表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/12

愛の力、覚醒!

「さくら様は、ここで終わりですわ」


冷たい声とともに、大地が裂けるような轟音が響いた。空を割るように飛来したのは、黒い翼をもつ女――魔王軍幹部の一人、〈血の魔公女・リリステラ〉だった。


「みんな、下がって!」


レオンの号令とともに、七星騎士団がさくらを囲むように前に出る。


「さくら様は渡さない。何があっても、守ると決めたんだ」


剣を構えるレオン。その背中は、何度見ても大きくて、温かい。


「ふふふ……甘いですわ。その守りたいという感情こそが、彼女の魔力を引き出す。すなわち――我が主の封印を解く鍵!」


リリステラが魔杖を振ると、無数の黒い刃が空中に現れる。


「来るぞッ!」


「全員、陣形通りに動け!」


ユリウスとカイルの怒号。だが、次の瞬間、黒い刃が一斉に降り注いだ。


――ズガァァァン!!!


「っ……レオン!?」


最前列にいたレオンが、吹き飛ばされた。地に伏した彼の身体から血が滲んでいる。


「さくら、逃げ――ぐっ……!」


さらに追撃を受けたレオンを見て、胸の奥が燃えるように熱くなった。


「やめて!やめてぇぇぇ!!」


その瞬間、眩い光がさくらの体から溢れた。


「こ、これは……!」


騎士たちが見守る中、彼女の背後に純白の光が渦を巻き、やがて光の剣――愛の聖剣がその手に現れる。


「……これは……私が……?」


剣を握る手が震えている。でも、不思議と怖くない。


「お前たちが、くれた想いが……力になってる」


セスが、ニッと笑う。


「行け、さくら。俺たちは、信じてるから」


「絶対、帰ってこいよ!」


ディランの言葉に背中を押され、さくらは前に進んだ。


====


「へぇ、聖剣ですって? 面白い……!」


リリステラが黒い槍を構える。空中で激突する二人の魔力が、空気を震わせる。


「みんなの気持ち、返してあげる!」


剣を振る。光が弧を描き、黒い槍と激突。リリステラの表情が初めて歪んだ。


「なんなのよ、その力は……!」


「これが、愛の力――!」


さくらが全力で叫ぶと、剣が輝きを増し、リリステラの攻撃を打ち砕いた。


「う、嘘……ありえない……!」


爆光とともに、リリステラは、空へ吹き飛ばされていった。


戦場に静寂が戻る。


====


「……さくら!」


駆け寄るレオン。その顔には、驚きと、誇りと、少しの照れが混じっていた。


「……すごかったな、団長」


「ほんと、まさか本気で覚醒するとは!」


「やっぱ、愛の力って最強なんじゃね?」


カイルとセスがニヤニヤしながら笑う。


「でも、最後の光……あれは一体……」


ユリウスが不安げに呟く。


さくらは、静かに首を振った。


「分からない。でも――皆が好きって言ってくれたから、私は……応えたかっただけ」


「……!」


その言葉に、皆の顔が一斉に赤くなる。


「おい……今さらそんな破壊力のあるセリフを……!」


「心臓に悪いっての……!」


それでも誰も否定しなかった。ただ、さくらの帰りを迎えたことが、何より嬉しかったのだ。


「おかえり、さくら」


レオンが、そっと呟くように言った。


「……ただいま」


さくらの目に、ひとしずくの涙が浮かんだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ