第362話 高等部一年生になりました!
そういえば、高等部二年スタートと言いましたが、色々と考えた結果、一年スタートになりました。
ヒルビア正教会に擦り寄られるようになり、色々と対策と講じたのですが、対策虚しく時は過ぎ、私は高等部の一年生になりました!
なんだか、この前まで中等部一年生だった気がするのですが、たぶん気のせいでしょう。
だって、中等部三年として勉強をして、勉強をして、勉強をしたのですから!
・・・ハハハ、つまんねー人生。
まあ自虐はやめて現状報告です。
この三年間で大きく変化したことはありませんでした。
まず、ブランドー侯爵家とユーレン伯爵家の対立は続き、互いに睨合っています。
始まったときと同様にブランドー侯爵家が圧倒的に優勢です。
幾つかあった代理戦争でも勝っていますし、ユーレン陣営に比べ、そこまで亡命、脱柵が多いわけでもないらしいので。
あっ、そう言えば、ユーレン陣営内では、先々代の領主が消えた、だとかで色々と騒動が起きているそうですよ。
確か、パートリック・ユーレンって方で、何度か会ったことがあります。
何かあったのでしょうかね?
さて、対立以外の現状ですと、なんだか分かりませんが、私を中心とした陣営が形成されていました。
正教派、三大公派、皇室派とは比べものにならないほど、小さくて忠誠心もクソもありませんが、一応はそう呼ばれるくらいにはなりました。不思議な事に。
主要メンバーは、私、ブラット公爵家のアイビー様の二人です。
大多数は、爵位の低い貴族、私を引き込もうとする貴族、それと諍いに巻き込まれたくない平民です。
「うん、どうしてこうなったんだろう?」
私的には一切味方を作ろう、という努力はしたことがなかった。
それなのに、無駄に寄って集って、エミリー様、エミリー様と呼んで来るせいで、変なブランドー派なんてものが生まれて、困ってしまいますよ。うん。
「分からない、本当に、ホンマ意味が分からん」
うんうんと頭を悩ませていると、
「どうしたんだい?煩いよ」
馬鹿にされてしまった。
「何を言いますか、モンド先生!」
「言われたくないんなら、囈言をやめなよ」
「はあ、・・・はい、分かりましたよ」
確かに癖がつくのはいけない、と思い不貞腐れながら納得をすると、
「そう言えば君、今日は茶会とかに呼ばれてないのかい?暇そうにふんぞり返ってるけど」
と予定を問われた。
「・・・えーと、確か記憶が正しければですが、今月は全て蹴ってます」
「どうしてだい?」
「何て言うか、下心が透けて見えている人が多かった、って言うのが一つ。それと、この三年間ほぼ休みなく、茶会に、舞踏会、食事会に呼ばれてて少々疲れました」
「へぇ、そうかい」
「雑な返事ですね」
適当な返事をしつつ、
(それに、気持ちの悪い誘いを受けるのは嫌だし)
と大きくふんぞり返った。
今の所、参加してるパーティー云々は、皇室、三大公、中立を謳うものが主催するもののみで、さっさと正教と手を打ちたいから、正教主催のものには参加していない。
でも、逆に執着が強くなっている印象を受ける。
(私を籠絡して、ブランドー侯爵家を手元に戻したいんだろうな)
計画が見え透いていて、気持ちが悪くてしょうがない。
どうにかして完全に手を切る手段はないだろうか?
手切れ金を払う程度で去ってはくれないだろうし・・・。
「はあ」
面倒で、面倒で面倒で、気分を害して大きく溜息をつくと、
「気分転換でもしたらどうだい?」
との提案が成された。
「しようとしてますよ。だから、今月の予定を全て蹴ったのですよ」
「でも、屋敷に籠もるんだろう?」
「そりゃあ、襲撃される可能性も看過できませんから」
「勝手に遠くに行ったらどうだい?」
「・・・馬鹿ですか?」
「昔の君だったら、それは名案だ、と乗ってくれそうなのに・・・」
「私、もう一五歳と国によっては大人なのですよ」
子供だ、と馬鹿にされているように思え、癪に障ったので返すと、
「そうかもね」
短い返答をされた。
なんだか気まずくなり、とても話していられない気分なので、朝貰って開くことのなかった新聞を手に取った。
そして、
「へぇ」
感嘆の声を漏らした。
「どうかしたのかい?」
「新聞によるとですね、どうやら勇者だとか言われる奴が、帝国に来るらしいんですよ。何しに来るんでしょうか?諜報ですかね?」
「さあ、年齢によるんじゃないかな。君くらいなら勉強をしに来ると思うし、それ以上だったら・・・。いや、ないな」
何故か自己納得したことに、
「いや、答えてくださいよ。何がないんです?」
疑問が生じ質問をすると、
「勇者ってのは、基本はヒルビア正教会の所有物なんだよ。だから、移住はないな、って思ったんだよ」
引っかかる返答がされた。
「・・・先生、質問宜しいですか?」
「うん、良いよ」
「所有物、というのは?勇者、という語から考え、人間なのでしょう?」
「いや、あの種族は人間ではないよ」
「えっ?」
「ヒルビア正教会によるとね」
(あの宗教って人権否定することもあるんだ、コワー)
少し悪寒を感じていると、
「伝えた記憶はあるけど、勇者って奴はこっちの世界の人間じゃないからね。曰く、ヒルビアの膝元で生まれてない奴は、人間ではないらしいよ」
との説明がなされた。
(へぇ、勇者ってこっちの人間じゃないんだ)
「・・・えっ、そうなのですか?勇者って別世界の人間なのですか?」
初めて知ったので、驚いて返した。
「そうらしいよ。僕の古い知合いが言ってた」
「それって確かな情報なんですか?」
「うん、勇者本人に教えて貰ったからね」
「えっ?本当ですか?」
「うん、本当だよ」
「そっ、それって何代目の勇者ですか?」
不明瞭な二代目勇者について分かるのでは、と思い問いかけると、
「うーん、・・・さあ?分からないや。でも、一代目の勇者とは違うことは確かだよ。・・・いや、三代目も違うか、じゃあ・・・ああ、なるほど・・・。さあ、分からないや」
分かってそうなのにも関わらず、分かっていない、という返事をしてきた。
「一代目と三代目が違うってことは、消去法で二代目なのでは?」
独り言で聞こえてきた情報から考え、突っ込むと、
「さあ、どうだろうな。・・・あっ、もうこんな時間だ。今日は大賢者に呼ばれてるんだよ、じゃあね」
有無を言わせずに去ってしまった。
「はあ、マジカー」
逃げられてしまったことに声を漏らしつつ、
(勇者、ね。四代目勇者か。・・・そう言えば、今年の中等部一年生に聖女だとかいう奴がいたな)
ヒルビア正教に属している人で、珍しく私が行為を寄せているラーラ先輩を差し置き、聖女だとか言う称号を授けられた奴がいる、という噂を思い出した。
「・・・接触しないのが吉か」
話でもして、正教の見方だと思われては厄介なので、触らぬ神に祟りなし精神で行くことにした。
そして、
「そう言えば、明日って休みか。何しようかな」
と独りごちて、先程言われた、遠くに行ったらどう、という言葉を思い出すのだった。
お礼
誤字報告、ありがとうございます。
『代える』と『替える』を誤字していました。
詳しい話数は見てなかったのですが、本当にありがとうございました!




