第015話 極振りヒーラー、アルカディア杯へ
ステータスの誤記を修正
淡い光が視界を包み、ステラの身体がデータの粒子から再構成される。
――目を開けると、そこはいつもの《はじまりの町 リーベル》。
人で賑わう大通りの石畳の上だった。
NPC商人の呼び声、アイテムを買い込むプレイヤーたちのざわめき。
広場の中心には、今日だけ特別に設置された《イベント告知用ホロパネル》が光を放っている。
「……いよいよ、今日か」
ステラは小さく息を吐き、手にした杖を軽く握り直した。
イベントの日が来るまで、彼女はずっとレベル上げを続けていた。
さらに、彼女は粘り強くレベル上げを続けた結果、《MP強化・小》と《MPカット・小》というスキルを習得。
ヒールはあくまでも基本的な回復スキルの1つである。
少しではあるが、MPの絶対値がさらに増え、消費も抑えられたことで、大技を連発しない限りはMPの心配はほとんどなくなっていた。
WISに極ぶりし続けることで耐久値ギリギリまで追い込まれることが多かったリストア・ヴェールも、
花咲きの草原のモンスターでは破られないほど、耐久値が増していた。
攻撃手段がほとんどない自分にできるのは、防御と回復の強化だけ。
だからこそ――ただ、ひたすらに耐え抜く練習を。
「あの時から……私、ちょっとだけ強くなったのかな」
ウィンドウを開く。
半透明のインターフェースに、今のステータスが映し出される。
プレイヤー名:ステラ
レベル:21
HP:75
MP:370
STR:0 (+5)
VIT:0 (+45)
DEX:0 (+5)
AGI:0 (+25)
INT:0 (+35)
WIS:200 (+85)
LUK:0 (+0)
装備
頭 【蒼命のヴェール】
体 【蒼命のローブ】
右手 【蒼命のロッド】
左手 【蒼命のバングル】
足 【蒼命のスカート】
靴 【蒼命のブーツ】
装飾品 【蒼流の指輪】
【アクア・リングレット】
【空欄】
スキル
《ヒール》/《リストア・ヴェール》/《マナ・サーキュレーション》/《リジェネ》
《キュア・ブースト》/《ドレイン・オーラ》/《セラフィック・リザーブ》/《リフレクト・ヴェール》
《クリーンセンス》/《挑発》/《アイアン・フォートレス》
《回復の心得Ⅰ》/《MP強化・小》/《MPカット・小》
「……プレイヤーの方が攻撃強いよね。回復、ちゃんと間に合うかな……」
――ステラは知らなかった。
自分の回復力が常識外れであることも。
そして、彼女が展開する《リストア・ヴェール》の異常なまでの耐久値が、
他のどの防御スキルよりも、このバトルロワイヤルで脅威となることを。
小さな光の粒子が凝縮したような、手のひらサイズの妖精の姿。
運営ナビキャラ《パルム》が、きらきらと光る半透明の羽根を羽ばたかせながら、ふわりと姿を現した。
頭部には小さな花冠のような飾りが光っている。
ふよふよと浮遊しながら、明るい声で告げる。
「プレイヤーの皆さ~ん! お待たせいたしました!
特別イベント――《アルカディア・カップ》、これより開催ですっ!」
周囲のプレイヤーたちがざわつく。
ステラも自然と視線を上げた。
パルムは頭上のホロパネルの周りをくるくる回りながら、ルールを説明する。
「まずルールを説明しますねっ!
今回のイベントは――ソロ形式のバトルロワイヤル!
制限時間は2時間!
倒した数と倒された回数でスコアが決まります!
最初の1時間は実力勝負!
プレイヤーを倒せばスコアアップ、倒されるとスコアダウンっ!
そして1時間経過後、特別ルールが発動します!
――スコアの増減方法が変わりますので、その時にまた説明しますねっ!」
周囲からは「ふむふむ」「標準的なルールだな」という声が上がる。
パルムは空をぐるぐる飛びながら、続けた。
「さらにっ! イベント終了10分前にはフィールドが変化っ!
一定時間ごとにダメージを受ける環境になりますが、
ダメージを受けない“セーフティーエリア”も出現します! うまく活用してくださいねっ!」
「継続ダメージか、きっついなぁ」
「セーフティーエリアに集中すると戦いも激化するかも」 と、口々に話し出すプレイヤーたち。
「ちなみに――セーフティーエリアの外で戦うと、獲得・減少スコアがなんと3倍っ!
リスクを取るか、安全を選ぶか……あなた次第ですっ!
装備の調整やアイテムの購入時間として、準備期間は60分!
その後、全プレイヤーをランダム配置でイベント専用フィールドに転送します!
いきなりの遭遇戦は起きにくいのでご安心をっ!」
ざわざわと、プレイヤーたちの間に緊張と期待の空気が広がる。
パルムは最後にきらめく光の粒子を撒き散らしながら空に消える。
「それじゃあ――準備ができたら、思いっきり楽しんでねっ!
ではでは、転送まであと60分っ!」
パルムが光の粒となって消えると、ステラは再び手元の杖を見つめた。
静かな目で、ほんの少しだけ笑う。
「……守るだけでも、きっと意味はあるよね」
彼女はまだ知らない。
“守る”という行動が、この戦場でどれほどの脅威になるのかを――。
バトルロワイヤルはよくあるルールですね。
次は12/16に投稿予定です。




