表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
367/385

第362話 高等部一年生になりました!

そういえば、高等部二年スタートと言いましたが、色々と考えた結果、一年スタートになりました。

 ヒルビア正教会に擦り寄られるようになり、色々と対策と講じたのですが、対策虚しく時は過ぎ、私は高等部の一年生になりました!


 なんだか、この前まで中等部一年生だった気がするのですが、たぶん気のせいでしょう。

 だって、中等部三年として勉強をして、勉強をして、勉強をしたのですから!

 ・・・ハハハ、つまんねー人生。


 まあ自虐はやめて現状報告です。

 この三年間で大きく変化したことはありませんでした。

 まず、ブランドー侯爵家とユーレン伯爵家の対立は続き、互いに睨合っています。

 始まったときと同様にブランドー侯爵家が圧倒的に優勢です。

 幾つかあった代理戦争でも勝っていますし、ユーレン陣営に比べ、そこまで亡命、脱柵が多いわけでもないらしいので。


 あっ、そう言えば、ユーレン陣営内では、先々代の領主が消えた、だとかで色々と騒動が起きているそうですよ。

 確か、パートリック・ユーレンって方で、何度か会ったことがあります。

 何かあったのでしょうかね?


 さて、対立以外の現状ですと、なんだか分かりませんが、私を中心とした陣営が形成されていました。

 正教派、三大公派、皇室派とは比べものにならないほど、小さくて忠誠心もクソもありませんが、一応はそう呼ばれるくらいにはなりました。不思議な事に。

 主要メンバーは、私、ブラット公爵家のアイビー様の二人です。

 大多数は、爵位の低い貴族、私を引き込もうとする貴族、それと諍いに巻き込まれたくない平民です。


「うん、どうしてこうなったんだろう?」

 私的には一切味方を作ろう、という努力はしたことがなかった。

 それなのに、無駄に寄って集って、エミリー様、エミリー様と呼んで来るせいで、変なブランドー派なんてものが生まれて、困ってしまいますよ。うん。


「分からない、本当に、ホンマ意味が分からん」

 うんうんと頭を悩ませていると、

「どうしたんだい?煩いよ」

 馬鹿にされてしまった。


「何を言いますか、モンド先生!」

「言われたくないんなら、囈言をやめなよ」

「はあ、・・・はい、分かりましたよ」


 確かに癖がつくのはいけない、と思い不貞腐れながら納得をすると、

「そう言えば君、今日は茶会とかに呼ばれてないのかい?暇そうにふんぞり返ってるけど」

 と予定を問われた。


「・・・えーと、確か記憶が正しければですが、今月は全て蹴ってます」

「どうしてだい?」

「何て言うか、下心が透けて見えている人が多かった、って言うのが一つ。それと、この三年間ほぼ休みなく、茶会に、舞踏会、食事会に呼ばれてて少々疲れました」

「へぇ、そうかい」

「雑な返事ですね」


 適当な返事をしつつ、

(それに、気持ちの悪い誘いを受けるのは嫌だし)

 と大きくふんぞり返った。


 今の所、参加してるパーティー云々は、皇室、三大公、中立を謳うものが主催するもののみで、さっさと正教と手を打ちたいから、正教主催のものには参加していない。

 でも、逆に執着が強くなっている印象を受ける。


(私を籠絡して、ブランドー侯爵家を手元に戻したいんだろうな)

 計画が見え透いていて、気持ちが悪くてしょうがない。

 どうにかして完全に手を切る手段はないだろうか?

 手切れ金を払う程度で去ってはくれないだろうし・・・。


「はあ」

 面倒で、面倒で面倒で、気分を害して大きく溜息をつくと、

「気分転換でもしたらどうだい?」

 との提案が成された。


「しようとしてますよ。だから、今月の予定を全て蹴ったのですよ」

「でも、屋敷に籠もるんだろう?」

「そりゃあ、襲撃される可能性も看過できませんから」

「勝手に遠くに行ったらどうだい?」

「・・・馬鹿ですか?」

「昔の君だったら、それは名案だ、と乗ってくれそうなのに・・・」

「私、もう一五歳と国によっては大人なのですよ」


 子供だ、と馬鹿にされているように思え、癪に障ったので返すと、

「そうかもね」

 短い返答をされた。


 なんだか気まずくなり、とても話していられない気分なので、朝貰って開くことのなかった新聞を手に取った。

 そして、

「へぇ」

 感嘆の声を漏らした。


「どうかしたのかい?」

「新聞によるとですね、どうやら勇者だとか言われる奴が、帝国に来るらしいんですよ。何しに来るんでしょうか?諜報ですかね?」

「さあ、年齢によるんじゃないかな。君くらいなら勉強をしに来ると思うし、それ以上だったら・・・。いや、ないな」


 何故か自己納得したことに、

「いや、答えてくださいよ。何がないんです?」

 疑問が生じ質問をすると、

「勇者ってのは、基本はヒルビア正教会の所有物なんだよ。だから、移住はないな、って思ったんだよ」

 引っかかる返答がされた。


「・・・先生、質問宜しいですか?」

「うん、良いよ」

「所有物、というのは?勇者、という語から考え、人間なのでしょう?」

「いや、あの種族は人間ではないよ」

「えっ?」

「ヒルビア正教会によるとね」


(あの宗教って人権否定することもあるんだ、コワー)

 少し悪寒を感じていると、

「伝えた記憶はあるけど、勇者って奴はこっちの世界の人間じゃないからね。曰く、ヒルビアの膝元で生まれてない奴は、人間ではないらしいよ」

 との説明がなされた。


(へぇ、勇者ってこっちの人間じゃないんだ)

「・・・えっ、そうなのですか?勇者って別世界の人間なのですか?」

 初めて知ったので、驚いて返した。


「そうらしいよ。僕の古い知合いが言ってた」

「それって確かな情報なんですか?」

「うん、勇者本人に教えて貰ったからね」

「えっ?本当ですか?」

「うん、本当だよ」

「そっ、それって何代目の勇者ですか?」


 不明瞭な二代目勇者について分かるのでは、と思い問いかけると、

「うーん、・・・さあ?分からないや。でも、一代目の勇者とは違うことは確かだよ。・・・いや、三代目も違うか、じゃあ・・・ああ、なるほど・・・。さあ、分からないや」

 分かってそうなのにも関わらず、分かっていない、という返事をしてきた。


「一代目と三代目が違うってことは、消去法で二代目なのでは?」

 独り言で聞こえてきた情報から考え、突っ込むと、

「さあ、どうだろうな。・・・あっ、もうこんな時間だ。今日は大賢者に呼ばれてるんだよ、じゃあね」

 有無を言わせずに去ってしまった。


「はあ、マジカー」

 逃げられてしまったことに声を漏らしつつ、

(勇者、ね。四代目勇者か。・・・そう言えば、今年の中等部一年生に聖女だとかいう奴がいたな)

 ヒルビア正教に属している人で、珍しく私が行為を寄せているラーラ先輩を差し置き、聖女だとか言う称号を授けられた奴がいる、という噂を思い出した。


「・・・接触しないのが吉か」

 話でもして、正教の見方だと思われては厄介なので、触らぬ神に祟りなし精神で行くことにした。

 そして、

「そう言えば、明日って休みか。何しようかな」

 と独りごちて、先程言われた、遠くに行ったらどう、という言葉を思い出すのだった。

お礼

誤字報告、ありがとうございます。

『代える』と『替える』を誤字していました。

詳しい話数は見てなかったのですが、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ