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感情という錘  作者: 隆頭
第四章 胸の痛み

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八十六話 ガチガチ会長

 最近あまり元気のない美白(みしろ)さんが気になって、彼女に連絡をとったある日の放課後。先ほど生徒会室を訪れた俺たちは、彼女の招きによって部屋に入った。


 生徒会室に足を踏み入れると、そこには綾坂(あやさか)もいた。生徒会長なので当然である。美白さんは副会長だったっけ。


「お疲れ様です」


「あっあぁ、お疲れ様。寺川くん」


 綾坂はとても気まずそうに、頭を下げて挨拶をした。勘違いで俺にブチギレたことを気にしているのだろう。

 こっちだって忘れていないので、一生反省しててほしい。胸ぐらを掴まれて脅迫されたのだ、簡単に許しはしない。


「さてさてぇ、とりあえず二人とも座っててね♪」


 美白(みしろ)さんに背中を押され、用意されていた椅子に腰を下ろす。彼女はそれからすぐに持ち場に戻って、書類とにらめっこを始めた。




 時間が経つこと十二、三分、やることを終えたらしい美白さんが、荷物を手に俺たちの元にやってきた。


「お待たせ。帰ろっか」


 美白さんに差し出された手を握って立ち上がり、楓も俺たちに合わせて立ち上がる。


「おっお疲れ様、寺川くん……」


「お疲れ様です」


 綾坂が気まずそうな目でこちらを見て、力のない声で挨拶をしてくる。自分の行いを反省していることはよく分かった。

 だけど、それを見たところでざまあみろとは、とても思うことはできなかった。



 学校から出て三人で下校。なぜかずっと美白さんまで俺の手を握ったままであるが、離してくれとは言いづらかった。なんとなくダメな気がした。


「お姉ちゃん、いつまで雫くんの手を握ってるの?」


「えっ」


 言いづらいからと手を握られたままの俺だったが、それを見かねた楓が美白さんに尋ねる。突然と問いかけに美白さんは、ギクリと身体を跳ねさせた。


「そろそろ離れても良いんじゃないかなーって、思うんだけど?」


「あっ、あはは!そうだね、ごめんね雫くん」


「いえ、大丈夫です」


 楓からジロリと睨まれ、気まずそうにサッと手を離す美白さんが謝る。そこまで気にしてはいないので、それ以上は触れないようにしておいた。


 そして、美白さんが誤魔化すように口を開いた。


「そういえば綾坂(あや)ちゃん、だいぶ気にしていたみたいだね。いつもよりガチガチだったもん」


「そういえばそうだね。雫くんのこと好きなのかな」


「なわけ……ってそういえば、楓は知らなかったっけ」


 普段見せない綾坂の様子に違和感を持った楓が、こう言っちゃ悪いがアホなことを口にした。

 そして思い出したのは、綾坂が過去に俺にやったことだ。勘違いから俺の胸ぐらを掴み、脅迫をしてきたときのこと。


 そのことを思い出しながら、楓にそのことを話すと、彼女は怒りを露にしながらギュッと繋いでいる手に力を入れた。


「そんなことがあったんだ。それなら、あの反応も納得だね。ほんの少しでも反省はしてるんだ」


「みたいだな。まぁ、俺もとしては許す気はないけど」


「当然だよね。それだけのことしたんなら、どうしてのうのと生徒会長やってるのかは疑問だけどね。辞任だよ辞任」


 プンスカと怒ってくれている楓がそう言った。その言い分はもっともだが、俺としてはその役目を妥協せずにやって欲しいという思いもある。

 ぶっちゃけどっちでも良いのだ。綾坂には自分の過ちをしっかり引き摺って、深い深い反省をしてくれたら文句はない。


 もし同じことを繰り返していたらならば、とっとと消えて欲しいとは思うだろうが。


「でも、雫くんはよく許したね。普通なら起きた出来事をそのまま先生に言えば良いと思うけど」


「別に許した訳じゃないですよ。絶対に許さないし忘れもしません。ただ、あの人が引き摺って反省しているのなら、こっちからはなにもしないってだけです」


「そういうことね。もし反省してなかったら?」


「だとしたら土下座してまで謝ったりしない気はしますけど、もしそうだとしたら、俺にできることはないと思います。俺が先生に言ったところで、都合よく喋るだけでしょう。一生徒と生徒会長じゃ、信用度が違いますよ」


「たしかに、その通りだね」


 俺の答えに納得してくれたのか、美白さんがそっと俺の頭を撫でた。


「もし綾坂(あや)ちゃんがそこまでクソだったとしても、アタシは雫くんのそばにいるからね」


「ありがとうございます」


 味方がいてくれるというのは、ほんとうにありがたいものだ。楓も隣で 私も!と言ってくれている。

 持つべきものは、信頼できる人たちということだ。

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