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第8話 夢の中にいるキモい奴

「あぁ~頭がズキズキする」

 目が覚めた私は、頭痛からくる苦しみをそのままに零す。


 どうやら、倒れてしまったらしい。

 風邪……いや、コロナのワクチン級に頭が痛い。

「あぁー。気持ち悪い。吐きそう。寝ようかな」

 クラクラとする感覚に耐え、おでこに手をやる。


 すると、おでこに濡らした布が置いてあることに気づいた。

(誰が載せたんだ?)

 気になり、ズキズキと刺すような鈍痛を我慢し、胴体を持ち上げた。


 そして、すぐに落とした。

(あっ、これ駄目だ。頭上げると死ぬほど痛い)

 起き上がるのは諦め、辺りを見回すと私の近くにお父様がいた。寝てたけど。


お父様がやってくれたのだろうと気付くと同時に不安が湧いてきた。

この人の仕事は大丈夫なのだろうか? ……何時も忙しそうだけど。 


 お父様大丈夫かな、と心配をしていると、目が微妙に開いたような気がした。

(あっ、起きた。睡眠の邪魔もしちゃったかな)

 起き上がる彼を見つめ、申し訳なさでいっぱいになった。

「大丈夫かい、エミリー」

 彼は心配を声に滲ませ問いかけた。


(大丈夫か、大丈夫じゃないか、そう聞かれると微妙だな。頭が痛いだけだから、大丈夫になるのかな)

 色々と考えつつも、頭痛の苦しみを声に滲ませないようにして、

「大丈夫です、お父様」と言い切ることにした。


(やっぱ、痛みへの耐性がつえーわ私)

 自画自賛をしつつも冷静に思う。

これ以上、お父様の仕事の邪魔をするのは図太い私でも申し訳がない。


「そうか、でも今日は、まだ寝ときなさい」と彼は心配そうな声と顔で言った。

「うん、分かった」と返事をしながらも思う。

 頭痛だけだから、大丈夫なのに。


けれど、寝る準備をして気付く。

地味にどうしよう。私一度起きるとすぐに寝れないタイプなんだけど。前世から。


 ちょっとした心配を抱きながらも、お父様が近くにいるので枕に頭を落とし、目を閉じた。

 そして、枕に頭を落としたことで何故か頭の痛みが増えた。

(いってぇ、痛い、いったい! 頭動かすと痛みが強くなるタイプか。この頭痛)

 知りたくなかった事実に驚いていると、徐々に思考が暗い奔流に飲まれ、私は夢の中に精神を落としていった。


 ……そして何故だか私は、目を覚ましたような感覚を覚えた。

 確かに寝た……気絶みたく意識を失ったはずなのに不思議だ。


 若干寒気を感じ、薄っすらと目を開けてみる。

 そこは現実とは決して言えない世界だった。

 世界の色が白と黒この二色で表されている。

 ブラウン管テレビみたい、というのが良いのかな?

いや、でもあれって完全に黒じゃないし……。

 

色々と考えていると、思い出したように頭痛がしだした。


「ぐぅ」

 と言う言葉にもならない声を出し、頭痛に耐えていると辺りが段々と暗くなり始めた。

 暗いと言う言葉がまるで似合わない『黒』それに染まって言っていた。

 まるで、深淵の黒色。

 まるで、全てを飲み込み壊す黒色。

 まるで、全ての者に畏怖され憎悪される黒色。

 世界はその色に染まっていった。


 不思議だ、不思議と私は、恐怖を感じることは無かった。

 呆然と黒色に染まっていく景色を見ていると黒い黒い影

 不定型で複雑な影

 不気味で不思議な影

 が私の前に現れ始めた。

(何か、気持ち悪いな)

 不快感を抱いたが、目を離せずにいるとそれは、私の形になった。


「えっ、キッモやめてよ。私の形になるなよ。気持ち悪い」

 私の形をした影に文句を言うと、それはまた形を変えた。

 私の形が崩れ蒸発し、小さい小さい生命の形を象った姿となった。

(えっ何になったか気になるって、そうか、じゃあ教えてやろう)

(陰がなったのはな『猫』だ)

 胃がキリキリとし、精神がすり減っているのを感じ、壊れないように内心ふざけていると、影が声を発した。

 正確には『声』とは言えないだろうし、しっかりと意味は分からないが、奴の『意識』と言うのか、そういったものが、なんとなく頭の中で弾けるように響いた、そんな気がしたのだ。


 やぁ、さっきぶりだね、という先ほどの声に、

「久しぶりです」

 震えを隠し、応えると影は満足したかのように、

「あはははははははは」

 大きな声で笑い始めた。


 この声は何となく分かるではなくしっかり耳から聞こえてきた。

 不気味な笑いだ、人に骨の髄から恐怖を与える笑いだ。


「気持ちの悪い笑い声を出さないでくれよ」

 前世の口調に近づけ、怒ったように話した。

 そうするとキョトンとしたような動作をした後に

「やっぱり、君は面白い、面白いよ。僕にそんな事を言ったのは君が2人目だよ」

 笑いを押さえつけるような声で言ってきた。


「皆お前には、気持ちが悪い、そう思っているだろうさ」

 ぶっきら棒に言うと、

「それを言ったのも君が2人目だよ。普通の人はね」

 区切った後に、

「やっぱ、止めた」

 何故か興味を失ったように言うのを止めた。


(どうしてだろう)

 疑問を抱きつつも、警戒の視線を向けた。

 すると影は突然このような事を言い出した。

「僕が、君に魔法を教えてあげよう」

 と。


 辺りの暗さや、ぼんやりとした黒い霧に囲まれた姿のため、分かりづらかったが、ニッコニッコな笑顔を浮かべていた。

(やっぱキモいな。こう言うのが不審者って言うのかな。初めて見たわ)

 辛辣なことを考えつつ、丁寧な言葉を考えそうとしたら、

「嫌だよ。お前みたいな、キモいのに教わりたくない」

 こう言ってしまった。

 本心が隠しきれなかった。

 まぁ、しょうが無いよね。本当にこの影とはすっごい関わりたくないし、てか関わらない方がいい気がする。


 私の言葉を聞き届けた奴は、

「どうしてだい。君に魔法を教えてあげられるのは、僕だけだよ」

 突然信じ難いことを言ってきた。


(何を言い出すんだ)

 そう思いつつも恐る恐る私は、

「どうしてですか」

 と聞いてみるのだった。

推敲未了2024/12/31

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