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感情という錘  作者: 隆頭
第三章 家族

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五十九話 山積み

 浮気男は何年経っても浮気男のままだった。それを思い知った俺は、バイト中に見たあの男について瑞稀に話、翌日に母さんとしっかり話をすることにした。

 そもそも、先日に散々考えろと言ったというのに、未だに盲目的にあの男と付き合っていることには驚いた。やっぱり何にも学んじゃいないな。

 このままでは瑞稀もあの男に手を出されるかもしれない。それは良くないし、できるだけさっさと別れて欲しいところだ。



 ふと思ったが、ここまで来てもどうして俺は、母さんが引き返せる道を作っているんだろう。

 離婚してからというもの、俺はずっと母さんに放置され続けてきた。俺たちの食事代とか、学校に必要なお金だけ置いて、重要なことには一切顔を出さなかった。


 そして瑞稀が中学になってからは、そちらにばかり顔を出して、そちらにべったりになって、なにも変わることはなかった。

 だから俺は一人暮らしをしようと決断したわけだが、あの時散々そのことを嫌がった割には、本当に何にも変わっていなかった。

 俺のことだけでなく、瑞稀のことでさえロクに考えられず、クソみたいな男に身を委ねている。あれだけ俺が考え直した方が良いと言ったにも関わらずだ。



 ここで俺が説得したとして、どうせ母さんはこちらを見ちゃいない。離れないで欲しいだの、傍にいて欲しいだのいいながら、自分から改善しようと何一つ努力しちゃいない。

 それなら、父さんの方がずっと頼りになる。


 だというのに、未だに母さんにチャンスを与えているのは、なんだかんだ家族ということをどこかで大切にしているのかもしれない。確かに、母さんは信用に値しないが、かといって苦しんで欲しいわけでも、いなくなって欲しいわけでもないからな。


 本当は、ずっと寂しかったんだ。俺だって瑞稀と同じくらい、家族でいて欲しかった。

 だけど、その気持ちとは裏腹に距離は空いていくばかりで、認識されているのかさえ不安になっていく。募っていくソレが、いつしかそれを当たり前のことだと錯覚させていた。

 俺からも距離を置くようになったのは、そのためだ。それはある種、心の自己防衛。

 

 もう、とっくのとうにどうにもならないところまで来てしまっていたんだ。母さんとも瑞稀とも、深い深い心の溝がそこにはあった。

 過去にたくさん流した涙が、少しずつ絆を穿ってできた。それはまるでクレバスのようなもの。



 もう家族ごっこなんて、やめにしよう。




 一晩明けて学校にやってきた。放課後を迎えたら、今日はその足で家に向かう。ちょうど良くバイトが休みなので、昨日のことを母さんに話す。

 これは瑞稀のためだ。最後にってわけじゃないが、名ばかりだとしても、妹に危害を加える輩を引き離すのは、兄としてできることだから。


 とはいえまずは、ちゃんと勉学に励まないとな。俺はまだ学生の身、やるべきことはきちんとやらねばならない。


 すっかり抜け落ちていたが、昨日はいつぞやか俺の悪い噂を流した女が、生徒会長である綾坂にしょっぴかれて職員室へと行った。

 おそらく罪を自白したであろうあの女子生徒は姿を見せていなかった。ハッキリ言ってしまえば憎たらしい存在ではあるが、かと言って暴力などの実害を受けたわけでもなく、ただ学校生活に強い不快感を抱いただけ。

 そんな被害を学校側が深刻に捉えるだろうか?謹慎処分を課すとは到底思えない。なのに彼女はどうして学校に来ていないのだろう。


 気になることはそれだけじゃない。彼女が俺の悪い噂を流したのは知っているが、どうして教えていないはずの妹というワードが出てきたんだろうか?

 今の学校に進学してから、学校内で妹の話題を出したことはないし、和雪や結々美が俺の家庭環境を言いふらすともないだろうし、そもそも俺が興味を持たれるとも思っていない。

 進学当初は家族関係の悪化に伴い、俺の精神状況も著しく悪化。そのため、周囲とは中々馴染めずにいたのだ。


 和雪たちは俺のその状態を知っていたから、ベラベラと言いふらすのも不自然なんだ。なにが言いたいかというと、俺に妹がいるということを教えた第三者がいるのだ。

 中学時代に同じ学校に通っていた人物が。


 パッと思い浮かんだのは、先日俺に告白してきた物好きな女の子。ただ、彼女は物好きであったとしても、そんな悪意じみたことをするような人じゃない。

 もしかしたら、俺が忘れているだけで他にも怪しい人物がいるということか?


 ちょっと、探りを入れてもらった方が良いかもしれないな。


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