第368話 これは?なんだ?そうか、うん!そうだよな!
楽器が楽しくて、更新が不定期になるかも。
ごめんね
「ありがとうございました」
お礼を投げかけるとともに、小銭が入った袋を投げ私は、
(デカいな。・・・流石に一人では無理か)
目の前に広がる大きな森を見つめた。
『ガタガタ』
と大きな音を鳴らし、乗せてくれた馬車が去って行くのを待ち、
「デカいなー、これ樹齢何年だろう」
森に踏み入り、手短なもので一番太い木を叩いた。
たぶん直径が私の身長を容易に超えると思う。
「・・・これは迷うな」
間違いないな、と確信をして、適当に歩を進めた。
今すぐにレイを呼んでも構わないのだが、なんだか非日常感を味わいたい、と思ったのだ。
「あっ、これなんだろう?」
絶対に食べたら死ぬ、と思うような色のキノコ、クソほどデカい不思議な木の実、トゲトゲした樹木、その他諸々のよく分らないものに反応しつつ、若干泥濘んだ地面を歩いた。
そうしていると、
「これは・・・何かいるな」
大きな偶蹄目らしき足跡を見つけた。
細長く、副蹄も見られることから考え、イノシシに思える。
だが、如何せん大きい。
具体的には、先端から末端までが大体二五センチくらいあると思う。
「いや、可笑しいな。真っ当な動物には思えない」
小さく呟き、ありそうな可能性を考え、
「あっ、そう言えば魔族か」
と直ぐに声を漏らした。
「たぶん魔獣だよな?」
他にも魔人だったり、魔王だったりも魔族に入るが、魔王は流石にこんなところにはいないだろうから除外。
魔人はいる可能性は否めない、ていうかレイ曰く会いに行く方も魔族である為、事実として魔人は存在しているが、流石にここまで大きな蹄を持つ奴はいない、と考えたいために除外。
よって、残った可能性は魔獣だけである!
「うん、ッ怖」
よくよく考えたら、知性がないとはいえ、これ程デカい魔獣は怖いな、と周囲を見渡した。
魔法によると周囲に動物は見られないのだが、探知できない可能性もあるため、一応念の為の目視確認である。
「良かった。いない」
安堵を滲ませ、
「れっ、レイー、来て、来てくださっい」
若干の寒気に怯え、案内人を呼んだ。
そして、妙に長い沈黙が流れ、
「お待たせしました!」
とても浮かれた声が聞こえてきた。
「いっ、いえ、大丈夫ですよ。・・・なんでそんな元気なのです?」
「久しぶりに知合いに会える、と思うと嬉しくなって」
「へっ、へえ」
相槌を打ち、少々深呼吸をした。
怯えているばかりではいけない、さっさと落着こう。
「ふぅ。・・・さて、レイ、案内出来ますか?」
「はい、出来ます。たぶん、あっちの方です」
問いかけると、彼女は森の奥を指し示した。
森の中心、というよりも少し東に逸れている。
「行きましょうか」
と声を掛け、歩き出し、
「そういえば、此処って魔物はいますか?」
彼女に質問を投げかけた。
「いますよ」
「そっ、それって一体どんな?」
「群れることしか出来ない小物、それと魔族の括りで、同族扱いされることも嫌な雑魚です」
「小物と雑魚、ですか」
(そうなんだ。じゃあ、あの大きな蹄の生物は?)
疑問が生じていると、
「あっ、ああいうのが雑魚です」
彼女が真っ直ぐ指を指し示した。
そこには超巨大イノシシらしきものがいた。
「えっ? あの、アレが雑魚?」
「はい、頭が悪くて、弱いです」
「へっ、へえ」
マジかぁ、と驚いていると、
「闘います?」
と問いかけられ、返答をする前に、紫色の光を発す魔法が浮かび上がった。
「はい? どうし──────」
どうして闘う必要があるのか、と問いかけようとしたところで、彼女は魔法を射出した。
大きな風、ヒューという音、それと遠ざかる魔法に、
(えっ、マジィ?)
目を点にしていると、超巨大イノシシの胴の一部が抉れ飛んだ。
当たった場所が挽肉になったのにも関わらず、奴はこちらを向いた。
そして、バタッと倒れ、血溜りを形成した。
「・・・なんというか、あーっと、・・・あー」
グロいな、という形容以外には思いつかず、迷っていると、レイは倒れたイノシシに近づき、
「これ、食べますか?」
と問いかけてきた。
「えーと」
声を漏らしつつ、彼女の元に近づいていき、イノシシの顔を見た。
そして、
「・・・これって純粋な魔物ですか?」
疑問を呈した。
「へっ?」
「いや、顔がとても魔物とは思えなくて」
「えっ?」
目の前に転がる骸の顔は、決してイノシシとはいえなかった。
どちらかというと、人に近く思えたのだ。
「・・・たぶん先祖返りか、またはずっと生きてる個体だと思います」
転がる骸をジッと見つめていると、との回答が成された。
「先祖返り、ですか」
「はい、魔物の祖は古の神様ですので」
「はあ、そう、ですか。・・・そう、ですよね」
深く考えるのは怖かった。
その為、逃げるように声を漏らした。
「これ、どうします?」
「えっと、どうしましょうね。私、食べたくはありませんね、流石に。レイは食べます?」
「いえ、食べません。この種族はとても臭いので」
「うーん、それじゃあ、どうしましょうか」
お土産に持って行こか、とも考えたが、臭いものを持って行くのはどうかと思われたので、
「うーん、仕舞いますか、取り敢えず」
処理は後々決めよう、と闇魔法の倉庫の中に取り敢えず突っ込むのだった。




