第70話 迷子の迷子の正直者(笑)
『タッタッタッタ』
僕の足下にはその地面を蹴る音が鳴っていた。
「おい、糞じじい、良くも、
俺の娘に扉を当てたな」
僕は、そう叫びながらその糞じじいに全力で跳び蹴りをかました。
じじいは、何ともないように避け僕の顔に
「糞ガキがお前さん変わったと思っておったが本当は何も変わってないんだな
それと、当ててしまったのは、すまないと思ってるし、しょうが無いだろうが」
と言いながら魔法で強化したのか鉄のように硬い拳を叩き込んできた。
「くっっそ」
と言いながら僕は、後ろに吹っ飛んでいった。
「っくっはっ」
壁にぶつかった瞬間に僕の口からは、
空気がでるように声が出た。
じじいは、僕の方にゆっくりと警戒するかのように歩いてきた。
(もう、反撃できないというのに馬鹿だな)
そう思いつつも睨んでいると
「お前さん、衰えたな」
となんとも言えない表情と声で言ってきた。
「そりゃあ、そうですよ、
俺は、もう戦場に出てませんし、
侯爵の仕事のせいで訓練もしてません」
そう言うと
「そうか、お前さんも変わってたんじゃな」
と悲しみを隠さない声で言ってきた。
「あんたも変わったな、
昔みたいに全てを隠せなくなってるし、
魔法の力も衰えてる」
と言うと
「そうじゃな、儂はもう、
何もする事もすることも出来ない程の歳だし立場なんだ」
こう昔なら出さないような声で言ってきた。
「それじゃあ、また何時か会おう、糞ガキ
これ以上此処にいたら儂も襲撃されかねん
それと、孫のこと任せたぞ」
と笑いながら玄関の方に歩いて行った。
「あんた、自分の孫に会わなくて良いのか」
僕がそう問いかけるとじじいは振り返り
「儂にはあの子に会う資格なんぞ存在しないから、会わないんだ」
と自嘲の声で言ってきた。
(会ってもいいともうんだがな、資格なんて気持ちさえあれば良いというのに)
こう思いつつも口に出さずに
「次会うときまでに死んでんじゃねーぞ、糞じじい」
僕がそう去っていく背中に言うと
「口が汚いですよ、
昔の口調が滲み出てますよ」
と僕のお姫様が行ってきた。
「すまない、セリー」
僕が謝ると
「もう、これからは、出さないでくださいね、
特にエミリーの前で出したら、怒りますからね」
と怖いことを言ってきた。
「ははは、ごめん、ごめん、もう出さないよ」
僕がそう言うと
「お願いよ、あなた」
と言い未だに壁にもたれている僕に近づいてきて手を差し伸べてきた。
「ありがとう、セリー」
そう言い僕が、手を取ると
「懐かしいわね、あの人が貴方の元に訪れてくるなんて」
と言ってきた。
「あぁ、最近は、珍しく2回も訪ねてきたからね」
僕がそう返すと
「そうね、本当に珍しい」
と返してきた。
___________
(あはははははは、どうしよう、どうしようどうしよう)
私とマリーちゃんは結局人を見つけることが出来ずに迷い続けていた。
(やばい、やばい、本当に何処か分からない)
そう思いつつも頭を抱えるようにしゃがみ込むと
「大丈夫ですか、お嬢様」
とマリーちゃんが心配そうに声を掛けてきた。
「大丈夫です、問題ありません」
私がそう言い平然と立ち上がると
「本当に大丈夫ですか、お嬢様」
と多分心配している声を掛けてきた。
「本当ですよ、私は、殆ど嘘をついたことはありません」
こう真実を言うと
「本当ですか、分りました」
納得したかのような声で返事してきた。
「どうしましょうか、マリーちゃん」
私がこう問いかけると
「どうしましょうね、お嬢様」
と返答をされてしまった。
結局今の所、名前を教えてくれたおじさん以外には、人を一度も見ていないのだ。
私には、当然焦りが大きくなり始めた。
(あぁぁぁぁ、どうする、どうやって人を見つければ良いんだ)
そう思いつつ私は、作戦を一つ思い付いた。
「マリーちゃん、少し目を瞑ってください」
私がそうお願いをする、
「どうしてですか」
お願いに対してその返答をしてきた。
「理由は、秘密だよ」
こう少女っぽい無邪気に言うと
「置いていかないでくださいよ、お嬢様」
と私が絶対にしないであろう事を危惧しているのかそう言ってきた。
「大丈夫ですよ、私は、嘘をつきません」
と本当の事を言うと
「本当ですか」
こう疑っているかのような声音で言われてしまった。
「本当ですよ、本当に私は、生まれてから嘘をついたことはありません」
私がこう嘘をつくと
「そうなのですか、お嬢様は、正直者ですね」
と本当に信じたのかそう言ってきた。
その言葉に私の心だろうか、
よく分らないが、何か胸に魚の小骨の様な物が突き刺さるような感覚があった。
(嘘ついてごめんなさい、
先生以外の神様お許しを)
と心の中で祈るかのように呟いた。
野郎と先生には嘘をついて良いとは思うけど、
マリーちゃんには、何故か嘘をついていけないような気がする。
「はっ、ひゃく目を瞑ってくださいよ」
私が噛みながらそう言うと
「ふっ、分りました」
微笑むかのように笑いマリーちゃんは目を閉じた。
(本当に嘘ついてごめんなさい、
先生でも良いのでどうにかお許しを)
もう一度祈るかのように呟き私は、準備を始めた。
何の準備か、
だって、あぁ、それは、まぁ、皆予想できると思うが、魔法だ。
取り敢えず、マリーちゃんにバレそうなので目を瞑らせた私は、
索敵魔法を使えば良いかな
そう思い一度も使った事も無ければ、
学んだことも無い魔法を創造し始めた。
この世界での索敵魔法も前世のラノベと同じだろう、知らないけど
そう思い私は、ラノベでよく登場する索敵魔法を思い出し始めた。
pv数7,000回超えましたありがとうございます。
1,000回行ったら閑話出そうかなと思います。




