団結の誓いと、強くなる決意
「私も……戦えるようになりたい」
その一言は、食堂の空気を一変させた。
朝食を囲んでいた七星騎士団の面々が、一斉にこちらを向く。パンをかじっていたカイルの口が半開きのまま固まり、ユリウスのスープを飲む手が止まる。
「……何、今のさくら?」
レオンが眉をひそめて尋ねた。
「だから……今のままじゃ、私は足手まといだし。それに、もしまた魔王軍が来たら……皆を守れないのが嫌なの」
いつか選ばされる未来が来るのなら、せめてその時、自分の意思で立ち向かいたい。そう思った。
「……ふふ。さくららしいね」
セスが、いつもの軽口ではなく、どこか誇らしげに微笑む。
「いいじゃない。だったら俺たちで鍛えてやろうぜ、団長殿!」
「お、おう! 熱血特訓コース、開幕ってやつだな!」
なぜか盛り上がるカイルとセスに苦笑しつつも、私はうれしかった。
「……その代わり、覚悟しろよ」
レオンの目が少し鋭くなる。
「口先だけで、強くなりたいって言うのは簡単だ。だけど――その道は甘くない」
「うん、それでも……やるって決めたから」
私は真っすぐ、彼の目を見て答えた。
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それからの日々は、まさに騎士団特訓ウィークだった。
「腕の力が足りないな。もっと剣を握り込め!」
レオンとの稽古は、まさにスパルタ。何度も転び、何度も叱られたけれど、そのたびに彼は手を差し伸べてくれた。
「痛かったらすぐ言ってね、団長」
カイルは怪我の手当てを担当してくれた。どこか不器用な包帯の巻き方が、逆に胸にしみる。
「魔力のコントロールは、心のバランスと似てるよ」
ユリウスの静かな指導では、瞑想を通じて自分の感情に向き合う練習をした。
「腹が減っては戦はできぬ〜。今日のメニューは、勝利のカレーだっ!」
セスは相変わらずおちゃらけながらも、私のために栄養たっぷりの料理を用意してくれる。
「今日はこの草を煎じて飲むと集中力が増すらしい」
ディランは、静かに薬草の知識を教えてくれた。地味だけど、それが一番ありがたかったりする。
そんな中、ゼノ元団長の言葉がふとよぎる。
『力は、心に応える。だから、揺れない心を持て』
揺れない心……私は、手に入れられているのだろうか。
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夜、訓練場で一人、呼吸を整える。
『感じるの、魔力を。私の中にある何かを――』
目を閉じて集中する。風の音が止み、周囲の気配が静まる。
そして。
――ぽ、と。
掌に、やわらかな光が灯った。
「……やった……!」
小さな火種みたいな光。それでも、それは私の意志で生まれた、初めての魔法だった。
「やったじゃねぇか、さくら!」
振り返ると、レオンが微笑んでいた。訓練を見守っていたらしい。他のメンバーも次々に顔を出す。
「わぁ〜! マジで出たの!?」
「やっぱ団長はやるときゃやるね!」
「さすが、我らが聖女様だ」
みんなが、まるで自分のことのように喜んでくれる。
「皆がいたから、私……ここまで来られた」
私の一言に、ユリウスがそっと囁く。
「違うよ。君が、頑張ったからさ」
「……ありがとう」
笑い合いながら、皆で円を組むように立った。
レオンが剣を地に突き立て、静かに言う。
「改めて、俺たちは一つだ。聖女として、団長として――俺たちはお前を信じる。そして、共に戦う」
「さくら、俺たち七星騎士団は、団長であるお前を信じて、命を懸ける!」
「うん……! 私も、皆を信じて、絶対にあきらめない!」
こうして、私たちはそれぞれの想いを胸に、ひとつの誓いを立てた。
『どんな敵が現れても、必ず乗り越える』
そして、守るべきものを守るために――
明日からまた新しい戦いが始まる。
でも今は、少しだけこの絆に、甘えてもいい気がした。