第1話『転生をキャンセルしてもいいですか?』
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――小須賀野翔渡は状況を理解できず、状況整理をする。
俺は高校生で16歳。
彼女いない歴=人生の俺は、幼少期からモテた記憶がないぐらい普通オブ普通。
顔だけに取り柄がないわけではなく、運動能力や楽手能力も秀でた時代があった記憶がない。
唯一誇れることがあるとすれば、健康な体と体力ぐらいだろう。
身長が175cmに毎日登下校で鍛えられた体力は、足腰を中心に秀でていると自負している。
と、俺は俺自身のことを思い出せた。
そして、思い出せるだけの思考を巡られるということは、少なくとも生命を維持できているということ。
「……」
であれば、俺が目を覚ます場所は3択なはず。
1、コンクリートの地面を背に屋外。
2、見慣れない天井が視界いっぱいに広がる病院。
3、全てが夢であったかと安堵できる自宅のベッド。
しかしいったい何がどうして、感触を踏み締めることのできない雲みたいなものが足元を漂う場所に居るのだろうか。
視界を上げても、地平線の彼方……もはや地平線なのかすらわからない、このような景色がどこまでも続いている。
辛うじて陽の光は届いているのだろう、どこにも影ができていない。
光源となっている太陽そのものを発見できない、という途轍もない違和感を抱えたまま、何度も何度も辺りを見渡す。
「どこだよここ」
「――落ち着きましたか」
「!?」
俺は、声の方へバッと振り返る。
すると何度も確認したはずの背後に、1人の女性が立っていた。
「残酷ではありますが単刀直入に申し上げます。翔渡様は、つい先ほど命を落としました」
「……はい?」
な、何を言っているんだ、この――白いワンピースとチャイナドレスを掛け合わせたようコスプレをしている人は。
初心な俺が一目見た瞬間に見惚れてしまうほどの美人だからって、あまりにも悪い冗談だ。
「混乱されるのも仕方ありません。翔渡様は、その身を賭して1人の少女を猛進するトラックから護ったのです」
「まさかそんなことが……あるわけ……」
「思い出していただけたようですね。記憶にある光景は夢ではなく現実です」
「じゃあここは天国ということですか?」
どこで見たか忘れたが、その光景から天国があるのならこういう場所なんだろう――と、妄想していたほぼ何もない空間。
だから意識が覚醒したときに、焦ることなく冷静で居ることができたんだ。
じゃあ目の前にいるのは、神様といったところか。
俺の黒短髪とは似ても似つかない黄金の長髪だし、神々しい感じがするし。
「俺、なんの目標もなく何も成し遂げられなかったですけど。最後に善行を積んだから、天国に来ることができたということですか?」
「はい。翔渡様の雄姿は確かに目を見張るものでした。知り合いならまだしも、赤の他人に対しての行動ですから。当然、称賛されることです」
「称賛される未来は来なかったようですけど」
たしかに、トラックに轢かれて生きている方が珍しい。
もしもこれが夢の世界、もしくは昏睡状態で見ている夢だったとしても意識が覚醒していなければ全て同じだ。
「それで、です。翔渡様にはこれから異世界で新しい人生を歩む権利をお渡し致します」
「異世界……?」
「はい。もちろん、ご所望のスキルをプレゼントさせていただきます。若干16歳、まだまだやりたかったこともあると思いますので、存分に異世界を謳歌してください」
「……」
あまり詳しくはないが、友達と話をしているときにいろいろと聞いたことがある。
みんな楽しそうに話をしていたし、「もしも転生してスキルを貰えるのなら」という話題で盛り上がっていたのを憶えている。
まあ、俺は8割ぐらい何を言っているのかわからなかったが。
「スキルの方はどうされますか? お時間はたっぷりあるので、考えていただいても大丈夫です」
「……」
異世界、転生、スキル。
配慮してもらっている通り、この流れが事実なのであれば、俺はたったの16歳で人生を終了したことになる。
夢や目標、やりたいことやってみたいこと……とかがあったわけではない。
だから、生きていた世界とは異なる世界に行くわけだから魅力事態はある。
でも、全く知らない世界で1からやりたいことを探す? 文明がどれほどのものかもわからないのに?
みんなが話をしていた通り、剣と魔法の世界は楽しそうだった。
「記憶は消えるんですか?」
「そのようにすることも可能ですが、持ち越すことも可能です」
「なるほど」
じゃあ、答えは決まりか。
「キャンセルで」
「では、早速。スキル【キャンセル】を付与致しました」
「あ、いや違うんです」
「え?」
「異世界転生をキャンセルさせてもらえないかという話なのですが」
「え? え……なるほど。こちらが説明不足と確認不足だったのは謝罪します。ごめんなさい。転生をキャンセルして元の世界へ戻すことはできません」
「そう……なのですね。でしたら、別の現実世界に転生することができたりはしませんか?」
「と言いますと?」
「元の世界ではない世界なら大丈夫、という前提で話をさせていただくと、別の地球なら問題ないかと思いまして」
「なるほど……」
女神様は驚きを隠すように口元を手で隠している。
それに加え、美形な顔の眉間に皺を寄せ。
俺は今、物凄くハチャメチャな要望を出しているのかもしれない。
でも、全く知らない世界で生活するのなら、住んでいたそのままの文明で新しい人生を送りたいと思うことは欲張りじゃないはずだ。
記憶をリセットする選択肢もあるんだろうけど……そこまでやってしまったのなら、俺は本当の意味で死んでしまう。
「……このような展開は初めてで混乱してしまいましたが、可能ではあります」
「よかった。では、そのようにお願いします」
「ですが、転生特典についても再考しなければなりません」
「こちらの要望を通してもらうんです、これ以上のわがままは言いません」
「いえ、翔渡様に対してというより世界についてです」
「え?」
「一度付与してしまったスキルは変更ができなく、このままスキルを所有したまま住んでいた世界同様の場所へ行くと不都合がありまして」
「あー、それはそうですよね。スピリチュアル的な話ではなく、文字通り異次元的な存在になっちゃいますから」
「そうなのです。ですので、ほとんど……文明はそのままに地球の住人にもスキルが使えるようにしておきます」
今、会話の途中で妙な間があったような気が?
まあでも、その通りに女神様の力が作用するのなら末恐ろしいとかの領域をはみ出している。
「加えて、転生特典に含まれている容姿の変更なのですが……転生先の変更に伴い、できなくなってしまいました」
「全然大丈夫ですよ。別に、イケメンになってモテモテになりたいって願望がない……といえば噓になりますが」
喉から手が出るほど欲しいけど、まあ……普通が1番よ普通が。
だって、変にモテたとしても恋愛経験があるわけじゃないから間違いなくテンパる。
それにイケメンを遠目に見ていた感想としては、いろいろと面倒そうだし大変そうだったし。
「ですので、転生と言うより転移みたいになってしまいますが」
「もう一度やり直せる機会をいただけるんです。それ以上を望む方が恩知らずと言うものですよ」
「そう言っていただけると助かります。それでは――」
「あ、ちょっといいですか。スキルについて、そしてどんな感じに送られるのかだけ教えてもらえませんか」
「そうですね、スキル【キャンセル】――お教えしたいところではなるのですが、初めて聞いたもので説明ができません。言葉の意味をそのままにキャンセルできるとは思います」
「使って慣れるしかないってわけですね」
俺だって初見なわけだし、たぶん転生者として選ばれる人間は他の有用なスキルを選択するのだろう。
逆に困らせるようなスキル選択をしてしまってごめんなさい。
「転生先の場所についてですが、ほとんど元々の地球と同じです。ただ、スキルを使用できる人が居たり、そんな能力保持者や学生が生活するために建設された島へ送ります」
「ほう? 人工島的な?」
「はい。あとは、ご親族は居ない設定です。残念ではありますが、あちらの世界では血縁関係が居ないイレギュラーな存在になってしまいます」
「……わかりました。まあ、なんとかなるでしょう」
……。
文明や景色はそのままに、誰1人として知らない場所で生活することは正直に言ったら不安だ。
まだ言語が一緒という救いはあるものの、寂しい気持ちが拭えるわけじゃない。
でも、一度は命を落とした人生――もう後戻りはできないんだ。
「他にも質問はりますか?」
「大……丈夫です」
「それでは、翔渡様。第2の人生、意志の赴くまま思う存分に謳歌してください」
「いろいろとありがとうございました」
俺は女神へ深々と頭を下げる。
目線を上げると既に視界は光に包まれ始めていて、女神は微笑みながら手を振ってくれていた。
不安で不安で仕方がないけど、せっかくのチャンスを活かして第2の人生を歩んでいこう。
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