第48話 馬鹿な侯爵令嬢
次かその次にやっと行けそう外に
「カン」「カン」
という甲高い音とともに黒い槍は反射し当たったところを抉っていく。
その槍が私の方に飛んでくるのが分かり全力で避けようとしたが、
私の足が動くことは無かった。
多分、体が硬直しているのだろう
(やばい、やばい、どうする、このままじゃ死ぬ、逃げないと)
その事を考え続けていると私の体全体から「ドワ」と言う擬音が似合うような程の冷や汗が流れ始めた。
(このままじゃ駄目だ)
もう、目の前に黒い槍が迫ってきていた。
(あはは、死んだなこれ)
そう思った私は、目を閉じた。
「ガキン」
私の顔の真横では冷たいその音が響いてきた。
(あれ、生きてる、どうして生きてる)
そう思いながら目を開けると私の視界の端に新しく黒い槍がポップしていた。
(良かった、生きてる、死んでない)
こう思い嬉しくなって安堵の心が湧いてくると体の力が抜け私は、崩れ落ちた。
私が先程まで立っていた場所を見ると直ぐ横顔の直ぐ横を掠めるように槍が突き刺さっていた。
(危ねー、マジでやばかったじゃん、生きてて良かった)
と私が更に安堵の気持ちを強くしているとあることに気付いた。
先程私は、顔の直ぐ横を掠るようにと言ったがどうやらその考えは当たっていて黒い槍は少し当たっていたようだ。
何故そういう風に思うのか、それは、
私の髪の毛、ずっと伸ばし続けていた髪の毛が床にボトッと結構沢山落ちているからだ。
(これは、髪型変えないと変になりそうだな)
そう思うほどの量だったのでどうしようかと私は、考え始めていると
「君、大丈夫かい」
と本当に心配していることが分かる声で言ってきた。
「大丈夫です、先生」
そう言い立ち上がろうとしたところで気付いたのだがどうやら私の腰は抜けてしまったらしい。
「良かったよ、君が無事でところで君はどうして立ち上がらないんだい」
先生は、腰が抜けて立ち上がれない私に対してそう言った。
「いや~、先生少し疲れてしまって」
(何かこの人に知られるのは嫌だな)
そういう思いで言うと
「あの魔法だけで疲れたのかい」
と驚いたかのような声でそう言われた。
「しょうが無いじゃ無いですか、命の危機だったんですよ、心労ですよ、心労」
私がそう言い訳をするかのように言うと
「そうか、心労か、人間は難しいな」
と遠くを見るような目でそう言った。
少しトイレに行きたくなった私は
「あの、その、先生、私を魔法で運んで貰って良いですか」
私がそう申し訳なさそうに頼むと
「何処に、それをまず言ってくれないかな」
と問い返された。
「いや、えと、あの、えーと、
そうですね、私は、トイレに来たいんです」
と別の言い方が思い付かなかったので包み隠さずにこう言った。
「それなら、自分で行けば良いじゃ無いか」
私も当然だと思うことを言ってきた。
「良いじゃ無いですか、つれて行ってくれても、疲れているんですよ」
私はどうにかして腰が抜けていたことを知られたくなかったので言い訳をしようとした。
「う~ん、そうか、心労か、分かった」
そう言い先生は近づいてきて私に何の魔法か分からないが私の体を浮かせて引っ張られていった。
トイレの前に着いたときに私の腰は大分治っていたので
「ここら辺でもう良いです、先生下ろしてください」
私は、目の前でチョコチョコと短い足を必死に動かして歩いている先生に言った。
「そうかい、分かった」
この声とともに私は、床に下ろされた。
「ありがとうございます、先生それでは」
私は、そう御礼を言いトイレの中に駆け込むようにして入った。
さっきの降りるときの衝撃で
(やばい、これは、やばい)
と思ったためだ。
「ありがとうございました、本当にありがとうございました」
私は、トイレから出た後に先生にそう言った。
「そこまで感謝されるようなことをしたつもりは無いよ」
ちょっと私の感謝の仕方に引いたように言って来た。
(酷くない、引くなんて酷くないですか先生)
私は、そう思い
「先生、酷くないですか」
とへこんだように言った。
「何が酷いんだい」
本気で分からない声で先生は、返してきた。
(これは、分かってないのか、ハァ~マジか)
そう思いつつ
「もう、良いです、忘れてください」
こう言うと
「なんだい、何が酷いんだい、言いたまえよ」
少しウザく感じてしまう言い方で聞いてきた。
「終わりました、あのことは忘れてください」
私は、そう言い話しを切り
「それで、先生、次回からは攻撃魔法を何処で勉強するんですか」
こう問いかけると
「あぁ~、それは、夜中に外に出てやるよ、
それで、さっきの酷いってなんだい」
と応えてくれた。
(しつこいな)
そう思い私は、
「そうですか、夜中にやるんですか、
それじゃあ、夜中までさようならですね」
先生の質問を無視し私の部屋とかしてしまった図書室に向かおうとしたところ
「そうかい、それじゃあ、また夜中に会おうじゃ無いか」
と言い私の反対方向に歩き出す音が聞こえた。
その音が段々と遠ざかっていったことから考えて多分先生は、私の反対方向歩いて行ったんだろう
私は、そう思いいつの間にか立ち止まっていたので歩き出した。




