第367話 ・・・怖い!また売られるかも
だいぶ酷い文章になりました。ごめんなさい。
あと、ブックマークの件数が100になりました。
ありがとうございます。
よく分らない老人の家で、一夜過ごした。
特に襲われることはなかったし、逆に珍しく快眠することが出来た。
ベッドの質が良く、加えて馬車だったり、移動のために疲れが溜まっていた影響だろう。
(疑って損したかも)
心中で思いながら、枕から頭をあげた。
さっさとお礼を言い、出て行こう、と考えたのだ。
「えーと、ふく、服」
貸してくれた服を脱ぎ、適当な動きやすい服を身につけていると、大きめの足音が複数した。
小さいため、何を言っているのかは分からないが、数人の声もした。
(・・・なんだ? 友人、隣人でも訪ねてきたのか?)
緊張を覚えつつ、魔力を広げ、下の階の人数を確認すると、三人ほどの人影を観測した。
(一人は昨日の老人、は問題ないか、あとの二人が問題だな)
武器らしきものを持つ二人を注視しつつ、静かに扉に近寄った。
大きめの剣を床に突き立てた大男が、身体をくねらせ笑っていることや、声が聞こえてくることから、下の階では談笑が行われている、と考えて良いだろう。
(まだ起きたことには、気付いていないようだ)
多少の安堵を抱くと、扉をゆっくりと開けた。
窓から出る、という手段も思いついたのだが、格子が嵌められているため、その手段は取ることが出来なかった。
「気付かないでくれよ」
小さく声を漏らしつつ、扉をゆっくりと開けると、
『キィー』
としか形容の出来ない大きな音が鳴ってしまった。
(・・・やらかした)
懺悔と後悔をしていると、魔法に映る人達が、剣のグリップに手を乗せていた。
ああ、本当に終わったかも知れない、諦観が湧き上がっていると、聞こえはしなかったが、老人が口を開き、彼らは安心したかのように再び腰を椅子に下ろした。
(小娘だから、ってことで安心されたか?)
自分の身長に多少感謝していると、こちらに一人向かって来た。
剣を持っておらず、多少腰が曲がっていることから考え、昨日の老人だろう。
(襲われて、また売り飛ばされるかも)
と少し恐怖を抱き、一応抵抗する準備をしつつ、
「おはよう、まだ朝早いが、大丈夫か?」
もう睡眠は良いのか、という質問に対し、
「はっ、はい、大丈夫です。よく眠れました」
返答をした。
「そうか、それは良かった。少し朝餉の準備に時間が掛かるが、食卓についてなさい」
「はっ、はい、分かりました」
承諾の返事をすると、彼は私のことをジッと見つめ、
「服は大丈夫か」
と声を漏らした。
たぶん、替えの服があった、というのに驚いているのだろう。
「はい、大丈夫です。・・・あっ、お借りした服はどうすれば良いでしょうか?」
洗って返したほうが良いか、それともそのまま返しても構わないか、という旨の質問をすると、
「あの服は君にやろう」
と返された。
「えっ?」
「幼い頃の孫の服だ、着るものもおらぬから、君にやろう」
「・・・良いのですか?」
「ああ、構わないよ」
「あっ、ありがとうございます!」
結構良さげな服な為、お礼を言うと、
「いや、構わないよ。・・・取ってきなさい」
と私に言い、彼は私に背を向け、一階へと降りていった。
(やっぱり、普通に良い酔狂な人なのかな)
と疑いを向けたことを申し訳なく思いつつ、魔法を解除し、一夜を過ごした部屋の中に戻り、ベッドの上で畳まれた手触りの良い服を手に取った。
そして、服を片手に一階の方へと降りて、食卓につき、部屋を見渡した。
記憶が正しければ、先程まで魔法によれば、複数人この部屋にいたはずなのだが、不思議と今は私一人きりとなっていた。
(・・・何でだ?)
疑問が生じ、再び魔法を発動させると、老人と私以外の人間は観測できなかった。
少々、いや、結構な恐怖を感じていると、
「待たせた」
とスープが目の前に置かれた。
「あっ、ありがとうございます」
と返していると、
(何があったんだ?)
段々と疑問が膨らんでいくのが分かった。
そして、
「あのっ、聞きたいことがあるのですが、良いでしょうか?」
欲求を我慢することが出来ず、爆発してしまった。
「ああ、構わない」
「えっと、先程まで、男の人が二人いたと思います。あの人達はどこに行ったのですか?」
「聞こえてしまっていたか」
老人は少々残念そうに呟き、
「彼らは、子供の教育に良くないのだ。だから、外出して貰っている」
と続けた。
(声音と視線から考えて、嘘は言っていなさそうだな)
何となく真実を話している、と確認めいたものがありつつ、
「教育に良くない、ですか?」
引っかかった場所を質問した。
「彼らは、少しばかり口が悪くてね」
「そうなのですか?」
「当人達は、傭兵の名残が抜けない、らしい」
(傭兵、いや元傭兵か。雇って居るのか? それとも単純に知人?)
新たな疑問を生じさせつつも、
「傭兵さん、ですか」
適当に相槌を打ち、貰ったパンとスープを口に入れていくのだった。
なんだか分からないが、深く踏み込むべきではない、という予感がしたのだ。
彼の素性だったりを追求したら、とても悪い事になる、そんな予感が。
…………
ご飯を食べ終わり、数分会話をしたのち、
「本当にありがとうございました」
と彼にお礼を漏らした。
「いや、構わないよ。・・・本当に大丈夫か?」
「はっ、はい! 勿論です。向かわなければならない場所があるので」
「そうか、君の旅に苦難がないことを祈るよ」
「ありがとうございます、おじさん。こちらこそ、貴方の幸福を祈ります」
と言った調子で老人とは別れ、目的地行きの馬車に乗せて貰うのだった。
今回の馬車は、前回と同様に商人の馬車だ。
どうやら、目的地付近を通るらしく、その途中まで乗せていって貰うのだ。




