね!」
二人は広場の外れにある「冒険者掲示板」へ向かって歩きだす。
賑やかな露店の間をすり抜けながら、衛兵のNPCとすれ違い、遠くでファンファーレが響く――
そんな街の空気を楽しみつつも、ヒマワリは目を輝かせた。
「ほんとにすごいよね、このゲーム……1つ1つ何かが始まってるって感じがする」
「うん。私もヒールから、バリアになったときすっごく感動したよ」
「バリアは反則級に強いよね……!いいなぁ、ステラはすでに“支援にして主力”って感じで」
「いやいや、ヒマワリちゃんだって片手剣スキル覚えたじゃん!これからだよ!」
ステラは笑って、ヒマワリの肩を軽く叩いた。
「……いいスキルが見つかるといいね」
「うん!探すぞー!」
――冒険者掲示板前
掲示板前にはプレイヤーたちが集まり、書き込まれた情報に熱心に目を通している。
中には雑談や攻略組の話題、イベント情報なども貼られていた。
「えっと……あった、“アップデート予告”、だって」
ステラが指差した紙には、こう書かれていた。
>まもなく2層が解放予定!
>2層へ進むには、1層北部のボス《ガルドラ》討伐が必須。
>詳細は近日公開。準備を整え、安全な攻略を!
「ガルドラ……これが1層のボスか」
「ねぇ、これ……つまり、もうすぐ次の階層が開くってことだよね!」
ヒマワリは嬉しそうに声を弾ませたが、その表情はすぐに真剣なものへと変わった。
「でも、ボス戦ってことは……ちゃんと準備しないとだよね」
「うん。できれば、ヒマワリちゃんの新しいスキルとか装備、探しに行こうよ」
「そうだね!どこかまだ行ってない場所、あるかな」
「たぶん、あると思う。北の森より奥……西の廃道とか、まだ行ってないよね」
「行ってみよっか。レアドロップとかもあるかも!」
ヒマワリは拳を握りしめ、にこりと笑った。
「よし、じゃあ行こっか!」
ヒマワリはステラの手を取り――いや、正確には、ステラの腰に結んだロープをぐいっと引っ張り始めた。
「え、またこれ……?」
「だって、歩いてたら日が暮れるでしょ?今日の目標は新スキル探しなんだから!」
「うぅ……理屈は分かるけどぉ……」
ステラはローブをたくし上げ、為す術なくヒマワリに引かれていく。
その様子はまるで「モフモフ引き連れ型タンク&ひっぱり剣士」の珍妙コンビ。
しかし、いつしかこの光景は――
あ、またヒモでヒーラー引っ張ってる子たち来たぞ
あのスタイル、一周回って効率いいのか……?
いや単に剣士が全力で走りたいだけ説
そんな噂が立つほど、1層名物になっていたのだった。
石畳が途切れ、荒れた土と風化した遺跡が広がる《西の廃道:忘却の残滓》に到着した。
道幅は狭く、周囲の建物は黒ずみ、昼間だというのにどこか薄暗い。
「ふぅ……到着!ステラ、息してる?」
「ふわぁ……心は折れてるけど、かろうじて生きてます……」
ロープが解かれ、ステラはよろよろと地面に座り込む。
そんなやり取りを交わしながらも、ヒマワリの表情は期待に満ちていた。
「――絶対、いいスキル見つけるぞ!」
「うん。一緒に強くなろうね、ヒマワリちゃん!」
奇妙なロープ移動から始まった二人の冒険は、今日もユニークに幕を開けた――。
帰省で投稿できなかった分、今週は少しだけ投稿頻度を上げます。
次は1/6に投稿予定です。




