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第373話 アハハ!私の勝利だ! 何処までも無感情な

残酷表現あり

加減はしましたが、苦手な人は気を付けて下さい。

 腹をめがけて、飛んでくるイノシシのような化物の牙に、結界魔法は無情にも砕かれ、他の魔法も思いつかず、あとはただ貫かれるだけに思えた。


(なにか、なにか方法はないか)

 焦って纏まらない思考の中で、使えそうな案を見つけ出し、

「クッソが!」

 腹から声を出し、やけっぱちで実行をした。

 魔法で風を創り出し、無理矢理私の体を吹き飛ばしのだ。


 肢体はとてつもない風により、方向転換をした。

 そして、大事を逃れることには成功した。

 したのだが、

「ぐああぁ! ああぁ! あっあっう! ぐっ!」

 喘ぎ声を漏らしながら、地面に何の準備も出来ず衝突することになった。


 視点が暗転した。

 心拍がこれまでにないほどに早くなり、それと時を同じくして、身体から急速に熱が流れ落ちていった。


 痛い、痛い、いたい、 いたい、────いたい。


 浅くて、意味がないように思える呼吸が漏れる。

 土に埋まった顔をあげる。


 気持ちが悪い。いたい、熱い────意識が飛んだ。

 だが、痛みにより、現実に引き戻された。


 多大な痛みの元を覗いた。

 すると、痛みと疲労によるものとは異なる原因で、気息が浅くなるのを感じた。

 右脚を膝下から失ったことに気付いてしまったのだ。


(どうすれば────いたい───どうすれば───痛い)

 対策が纏まらなかった。

 例え少し纏まり初めても、痛みで全てが弾き飛ばされる。

 賽の河原で石を積んでる気分だ。


「はあ、はあ」

 何故だか二重に呼吸音が聞こえた。

 意識が再度飛びそうになっていたのだ。


(ああ、不味い。まずい。まずい。不味い)

 徐々に身体から重要な物が、空気中に霧散していくのが分かった。

 絶望に染まった中、敵の方を見た。


 とっくに地面に降り立った奴は、私の体を貪ったのか、はたまた貫いた際の返り血を浴びたのか、顔が真っ赤に染まっていた。


(ああ、ウザイ。嫌だ、死にたくない。なんで、まだ、死にたくない)

 悠然とした様子で、こちらに近づいてくる敵に怒りが増した。

 殺したい、復讐してやりたい、純粋な殺意が湧いてきた。


「はあぁあぁ、ふっぅう」

 ゆっくりと深呼吸をしながら、魔法を生み出していく。

 どうせ死ぬのなら、と全力で残った全て打ち出すつもりで、火力と頭数を揃える。

 そして、発射しよう、という所で全てが霧散した。

 集中力が持ってかれたのだ。


「はっははは、終わった」

 徐々に小さくなる掠れた声に、終わりを感じた。

 このまま死ぬんだー、って。

 諦観を抱いていると、目の前の敵が飛んできた魔法によろめいた。


(ああ、イケる)

 我ながら狂っていると思うのだが、少し口角があがったような気がした。

 敵の醜い横顔を見つつ、魔法を創り出した。

 こんな至近距離ならば、長時間継続させる必要性もない。

 持って行ってやる。道連れだ。


(レイを連れてきて、正解だった)

 声には漏らさず呟き、生み出した魔法を射出した。

 油断していたのか、魔法は奴の醜い横顔に吸い込まれるように、当たっていった。


「ハハハ」

(私の勝ちだ)

 嬉しい気持ちを抱き、目の前で崩れ落ちていく敵の姿を見届けるとともに、私の意識は黒くて暗い奔流に飲み込まれていった。


 ___________


「あっ」

 小さく声を漏らし、倒れ伏し、動きを止めた少女に駆寄った。

 大丈夫か、と問いかけようと思ったが、必要性は感じずにやめた。

 もはや到底『大丈夫』であるとはいえぬ状況だったのだから。


「どっ、どうすれば」

 戸惑い、焦りを抱き、アタフタしていると、

『ガタッ』

 といった音が背後より聞こえた。


 サーッと血の気が引いていくのが分かった。

 私よりも強い人が敗れている、それなのに私は勝てるだろうか?


「おっ、起きて! 起きて下さい!」

 置いていって逃げる、という選択肢も浮かんだのだが、彼女が死んでしまうと困ってしまう。

 彼女の魔力を手に入れる事が、とても困難になってしまうのだ。

 背後で動く見たことのない魔物らしきものによって。


 どうするべきか、逡巡する。

 勝つことが難しい、だが、逃げられる可能性は大いにあるだろう。

 目の前に倒れ込む少女のおかげで。


 背後の魔物が完全に立上がった頃、それにあわせるように立上がった。

 そして、

「勝てるかな?」

 振り向きざまに、目に向けて魔法を投げかけた。


「防がれたか」

 苛つきを覚えつつ、奴の弱点を探った。

 だが、岩のような皮膚にはほぼ見られなかった。

 関節部は多少脆弱かも知れないが、それでも貫くのは難しいだろう。

 ならば、何処を狙うべきか、少し考え、目、または口だろう、と結論づけた。

 奴の目と口内は少ししか見えなかったが、類似のイノシシ状の魔物と同様に見えたのだ。


 さて、

「イケるでしょうか?」

 周囲に飛ぶ小さな同胞に問いかける。

 だが、名も知らぬ精霊達は、無理であろう、と返すのみだった。


「そうですよね」

 納得の声を漏らし、奴の一挙手一投足を見守ると、蹄を床に擦りつけ、こちらに突進をしてきた。

 まずい、焦りを抱き、背後の少女と逃げだそうとした。


 そして、背後に立つヒトに気付いた。

 彼女は憂鬱そうな、冷たい眼光をこちらに向けていた。

 魔法が生み出された。

 大きな槍状の何処までも黒くて暗い、いつもの彼女とは異なる魔法が。


 その魔法は、何処までも無感情に思えた。

 いつも宿っているように思える、情熱や悦楽は感じられず、事務的で何処までも冷たい魔法、背筋を粟立たせていると、彼女は再度倒れ伏した。


 そして、大きな球状の穴で立っているのは、私だけとなった。

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