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感情という錘  作者: 隆頭
第三章 家族

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六十三話 明日から夏休み

 夏休みを目前にしているというのに、妙にゴタゴタに見舞われる今週。噂を流す犯人が綾坂にしょっぴかれたり、母さんの相手が浮気していたり、噂を流す犯人が他にいる可能性がいたりで、色々と面倒臭いものだ。

 ただ、楓と美白さんに労いの言葉をもらったのは、とても嬉しいことだったけどね。



 一応、和雪たちにお願いして、他にも怪しい人間を探してもらっているところだ。もし見つけたらまた綾坂にでも突き出そうかと思っている。

 俺に妹がいること知っているのは、同じ中学に通っていた人だけだったのだ。今では噂に使われてしまったから、他の連中にも知られてしまっているけどね。


 ただ知られてしまった理由は、あの女が噂を流したからであり、彼女は中学の時に見たことはないし、それは俺だけじゃなく和雪たちも同じである。

 つまり、俺に妹がいるということを知らない筈の人物が、そのことを知っていたのだ。従って、それを悪意ある形で教えた奴がいるということになる。

 まったく、面倒なことになりそうだな。



 とはいえ、これ以上ことは動かなかったみたいで、ついに夏休みを控えた最後の日がやってきた。式が終わったら夏休みの課題が配布され、後は教員の話を聞いて終わりである。

 半日で終わるため、昼は家で食べようと思う。



 ボケッと話を聞き流していれば、あっという間にHRを終えて皆が荷物を持って思い思いに行動し始めた。

 すぐに帰る人や集まって友人と話したりなど、グループに分かれつつ、それぞれなにやらやっている。ちなみに俺は楓と一緒にこの後はご飯食べるよ。もちろん、俺の家でね。


 そんなこともあり、和雪と挨拶した後は教室から出て学校を後にする。途中で買い物をして、そのまま家に向かう。

 家に上がり、すぐに昼食の用意に取り掛かった。




 気が付けば、時刻は既に夕方となっていた。

 昼食を終えた俺たちは、片付けを済ませるや否やすぐに身体を重ねた。汗をかいても気にすることなく、むしろ行為によって更に汗だくになりながら、幸せなひとときを過ごした。

 エアコンの冷風が汗で濡れた身体を冷やすので、一旦シャワーを浴びてさっぱりした。



 それはそうと、昼食の時に夏休みの予定考えていたのは良いものの、結局なにも纏まらぬままに行為に及んでしまった。

 なにせ、夏休みの間には父さんの方に籍を入れたいのだが、父さんも仕事の合間を縫って事を進めてくれている。


 こちらでも色々と調べてみたが、俺から申請をしなければならないのだとか。それなら、父さんと一緒にやりたいし、母さんにもその話をしなきゃいけない。気は進まないが、瑞稀にもだ。

 それに加えてバイトもあるし、苗字が変わったら店長にも話をしなきゃならない。細々(こまごま)とした用事が重なって、予定を合わせるにも一苦労である。楓にも予定があるからね。


「また余裕があったら、どこか遊びに行こうね」


「そうだな。早いとこ用事を終わらせて、また連絡するよ」


 楓を家まで送り、別れ際にそんなことを話す。俺の言葉に彼女は頷いて、じゃあねと唇を重ねた。

 唇を離し、手を振りあってから俺は帰路に着いた。


 ちなみに、俺と瑞稀の間にある溝については楓も知ることになったわけだが、それについては責めないでやって欲しいと言ってある。

 俺たちの問題に、楓まで巻き込みたくないんだ。彼女が悪印象を持たれるのは、気分が悪いからね。



 そんな帰り道、スマホに着信が入った。見てみるとそこには和雪の名前があり、ちょうど良いタイミングだからと、その電話に出てスマホを耳に当てた。


「もしもし」


『もしもし、悪いなこんな時間に』


「大丈夫だよ。んで、どうした?」


『あぁ、それがな──』


 和雪から語られたのは、例の噂についての事だった。目星が着いたらしい。この間告白してくれた女の子とは別に、他のクラスに一人だけ、同じ中学の人物がいたらしい。

 その名前は、聞き覚えのあるものだった。


 彼女は中学三年の時に、俺に告白してきた女の子だった。今と比べてあの時はそれなりに仲の良い連中もいたが、思い返すと彼女とはそれきりだったことを思い出す。

 加えて同じ高校にいたことも、今さらになって思い出した。進学当初の俺は、随分と余裕がなかったからな……


 噂に関係しているかは分からないが、警戒しておくに越したことはないだろう。

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