第1章・AD2038 第三次世界大戦後の世界
この作品はアルファポリス電網浮遊都市で長期連載中の『第一次世界大戦はウィルスが終わらせた・
しかし第三次世界大戦はウィルスを終わらせる為に始められた・bai/AI』のスピンオフ作品です
人類の半数を失い世界中を焦土と化した第三次世界大戦が終結してから終結してから1年が過ぎた
AD2038
フランス軍将校ジャンヌダルク少佐は3人の部下と共に輸送機に乗り
スイスとフランスの国境に設立されたセルンへ向かっていた
≪少佐我々は何の任務でセルンに向かっているのですか?≫
部下のシン・小林少尉がジャンヌに聞く
『わからん命令書には急ぎ我々4人でセルンのブラウン博士の元に向かえとしか書いていなかった』
≪そうですか・・・
みんなは何だと思いますか?≫
シン・小林少尉両親がフランスに移民本人は少年時代を日本で育った日本男児階級は少尉
シン少尉の問いかけに
ファラ少尉は
【私にもわかりませんが今回の任務は何か運命的なものを感じます】
ファラ少尉両親が中東からの移民2世の女性
褐色の肌と青い瞳を持つ女性士官階級は少尉
『フアラァ少尉の直感のお陰で核ミサイルの攻撃を回避できた事もある
今回も聞く価値は有ると思う
その直感では我々はその運命から逃れることは出来るのか?』
ジャンヌの問いにファラア少尉は
【命令書を受け取った時に運命は決まっています
しかし少なくてもそれは破滅を意味していません
むしろ唯一の希望と言えます】
<う~ん・・・
ファラア少尉の直感は確かに当たるが
もう少し判断可能で具体的な情報をお願いしたい>
ファラア少尉はバロン中尉の目をまっすぐ見て
【核ミサイル以上の運命が待ち受けています】
チーム随一のナンパ男フランス人のバロン中尉
隊のまとめ役としてジャンヌも一目置いている
『いや十分だ
ろくでもない運命が待ち受けている事は分かった
また君に助けられたよ』
【いえ・・・
少佐のお役に立てて光栄です】
はにかみながら少女の様に答えるファラア少尉
<それではこのバロンが素敵な女性とセルンで運命的に出会えるか占ってくれ>
ファラア少尉はふて腐れぎみに
【少なくとも中尉がセルンで情勢とお知り合いに馴れないことは分かります】
<え~>
がっくりとしたバロンを皆で笑う
ポーンと機内アナウンスが流れる
(現在ウクライナ上空)と
窓からみるウクライナの大地は黄色いひまわり畑が地平線の彼方まで続く
≪畑ばかり続いて街は見えませんね≫
小林少尉の問いにジャンヌは
『この延々と続くひまわり畑の下に何十万人の兵士達と街の住民が眠っている
ここは2024年の第一次ウクライナ大戦でのロシアを撤退に追い込んだ決戦場で在り
2031年のロシア中国連合軍による再軍事侵攻時に避難船に多くの国民を逃がす為に
前大統領が指揮する軍が全滅した地であり
2037年にウクライナに上陸したウクライナ亡命軍が連合軍の先頭に立ち
ロシア・中国連合軍を破りウクライナ亡命軍が祖国を解放した地でもある
同時に戦闘で住民がを巻き込んだ戦場の跡だ
私は2020の第一次クリミア戦争まで此処に生まれ育った
私は当時たった一人の肉親である兄に育てられたが
ロシア軍の侵攻の日に兄を失い祖母方の親類がいるフランスに亡命した』
≪少佐は戦後祖国には戻られた事は有るのですか?≫
『私の故郷は第一次クリミア戦争最大の激戦地で
クリミア軍とロシア軍の半数以上が失われ
街は完全に破壊され残っていた住人は誰一人生き残れなかった
そして残されたのが地平線の彼方まで広がるひまわりが咲く大地だ
もう私の帰る場所は何処にも無い』
ジャンヌダルク少佐クリミア出身フランス軍情報部女性士官
4人に機内食が運ばれる
水と固形食の食事に小林少尉が不満を漏らす
<もうこの食事には飽き飽きです
本国に戻ればまともな食事にありつける筈だ待ちきれない>
【私はスイーツが食べたいです】
<俺は酒だ本物のワインが飲みたい>
はしゃぐ3人にジャンヌは
『先日連絡将校と話す機会が有ったが
本国でも食料事情は最悪らしい
食料生産は耕作面積の大半が失われ
さらに化学肥料不足と干ばつにより例年の10パーセントに落ち込み
配給品は小麦・卵・肉から我々が食べている固形食に変更になったと聞いた
それさえ滞り気味だそうだ
ワインは闇市で100倍の高値だそうで
この1年程は闇市でもお目に掛れないそうだ』
<そんな~
酒がない人生など生きている価値がない>
嘆くバロン中尉
≪酒はともかく食料配給が不完全で
闇市で買うことが出来ない市民が飢えたら
暴動が発生して我々軍が鎮圧に駆り出されるのでは?≫
小林少尉の懸念に対してジャンヌ少尉は
『実を言えば我々軍人には軍から配給があるが
その家族は一般市民の配給制度で食料を得ているが
それが遅れたり中断すれば兵士達は家族のために自分の食料を分ける事になる
その様な状態で暴動が発生した時果たして兵士達は軍の命令で市民を鎮圧する処か
市民の側についてしまうのではないかと政府と軍は憂慮している』
≪それでは来年の豊作を願うしかないのですか?≫
<そんな事はない
食料は十分に有る>
バロン中尉の言葉にジャンヌ少佐は
『中尉なにか知っているのか?
この事態を解決できるだけの食料がどこに残されていると?』
バロン中尉は淡々と話始めた
<UKUSAファイブアイズに
アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド5か国に
に日本を加えたシックスアイズが
戦後の食料事情を見越して
大戦末期に占領地から莫大な量の食料を集めて本国に持ち帰る計画を実行したが
フランス・ドイツ・イタリアの猛反発で計画は中止されました>
『それは私も知っている軍による食料調達は中止されたのであれば
どこにも食料は残されてはいないのではないか?』
【大規模な食料移動が行われた場合どんなに極秘に行われても
必ず知られてしまいます中尉の思い違いでは?】
≪私も戦後日本に居る友人宅を訪れたことがありますが
配給品は滞りがちで栄養失調寸前に状態でしたし
ニュースでは栄養失調で餓死者が出ていると報道されていました≫
3人の意見にバロン中尉は
<確かにアメリカでさえ一般市民には餓死者が出ている
しかし軍人とその家族は誰一人として餓死者は出ていない
確かに軍による食料調達は中止されたが
兵士個人でのお土産として戦時中でも一時帰国する際に少しずつ
本国に持ち帰り各基地に厳重に保管され
いま兵士達とその家族へ非公式に食料が渡されています>
考え込む3人
ふとジャンヌ少尉が気がつく
『これだけの情報私は聞いたこともない
フランス情報部さえつかんでいない情報をどこから?』
<新しく国際連合に代わり設立された国際連邦政府のフランス代表
ブルボン全権大使は私の幼馴染みです
1週間前全線基地に私を訪ねてきて
1週間後に国際連邦政府の初代大統領を選ぶ前の議会で
シックスアイズの取りまとめであるアメリカ大統領に
食料隠蔽の件をぶつけるつもりだと告白されました
事前に察知されたら自分は暗殺される可能性がると
もしもの為に彼は私に証拠のコピーを渡してくれました>
≪ここで話してもいいのか?
この輸送機はアメリカ軍の輸送機だもし情報が漏れたら≫
<その心配はありません
まもなく連邦議会で彼が発言します>
『たとえその話が本当で確かな証拠が有っても
アメリカ大統領が拒否すればすべてが終わるのではないか?』
【少佐このタイミングだからこそフランス全権大使はアメリカ大統領に
シックスアイズが溜め込んだ
食料を放出させる事が出来ます
連邦政府の初代大統領の投票はこの議会の後に行われます
彼は第三次世界大戦を勝利に導いた戦勝国のトップとして
初代連邦政府大統領の地位は約束されたも同然ですが
もし隠蔽された食料の放出を拒否すれば
初代大統領への就任は無くなります】
≪これで食料問題は解決ですね≫
喜ぶ3人にジャンヌ少佐は
家族のために持ち帰った食料を奪われると知った軍人達は軍の命令にしたがうのか
もし反乱が起きたときそれを誰が鎮圧するのか
恐ろしい未来予測に彼女は震えた
バロン中尉の幼馴染みのブルボンフランス全権大使の発言が始まり
その様子は全世界に配信され
全世界の人々は希望と不安を持って見つめた
そしてその中にはこの事態を憂慮する者達がいた
(連邦政府大統領の地位を得る為に我々兵士の家族食料を取り上げ見捨てるなら
俺は許さないその時はこの手で大統領を・・・)
アメリカ大統領はフランスの思惑に乗り隠蔽していた食料の放出を認めるが事態は思わぬ方向に
セルンに到着したジャンヌ少佐達は後戻りが出来ない思いもよらぬ任務を与えられる




