第95話 一回くらい誤差の範疇ですよ、良いじゃ無いですか
「刀身も見せて下さいよ、
減る物じゃ無いでしょう、
それに何でもしてくれるって言ったじゃ無いですか」
私がどうしても真剣の刀身を見たくなりそう言うと
「減る物では無いけど、
君みたいな子供に見せる物じゃ無いんだ、
それに俺は一度も何でもやるなんて言ってない、
質問をいくらでも聞くって言ったんだ」
と私が理解をしていないと思ったのかそう言ってきた。
(勝手に曲解して質問しても答えてくれないか)
そう思いつつも私は、
「良いじゃ無いですか、
子供だからって見せてはいけない法律は無いんでしょう」
と問いかけると
「そんな法律は無いけど、
だけど、見せないよ」
そう言葉の奥に断固とした意思が垣間見える発言をしてきた。
(どうすれば、刀身を見せてくれるんだ、
良いじゃん、別に良いじゃん、減る物じゃ無いじゃん、
見せてよ、アースベルト以外に剣を持ってる人知らないんだよ、
何か、ロナルド君は剣を殆ど持ち歩かないし、
お師匠様は真剣を持ってると事を見たこと無いと思えるほどに木刀か模造刀しか持ってないんだよ)
と心の中で一気に文句を叫び
「良いじゃ無いですか、
見せてくれたら何でもしますよ」
そう嘘を言うと
「はあぁ、何度言われても見せるつもりは無いし、
それに君みたいな子供が何でもするなんて言わない方が良いぞ、
君は知らないかも知れないが世の中にはまともじゃ無い人間もいるんだ」
説得するような真剣な声で言ってきた。
(あっ、やばい、
冗談を本気で受け取っちゃったみたい、
駄目だな、モンド先生との会話と同じになってる)
そう思いつつも私は、
「すいません、ですが、
私は、それ程までに刀身を見たいのです」
と詰め寄るようにそう言うと心の距離が開くような感覚があった。
多分、私は、この人に引かれたのだろう、
何か、リアルの距離もさっきよりも離れてるし。
「お願いですよ、見せて下さいよ、
見てみたいんですよ、
私の近くの人は誰も持ち歩いていないんですよ」
私がそう全力でお願いをしながら詰め寄ると
「君の事情は不幸だと思うが、
それは俺には関係ないだろう」
そう言いながら私から離れていった。
私が詰め寄ってもそれに合わせてアースベルトは下がっていくため、
追い詰めることが出来なかった私は、
「お願いします、本当にお願いします、
見せて下さい、見せて下さいよ、
見せたからって何も変わらないでしょう」
そう言い更に歩を進めて追いかけた。
もはや、小走りくらいの速度でアースベルトを追っていると
「何をやっているのですか、
お嬢様、それと兄貴」
と私とアースベルトだろうか、
に問いかける声が聞こえてきた。
「ロナルド、お前、頼む、助けてくれ、
少し前から追われているんだ」
アースベルトはそう悲痛に近い声で救援を求めていた。
「あの、お嬢様、おやめ下さい、
走るのは危ないですので」
と外野から私にそう言ってきた。
「えぇ、良いじゃ無いですか、
アースベルトが、剣を見せてくれないのが悪いんですよ」
私がそう返すと
「どうして剣を見たいんですか」
と質問をされてしまった。
(その質問しちゃうかぁ、
そんなの私も知らんよ)
と心の中で呟いた後に
「見たいからです、特に理由はありません」
私がそう返すと
「見たいだけなら、侯爵様に言えば良いのでは」
と私が思い付かなかった方法を教えてくれた。
「あっ、確かにそれが一番簡単な方法ですね、
そういえば、お母様かお父様の場所分りましたか」
私が立ち止まって問いかけると
「それですが、知らないようでした」
と残念な事実を教えてくれた。
(そうか、やっぱり、
そうだよね、それじゃあ魔法でも使うか)
そう思いつつ私は気になった事を問いかけた。
「そういえばマリーちゃん何処に行ったんですか」
私がロナルド君しかいないことに疑問を持ちそう問いかけると
「それが、何故、そうなったのかよく分らないのですが、
他の侍女達に遊ばれていました」
と言ってきた。
(あぁ、だから、今いないのか、
何で玩具になったのかな、
ロナルド君を送ったのが問題だったかな)
そう思いつつ私は、
「早くお母様達を探したいので私が呼んできますね」
と言うと
「申し訳ありません、それと、お願いします、
僕じゃ説得できるような気がしませんので
侍女室は此処の道を真っ直ぐ進んで曲がった道を行けば看板が垂れているので分ると思います」
そう言って場所を教えてくれた。
「ありがとうございます、
ロナルド様、それじゃあ、呼んできますね」
と言って私は少しだけ速く歩いて向かっていった。
___________
「おい、ロナルド、
あれは何処の令嬢なんだ」
兄貴が僕にそう問いかけてきた。
「馬鹿なのですか、
一応、本来は貴方が護衛になるはずだったお嬢様ですよ」
僕がそう言うと
「えっ、あれがブランドー侯爵令嬢なのか、
確かにそう言われれば侯爵様にも奥様にも似ているな」
と本当に分っていなかったのかそう驚いたように言ってきた。
「兄貴、どうして剣を見せるなんて話になったんだ」
僕がそう問いかけると
「いやぁあ、よく分らん、
何か突然、俺に騎士かどうかを聞いてきたんだ、
それに答えると剣を見せてくれって頼まれたんだよ、
貴族の子女とは思えないな」
笑ったように兄貴はそう言った。
「どうして、お嬢様は剣を見たいなんて言いだしたんだ」
僕がその事が気になり問いかけると
「知らね、俺が女の気持ち分るわけ無いじゃん」
そう言ってきた。
「そうですか、
まぁ、そうですよね、僕達に分るわけ無いですよね、普通に考えれば」
僕がそう言い壁により掛かると
「それじゃあ、俺は行くわ」
と兄貴は言い手を振って道を進んで行こうとすると僕の方に戻ってきて
「そう言えば、あのお嬢様、髪の毛を染めてたりしないよな」
そう問いかけてきた。
そんな事を聞いたこと無かった僕は、
「そんな話し知らないので多分、染めてないと思いますよ」
と答えると
「そうだよな、気のせいか」
そう小さい声で呟いた。
「何か髪色で気になる事でもあったのですか」
そう問いかけると
「少しだけ、髪色が可笑しいように見えたんだ」
と返答をしてきた。
「可笑しいってどう言う事」
またそう問いかけると
「気のせいだと思うんだが、
お嬢様の髪の一部が少しだけ色が違ってたんだよ
まぁ、多分、目の錯覚だ、
だから忘れてくれ」
兄貴はそう言いながら本当に道を進んでいった。
(そう言えば兄貴はどうして此処に来たんだ)
そう思いつつも僕はお嬢様達の帰りを待った。




