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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第021話 極振りヒーラー、合宿明けの驚き

帰省するにあたり、少し書き留めていたファイルが壊れてしまいました...

次回の話がおかしくならないように日葵視点の話を新規に執筆したので

今回はこのお話を楽しんでいただければ幸いです。

帰宅後、合宿で使った道着を洗濯機に放り込み、竹刀袋を部屋の隅に立てかける。

荷物の片付けを終えた陽野日葵は、自室のベッドに腰を下ろした。

ようやく一息つける時間だ。


「……灯里、ゲーム始めてたんだなぁ。」

灯里には「先に始めておいていいよ」と言ったけれど、彼女はあまりゲームが得意じゃない。

多分、まだキャラ作成くらいで止まってるだろう。

合宿が終わったら、一緒にゆっくり教えてあげればいい――そう思っていた。


「それがまさかイベント3位に入っていたなんて」


日葵はスマホを取り出し、ゲームの掲示板を開いた。

画面には、まだアルカディア・カップの話題が残っている。




――合宿十日目の夜のことを思い出す。


消灯時間を過ぎた薄暗い部屋で、布団の中でこっそりスマホを開いていた。

朝から晩まで素振り三昧で、全身が悲鳴を上げていたのに、

どうしても気になって、灯里に勧めたゲームの情報を調べてしまった。


『《アルカディア・カップ》開催中!』

イベント告知を見て、少しだけ羨ましくなった。


掲示板は大盛り上がりで、話題は尽きない。

《レヴィンつええええ!!!》

《ミラージュの立ち回りえぐい》

《3位のステラって誰?ヒーラーなのに化け物すぎる》


「……ステラ?」


日葵は画面をスクロールした。


《第1位:レヴィン(剣)――圧倒的火力と立ち回り》

《第2位:ミラージュ(ダガー)――冷静な戦術眼》

《第3位:ステラ(杖)――回復職なのに最終兵器》


「回復職で3位……すごいな」


思わず声が出そうになり、慌てて口を押さえた。

隣の布団で寝ている後輩に気づかれたらまずい。

興味が湧いて、さらにスレッドを追っていく。


《ステラのビルド予想:WIS極振りっぽい》

《STRもVITもゼロとか正気か?》

《攻撃受けるたび反射で相手が死ぬの笑う》

《最後の爆発で広場全滅は伝説だろ》


「……WIS極振り?は?マジで?」


日葵は思わず小さく呟く。

STRもVITもゼロ。

攻撃力も防御力も捨てて、回復だけに全振り。


「バカじゃん……そんなビルド、普通死ぬでしょ」


呆れたようにため息をつく。

どんなに回復力があっても、攻撃を受け続けたら意味がない。

火力がなければ敵も倒せない。

理論上は面白いかもしれないけど、実戦では無謀すぎる。

というより、PvPで勝てるビジョンが全く見えないのだった。


「でも……3位、か」


それでも結果を出している事実に、日葵は少しだけ興味を引かれた。

どんな立ち回りをすれば、そんなビルドで勝てるんだろう。

けれど、それ以上深く考えることはなかった。

翌日も朝から稽古が待っている。

スマホを閉じて、日葵は眠りについた。



――そして今日、カフェでの会話。


「名前は本名からイメージして《ステラ》にしたんだ」


灯里の言葉を聞いた瞬間、合宿中に見た掲示板の光景が一気に蘇った。

《ステラ》《杖》《ヒーラー》《WIS極振り》

あの時「バカなビルド」だと思っていたプレイヤーが――灯里だった。


「……マジか」


日葵はベッドの上で、もう一度掲示板を開く。

合宿中に見たスレッドが、まだ残っていた。


《ステラの反射ダメ、計算おかしくない?》

《遺跡全滅させてて草》

《天然なのか計算なのか分からんのが怖い》


「天然に決まってるでしょ……」


日葵は思わず苦笑した。

灯里が、戦略的にあんなビルドを組むわけがない。

きっと「死にたくないから回復を上げよう」くらいの感覚で、

気づいたらとんでもないことになっていたんだろう。

それでも――自分が勧めたゲームを、灯里は楽しんでくれていた。

一人でも、ちゃんと。


「ふふっ……一人でも楽しめてたみたいでよかった」


安心と共に、温かいものが胸に広がる。

けれど同時に、小さな焦りも湧いてきた。

灯里は今、3位。

自分はまだ、キャラクターすら作っていない。


「……追いつくの、めちゃくちゃ大変そうじゃん」


日葵は天井を見上げて、小さく呟いた。

でも、それも悪くない。

目標があるのは、楽しいことだから。


「よし……夜までにキャラ作っとこ」


今夜、灯里と一緒にログインする約束をしている。

それまでに準備を整えておかないと。



日葵はVRゴーグルを頭に装着し、ハードの電源を入れた。


画面に表示される《Arcadia Online》のタイトルロゴ。

その下に、小さく光る文字――《NEW GAME》。

指先でタップすると、キャラクタークリエイト画面が開いた。


「まずは……武器、か」

画面には《片手剣》《両手剣》《短剣》《杖》《魔導書》など、様々な武器種が並んでいる。


「灯里が杖だから……前衛がいいかな」


バランスを考えれば、ヒーラーの灯里を守る役割が必要だ。

片手剣か両手剣、あるいは槍。


「……でも、二人で後衛っていうのもアリかも」

魔導書を選んで、遠距離から攻撃と回復でサポートし合う。

それも面白そうだ。

しばらく悩んだ後、日葵は《片手剣》を選んだ。


「やっぱり前衛かな。灯里、守らなきゃだし」

剣道で培った感覚も活かせそうだ。

それに――自分の目で戦場を見ていたい。

次は、ステータスの振り分け。

《STR》《VIT》《AGI》《DEX》《INT》《WIS》《LUK》


「STRを上げれば火力が出る……でも、AGIも欲しいな」

素早く動いて、確実に攻撃を当てる。

それが日葵の戦い方だ。


「よし、AGI優先で……STRも上げていこう」

指先で画面を操作し、ステータスを振り分けていく。

攻撃力と機動力――バランスの取れたビルドが出来上がった。

「これで……っと」

最後に、キャラクターの外見を調整する。

髪型、目の色、身長――細かい部分まで丁寧に設定していく。

そして、プレイヤーネームの入力欄。


「名前は……」

少し悩んで、日葵は《ヒマワリ》と入力した。


「よし、完成」

画面に表示された自分のキャラクターを見つめる。

片手剣を構えた姿が、どこか凛々しい。


「……灯里、待っててね」


今夜の冒険を楽しみにしつつ、そのままログアウトするのだった。

次回は年明けの1/3に投稿予定です。


注目ランキング53位に入っていてビビりました(笑)

励みやモチベーションの維持にもなりますので、少しでも気にっていただければ

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