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第358話 プレゼント、ですか?へぇ、高そうな宝石

(・・・眩しいな)

 暇つぶしに意味もなく揺れる火を見つめていると、

「失礼致します、お嬢様。お客様をお連れ致しました」

 扉が叩かれ、声が聞こえた。


「ありがとうございます、アリアさん」

 連れてきてくれたことにお礼を言い、

「本日はいらしてくださりありがとうございます。ご挨拶できず、申し訳なく思いますフォルティナ様」

 と謝罪を口にした。


「いえ、構わないわ。そちらこそ大丈夫?」

「はい、多少辛いこともありますが、大きな問題はありません」

「それは良かった」


 間延びした声と微笑む顔に、

(なんの目的でやって来たのだ?)

 疑問を深め、

「・・・どうか致したのですか?フォルティナ様」

 来訪の理由を問いかけた。


「贈物を直接手渡ししたかったの」

「贈物ですか?」

「ええ、招待してくれたお礼に」

「ありがとうございますっ」


 お礼を言ったところで、数回咳が漏れ出た。


「しっ、失礼、申し訳ありません」

「いえ、構わないわ」

「ありがとうございます」


 少々不敬を心配していると、

「はい、これを」

 綺麗に包装されたものを渡された。


「これは?」

 疑問を呈すと、

「アクセサリー、本当は付けている所を見たかったのだけど・・・思ったより体調が悪そうだから、これで失礼するわ」

 残念そうに言われてしまった。


「いっ、いえ、大丈夫です。その程度の事なら可能です」

「そう?でも、今は良いわ。これ以上、病魔が悪化したり、長引くのは辛いでしょう」

「でっ、ですが・・・。その程度なら・・・」

「フフフ、次会うとき、そうね・・・学院かしら?」

「・・・はい、その通りです」

「そうね、次学院に登校するときに、付けてきて頂戴」

「分かりました、ありがとうございます」


 お礼を言うと、彼女は立ち上がり、

「それでは、時間をくれてありがとう、失礼したわ」

 と言い残し、部屋から出て行った。


(・・・色々と失礼してしまったな)

 後悔が残りつつ、いつの間にか部屋に入っていたアリアさんに、包装を解きながら、

「これアクセサリーらしいので、付けて頂いても構いませんか?」

 と問いかけた。


「はい、勿論構いません」

「ありがとうございます」


 お礼を言いつつ、包装の中身を見た。

 そこには赤色の宝石のペンダントが収められていた。


「なんの宝石でしょうね?」

 声を漏らしつつ、同封されていた紙の封を開け、読み進めた。


『前略

 本日は招待頂き誠にありがとうございます。エミリー・ブランドー様、貴方の皇帝陛下への真摯な忠誠を称し、個人的に報償をお贈り致します。東方からの輸入品でアレキサンドライトというそうで、蝋燭の下では赤色、陽の光の下では青緑色と不思議な性質を持つそうです。

 今後とも貴方の真摯な忠義を願います。

 親愛なるフォルティナ・ファイアウェルより』


「へえ、アレキサンドライト」

 一応は聞いたことがある単語なので、噛み砕くように反芻し、

「付けてください」

 アリアさんに手渡した。


「お嬢様、この紫色の宝石のペンダントとともに付けますか?」

「紫色の宝石?」

「お嬢様がいつも付けているものです」


 何を指し示しているのだろうか、少々分からずに考えた。

 そして、

「ああ、はい、分かりました。・・・今回は外します。複数個付けるのは少々いやらしく感じますので」

 昔、領地に居たときにモンド先生より、レイの攻撃を耐えるために貰った闇魔法対策のペンダントを外して貰った。


(・・・なんだか、本当に久しぶりに外した気がする。寝るときも付けること多いし)

 などと少し驚きつつ、

「ありがとうございます、アリアさん」

 お礼を言い、

「あっ、そうです。マリアさんを呼んできてくださいませんか?ユーレン伯爵家の」

 面会を望んでいるらしいマリーちゃんの名前を出した。


「承知致しました。ただいま呼んでも参ります」

「宜しくお願いします」


 アリアさんが部屋を出て行き、数秒の後に私は考える。

(さて、如何なる話をしたものだろうか?)

 と。


 一応は彼女は侍女である。

 侍女であるはずなのだが、まあ色々あって関係が霧散してるに等しい。

 別に私の認識では仲が悪いわけではないのだが、気まずくて互いに話しかけれていない、というのが現状だ。

 それに、家同士の仲が間違いなく拗れているというのもあるし。


(うーん、難しい)

「はあ」

 耐えきれずに溜息を漏らすと、ノックが聞こえ

「失礼します、お嬢様」

 扉が開かれた。

「ありがとうございます」

 お礼を言った後に、室内から出ないアリアさんからマリーちゃんに視線を移した。


「お久しぶりですね、マリアさん」

「はっ、はい、お久しぶりですお嬢様」

「そこまで固くなくても構いませんよ?」

「はい、・・・分かりました」


 どう足掻いても緊張を解こうとしないので、苦笑いをしつつ、

「それで、本日はどうか致しましたか?」

 本題を切り出した。


「そのっ、・・・本日はこのような会にお誘い頂き、ありがとうございます」

「構いませんよ、久方ぶりに貴女とお話ししたい、と思っていた節もありましたので。まあ、このような当初の計画とは異なるものになりましたが」

「・・・ご体調の程はいかがでしょうか?」

「うーん、多少悪くはありますが、たいした問題はありませんよ」


 身体の調子を答え、マリーちゃんの返答を待った。

 どのような質問をされるのか、少し緊張をしていると、

「お嬢様、いえ、エミリー様、お願いを聞いて頂けないでしょうか?」

 と声が出されるのだった。

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