第68話 仲直りと秘密
「あっ、あの、お嬢様」
マリーちゃんの上げた声に対して私は、
「なっ、何でしょうか」
と話しかけられると思っていなかったので驚きつつもそう言うと
「あの、すいませんでした、お嬢様」
と謝ってきた。
(何で私が謝られてるんだ)
そう思い
「どうして、マリーちゃんが謝るのですか」
と問いかけると
「それは、私がお嬢様に失礼をしてしまったからです」
こう辛気臭い顔で言ってきた。
(何かしたっけ、私がしたよな)
と思った私は、
「えと、マリーちゃん、貴方が私に失礼を働いたような記憶が無いのですが、
逆に私がマリーちゃんに失礼なことを聞いてしまったはずですけど」
こう言うと
「私は、お嬢様に気を遣わせてしまいましたし、
質問に答えることが出来ませんでしたそれに加えて、
お嬢様に秘密にしていたことがありました」
そう白状するかのように言ってきた。
(秘密ってなんやろう、聞いても良いことなのか)
そう思った私は、
「マリーちゃん、質問に答えられなかったことと気を遣わせたことは悩まなくてもいいよ、それよりも何の秘密を私に言っていたのか宜しければ教えて貰ってもいい」
と冷静に問いかけると
「はっはい、分りましたお嬢様お話しします」
声には緊張が走っている用に感じた。
「私は、お嬢様に私が貴族だと言うことを隠し、
さも平民のように振る舞っていました」
と何かを怯えるかのような声で言ってきた。
(何を怯えてるんだ、
あぁ、私か、
って、なんで私は怯えられてるんだ)
そう思いつつも
「何となく分っていましたよ、
だって、一応はこの家は侯爵家です、
それなりに地位がある人じゃ無いと働けないはずです」
と答えると
「秘密にしていてすいませんでした」
そう謝られた。
「別に構いませんよ、
私は、そんな事を機に知るほど器が小さくありません」
と返答すると
「ありがとうございます」
こう御礼を言ってきた。
「あっ、そうだ、マリーちゃんは、どうして貴族なのに此処にいるのかも教えて貰って言いですか」
私がこうと聞くと
「っそれは」
辛そうな顔で返事をされた。
(やっぱ答えてくれないか)
そう思った私は、
「マリーちゃん、何時か話してくださいよ、
私も貴方に信頼されるために頑張るから、
取り敢えず、元気に専属侍女を頑張って」
と言うと
「あっ、ありがとうございますお嬢様」
こう御礼を言ってきた。
「そう言えば、どうしてマリーちゃんは、いきなり秘密を話そうと思ったのですか」
気になった事を問いかけると
「それは、秘密です」
と元気に返事をしてきた。
(強かだな、まあ、私の指示だけど)
そう思いつつ
「その秘密も何時か教えてくださいよ」
とマリーちゃんに言うと
「はい、分りました」
こう返された。
そうして私達の間にはなんとも言えない生暖かい空気が充満していた。
(少し恥ずかしさを感じてしまうが、先程の地獄の空気感よりましだ)
私は、そう思ってマリーちゃんに笑顔を向けて
「他に話せる秘密はあるかしら」
と問いかけると
「えっ、あの、教えませんよ」
こう返答されてしまった。
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侯爵家の接客の間にて僕は、一人の老人の相手をしていた。
「お久しぶりです、ユーレン伯爵」
と僕は、その老人に挨拶をした。
「あぁ、久しぶりだ、調子はどうだ」
老人は僕にそう問いかけてきた。
「上々ですよ、それよりも、
伯爵は、何用でこの家に来たのですか」
こう気になった事を問いかけると
「いや、儂は孫が気になっただけだよ」
と何故か嘲笑するかのような声で言った。
その声は、自分を笑うかのように聞こえた。
「孫ですか、貴方がメイドさんとして斡旋してきた少女ですね」
僕がそう言うと
「あぁ、そうだよ、あのときはすまないと思っている」
と珍しくこの老人は謝罪を口にした。
「いえいえ、大丈夫です、あの子もよく働いてくれます
あっ、そう言えば、どうして貴方がお孫さんを私に斡旋してきたのですか」
こう当時は理由を教えてくれなかったことを問いかけると
「それは、現当主、あいつに消されかれないからだよ」
とまた自分を嗤うかのような声で言ってきた。
「現当主というと、
あの聡明なお二人は馬車の事故で亡くなってしまわれましたよね、
一体誰が領主になったのですか」
こう問いかけると
「マリアの兄だよ」
老人は簡素に返答し天を仰ぐように部屋の天井を見た。
「マリアの兄君というと、今は、20歳ほどですよね」
と問いかけると
「そうだ、その通りだ、あいつはまだ23歳だ、
本来は儂があいつが育つまで代理をするはずだった、
なのに、あいつは自分が領主になるためだけに儂らを屋敷に幽閉した」
こう驚きなことを言ってきてマリア嬢が此処に斡旋されて理由を察した。
「それは、法に反するのでは」
僕が問いかけると
「あぁ、本来は反する、
だが、あいつは、現伯爵で儂は元伯爵だ、
政界、貴族院にも影響力あるが、もうあいつに負けてしまった
だから、たとえ訴えようと揉み消される、
運が良くて視察隊が来る可能性はあるが、多分、彼奴らはあいつと繋がっている」
またビックリすることを言ってきた。
「繋がっているのですか」
こう問いかけるように言うと
「あぁ、繋がっている、
一度だけ定期視察隊に訴え出たが、
あいつは金を握らせてまるで儂らを痴呆のように言いおった」
と悔しそうに言ってきた。
「それは、私も干渉した方が良いでしょうか」
こう言うと
「いや、やめた方が良いだろう、
ブランドー侯爵家は武力で成り上がった家だ、
ユーレン伯爵家のような古来からある貴族家に喧嘩を売ると更に貴族どもの心象が悪くなるだろう」
と諭すかのように言ってきた。
「ははは、伯爵は面白い事を言いますね、
今の時点で最悪ですよ」
こう言うと
「そうか、すまないな」
と謝ってきた。
「いえ、貴方のせいじゃありませんよ、
それで私は、圧力を掛けた方が良いですか」
と問いかけると
「いや、やめた方が良いだろう、
今は、お前さんは守る者が増えただろう」
こう言ってきた。
「あっ、そうか、危なかった、
エミリーと嫁に迷惑を掛けるところでした」
気付いてなかった僕がそう言うと
「お前さんは昔から変わらないな、
安心するよ、それと本当にすまないな」
と懐かしむように謝ってきた。
「大丈夫ですよ、
私は、貴方を恨んでいませんので」
僕はそう返答した。
「あっ、皇帝と賢者さんには、報告しますね」
と僕は一応言っておいた。




