第375話 私のものを奪ったな! 絶対
短めです
なぜか応急処置がされていた足を見つめた。
勿論、気絶していたので、絶対に私ではない。
それに、当時の現場にいたレイも、違う、と明言している。
一体、何者がこれを施したのだろう?
「心当たりあります?」
「えっ! あっ、えっと・・・」
彼女は思い当たる節があるのか、それともないのかが、分かりづらい唸り声を上げ、
「えっと、ない、ですね」
そこまで強調しなくても良いだろう、と思う程に強調してきた。
「そうですよねー」
諦観とともに漏らし、
(心当たりは・・・)
先程までの記憶を探った。
そして、
「あっ」
(そういえば、頭痛と吐き気したことあったよな! あれって、魔力を使い切った時の奴では?)
と心当たりを見つけた。
魔力を使い切った時の症状が、奴を持って行くために放った最後の魔法では、使い切っていないのに現れていた。
ということは何らかの魔法が私の体を使って行使されたのかな?
操られた、と考えるのが妥当か?
・・・なんのために?
気絶した私の体を使って、利益は果たしてあるのか?
「レイ、あの魔物を殺したのは、誰ですか?」
「貴女です」
「それは、本当ですか?」
「ほっ、本当ですよ!」
「・・・魔物を殺したのは、倒れる前の私ですか? それとも、倒れた後の私ですか?」
私ではない、何者かにこの身体を動かされた、という事実を確定させるために問いかけると、
「えっと、倒れる前です」
眉唾なことを返してきた。
「・・・それは、本当の事ですか?」
信じることが出来なかったが、
「嘘は吐いてません」
彼女は毅然とした態度で言い切り、服をたくし上げ、
「どうしても気になるのなら、これを使っても構いませんよ」
隷属の魔術を見せびらかしてきた。
「そこまで言うなら信じますけど・・・」
(これで本当に意味が分からなくなってしまった)
あの魔力を使い切った感覚は、勘違いだったのだろうか?
色々と生じた疑問の辻褄が合わず、思考が詰まった。
「ああ゛、もう! 分かりません」
頭を掻きむしり、
「・・・切り替えましょう」
溜息交じりに呟いた。
「レイ、私は何時間寝てました?」
「えっと、大体一時間くらいです」
「・・・短いですね。てっきり、一日二日は経っていると思ってました」
「気付け薬が効いたのだと思います」
「あれですか」
正体の分からぬ薬に再度恐怖をしつつ、
「あのおじさんは?」
見えなかったので問いかけた。
「おじさんは、もう寝ました」
「あっ、寝てたんですか」
(確かにもう遅いよな)
納得しつつ、魔法で松葉杖を創り出そうとした。
少し足を失った場所に行きたかったのだ。
だが、
「くっう、ぐぇえ、イって」
耐え難き頭痛と吐き気に襲われた。
「大丈夫ですか!」
「・・・ええ、まあ」
頭に手を置き、彼女に答えつつ、
(やっぱりだ! やっぱり、魔力は底をついている!)
心中で叫び、
「魔力を何らかの方法で奪われたか」
と推測し、
「レイ、ナニカ棒状のものを下さい!」
現場に魔力を奪った奴の痕跡がないかを捜すため、松葉杖代わりのものを貰うのだった。




