第013話 極振りヒーラー、イベントに向けての準備1
VRゲームで月間ランキングに入ってて変な笑いがでたw
まさか入るとは思わなかったので、素直にうれしいです。
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ログイン音と共に、ステラは画面の中に自分のアバター《ステラ》を浮かび上がらせた。
今日も広場の噴水はきらきらと光を反射している。
「ふわぁ……今日も平和……かな?」
ふと、ログイン直後に画面の端に大きく表示された告知が目に飛び込んできた。
『アルカディア・カップ開催!』
バトルロワイヤル形式の対人戦!
倒した人数と死亡回数で順位を決定!
上位10位のプレイヤーには記念品となる限定アイテムを配布!
「……えぇぇっ!? え、えっと……」
ステラの心臓が一瞬ドキリと跳ねた。
対人戦……死んだらログアウト画面に「死亡しました」と出る恐怖体験。
考えるだけで足がすくむ。
「でも……でも……記念品……欲しい……!」
脳内の恐怖心と欲望がせめぎ合う。
だが、やっぱりステラの好奇心と物欲は勝った。
「うん、やる……! 安全第一だけど、挑戦してみる……!」
画面を切り替えて、広場の隅をふと見回す。
小さな建物に“スキルショップ”の看板がかかっているのを発見した。
「えっ、スキル……買えるの?」
中に入ると、NPCの店員がニコリと笑って言った。
「ようこそ! 基本スキルから特殊スキルまで、各種販売中です」
「へぇ……基本スキルも売ってる場合があるんだ……」
ステラの目が輝く。
自分のスキルだけじゃ、バトルロワイヤルでの生存は不安だ。
とくに状態異常になって動けなくなったら……想像するだけでゾッとする。
「……これだ!」
棚に並ぶスキルの中から、《状態異常回復スキル:クリーンセンス》の説明をタップする。
《効果:毒・麻痺・鈍足などの状態異常を解除する》
《価格:6,000ゴルド》
「ろ、ろくせん……!? た、高いっ……!」
思わず後ずさるステラ。
ゲームを始めてまだ数日、基本的にはお金がまったく貯まっていない。
ポーション代と修理費でいつもカツカツだ。
「でも……この前の“生命喰らい”討伐報酬があったから……今なら……!」
メニューを開くと、残高は【6,843ゴルド】。
ギリギリ。まさに、ギリギリだ。
「……買えちゃう……けど、買ったらスッカラカンだぁ~」
それでもステラは、スキル説明欄にある「麻痺・毒・睡眠を解除可能」の文字をじっと見つめた。
もし、戦闘中に動けなくなったら――相手に囲まれて、何もできずに倒される。
その想像だけで、背筋がぞくりとする。
「……うん。死ぬの、イヤだもん。買おっ!」
決意して購入ボタンを押す。
チャリン、と小さな音が鳴り、財布の中身が一瞬で消えた。
「……買えた。けど、ほんとにスッカラカンになっちゃった……!」
画面の残高は【843ゴルド】。
パンすら買えない金額だ。
「次の狩りで、ちゃんと取り返さないと……!」
杖を握りしめ、ステラは気合いを入れ直した。
恐怖を少しでも減らすための準備。
それは、彼女にとって“安心への投資”だった。
「よし、次はレベル上げ……!」
ステラは町の外、草原地帯へ向かう。
モンスターの姿がちらほら見え、風に揺れる草が金色に光っている。
「ここで……しっかり鍛えないと、バトルロワイヤルで勝てないもんね……!」
杖を握り直し、ゆっくり歩を進めるステラ。
その背中には、少しずつだが“挑戦する勇気”の光が差し込んでいた。
街の外れを抜けて、ステラは北の森に足を踏み入れた。
――花咲きの草原より少し強いモンスターが出る狩場だ。
「うーん、ここなら経験値もお金もよさそう! よし、今日の修行はここに決定!」
杖を軽く掲げ、周囲を見渡す。
すぐに、遠くの木の影から、トカゲ型モンスター《リザードファング》が姿を現した。
尻尾を打ち鳴らし、低く唸っている。
「こわ……でも、だいじょうぶ。まずは防御、っと!」
ステラは胸の前に杖を構えた。
「ヒール唱えて……リストア・ヴェール展開!」
淡い光が彼女を包み、《リストア・ヴェール》が発動する。
回復の“超過分”がバリアとなり、薄い蒼色の膜が全身を覆った。
生命喰らいとの戦いで習得した《リフレクト・ヴェール》も同時に発動し、バリアをわずかに蒼く脈打たせる。
「……反射って、どれくらい効くんだろ……」
リザードファングが鋭い牙をむき出しにして突進してくる。
ドンッ!――と鈍い衝突音が響き、牙はバリアに弾かれた。
その瞬間、バリアが受けた衝撃のカウンターとして、光の粒子がリザードファングの全身を貫いた。
ステラの攻撃力ではありえない数字がログに浮かぶ。
リザードファングは「キャン!」と甲高い鳴き声を上げ、ビクリと震えて後ずさった。
ステラは目を丸くした。
「えっ、ちょ……勝手にHP減ってる!?」
バリアが受けた衝撃を反射する、《リフレクト・ヴェール》の効果だ。
じわじわとダメージを返しつつも、リザードファングは怒りを増したかのように再び突っ込んでくる。
「わわ……あの、ちょっと……! そんなに突っ込んできたら危な――」
言い終える前に、リザードファングが、再びバリアに突撃した反動で、力尽きたようにパタリと倒れた。
ステラのバリアは、まだほとんど削れていない。
「……え、終わり? あれ、わたし何もしてないよね?」
ぽかんとした表情のまま、しばらく敵を見下ろすステラ。
彼女の頭の中には、ただ一つの確信が生まれていた。
「……これ、すごく安全……!」
バリアを張って、敵に殴られ、勝手に倒れる――
そんな魔法少女じみた無敵戦法が、今、ここに誕生していた。
それからステラは、森のあちこちで様々なモンスターと遭遇した。
《ストーンラビット》《スライム・マロウ》《ミニゴーレム》――どの相手も、
ステラを一目見るなり狙いを定め、突撃しては反射ダメージで勝手に倒れていく。
「えへへ、ステラ最強かも。……でも、なんかヒーラーっぽくない気もするなぁ?」
そんな独り言を言っていた、そのとき。
ピコンッ!
《新スキルを習得しました:挑発》
「……え?」
ステラは思わずステータスウィンドウを二度見した。
そしてスキル説明をタップする。
【挑発】
習得条件:一定時間、敵の攻撃を受け続け、死亡せずに勝利する
効果:周囲の敵対モンスターの注意を引きつけ、攻撃対象を自分に固定する。
「ええええええ!? これ、完全に前衛のスキルじゃん!!」
ステラは頭を抱えた。
《リフレクト・ヴェール》によるカウンターで、物理的な攻撃をほとんどせずに敵を倒し続けた結果、
システム側はステラを「攻撃を受け続け、ヘイトを稼ぐ、強靭な盾役」だと誤認したのだろう。
「違うの! ヒーラーなの! ただ死にたくなくて防御してただけなの!!」
慌てて否定するステラ。
だが、新スキル一覧には、しっかりと《挑発》が追加されていた。
「……まあ、使える分には……い、いいのかな?」
ちょっと複雑な笑みを浮かべながら、ステラは新スキル欄を閉じた。
そして空を見上げ、小さく呟く。
「でも……どんな形でも、強くなれるのはうれしいかも。」
彼女の杖が風に揺れ、バリアの光がきらめく。
その姿は、まるで“守りながら戦う希望のヒーラー”のようだった。
──そんな彼女が次に思いついたのは、もちろん、新スキルの試運転である。
ヒーラーなのに挑発を覚えて戸惑うステラちゃんでした。
次は12/11に投稿予定です。




