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感情という錘  作者: 隆頭
第二章 噂

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三十五話 楓の姉

 父さんが来た翌日、今は楓と一緒に学校から家に帰っているところだ。


 ちなみに昨日、父さんから帰る前に連絡先を教えてもらったついでに、お小遣いまでもらってしまった。やんわりと断ったのだが、今まで何もしてやれなかったからと言われてしまった。

 申し訳なさそうにそんなことを言われてしまうと、流石に断れなかったので受け取ってしまった。もしもの時のために、お金の入った封筒は開けずに家に置いてある。

 鞄に入れたままにしておくにはちょっと厚みがあったので、持ち歩くのは危ないかと思ったのでね。


 話を戻し、今は楓と歩いているのだが、彼女がそういえばと話を始めた。


「良かったら今度、ウチにおいでよ。お姉ちゃんが会いたがっててさ」


「お姉さん?」


 そういえば、楓の家族について……というか、お互いの家族についてはロクに話をしてなかったな。まぁ俺の方が色々と問題のある家族と言うか家庭なので、変な気を使わせることを考えると、話しにくいというのもあるのだが。

 デリケートな問題もあるだろうし、俺から始めるのは気が引けたのだ。それは彼女も同じかもしれないが。


「うん。雫くんには話してなかったけどね、お姉ちゃんウチの学校の生徒なの。いつも生徒会の人達(メンバー)と一緒だから、あんまり学校では会えないけどね」


「そうだったんだ」


 タイミングが合わないというのなら、顔を合わせないのも納得だ。俺だって他学年の人達の事など知っていることの方が少ないし。

 しかし生徒会ねぇ……そういえば、いつぞやか俺を投げ飛ばした綾坂という人は生徒会長だったな。あの人が思い込みの激しいだけなのかもしれないが、そんな人が会長をやっているという時点で、(いささ)か不安である。

 変なこと言われないかなぁ……


「──大丈夫?もし嫌だったら無理に会わなくてもいいからね?雫くん今まで色々と苦労してたみたいだし」


「ありがとう、大丈夫だよ」


「そっか、それなら良かった♪」


 少し考え込んでいた俺のことを心配してくれた楓にそう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。彼女の姉のことは何も知らないのだ、俺の不安は杞憂かもしれない。

 だから、会う前から勝手に良くないことをイメージするのはいけないな。会わなきゃいけないってわけでもないが、疑いすぎるのも疲れてしまう。


「バイトのお休みって次はいつなの?」


「明後日だね。それからは五連勤だから、その後でもいいけど」


「あらら、大変だね……またお姉ちゃんに聞いてみるよ。もしその日がダメなら、雫くんのお家でデートだね♪」


 そう言った楓がキスをしてきた。もしこの後にバイトがなければ、このままお持ち帰りしたいくらいだ。

 付き合ってからというもの、休みの日が来る度に楓と会って俺の家で体を重ねている。仲が良いことは良いんだけど、やり過ぎな気がしないでもない。

 そうは言っても、お互い好き同士なのだから仕方ないだろう。


「それも楽しそうだね。また決まったら連絡してよ」


 俺の言葉に、楓は うん♪と嬉しそうに返事をした。彼女のお姉さんとは、いったいどんな人なのだろうか……



 そんなこんなで当日、楓のお姉さんは全然OKとの事で、楓に連れられて米倉家宅へとやってきた。二階建ての一軒家である。

 楓は家の鍵を開け、入るように促した。それに従って扉をくぐり玄関に入った。


「お邪魔します」


「いらっしゃい♪」


 俺の挨拶に楓が返す。すると、奥の方から足音が聞こえてきた。そちらを見ると、そちらから黒髪ショートカットの女性がやってきた。


「おかえり楓。その子が彼氏くん?」


「ただいま、そうだよ。会いたがって雫くん、優しくしてあげてね」


 楓の答えに彼女は ふーんとこちらを見た。口角が上がっており、なんとなく品定めされているような気持ちになるが、咄嗟に頭を下げて挨拶した。


「はじめまして、楓さんとお付き合いさせていただいてる寺川 雫です」


「丁寧にどうも。アタシは楓の姉の、美白(みしろ)っていうから、よろしくね雫くん」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「ささっ、お客さん立たせるのもアレだし上がって。緊張するかもだけど、今日はゆっくりしてってよ。父さんも母さんも仕事で、家には私たちだけだからさ」


 美白さんはそう言って、奥を手で指した。靴を脱いで家に上がり、楓に手を握られながら彼女に着いていく。

 楓がいるのなら、そこまで心配することもないだろう。


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