第349話 体調は悪くありませんよ?快調と言えます。
謝罪
二週間程度お休みを頂いて申し訳ありません。
諸事情ありますが、試験勉強をしておりました。
ファイアウェル大公家のフォルティナさんのとのお茶会より、数日経過しました。
親睦会と銘打たれたアイビー様とカイル皇子の顔合わせの日程も決まり、
「手伝えることはありませんか?」
という風に準備を手伝おうとしたのですが、
「ありません、お嬢様もお疲れでしょうしお休み下さい」
断られてしまいました。
(くっ、なんで?)
とてつもなく疑問が残り、ベッドに中で噛み締めていると、
「その顔が原因じゃないのかな」
背後から声をかけられた。
「何を言いますかモンド先生。私を侮辱するようじゃないですか?」
「そんなつもりはないよ。でも、顔が如何にも不調そうじゃないか」
「・・・不調ではありませんよ。私は大変に元気です」
ベッドに埋めていた顔を上げ、モンド先生を振り返る。
すると呆れたように、
「まるで死にそうな顔に見えるね。スランプの歌人くらい」
よく分からない例えをされた。
「意味わかりませんよ、先生」
「僕も思うよ」
「じゃあ、何故?」
「まじめに言うよりふざけた方が良いだろう?」
「・・・意味がわかりませんね」
最近は本当に意味が分からないが寝不足だ。
大変に早く、七時に寝ても何故か寝足りない。
本当に意味がわからない。
「それで本当にどうしたんだい?顔色が悪いけど」
「悪くはありませんよ、・・・強いて言うなら寝不足です」
「馬鹿みたいに早く寝てるのに?」
「ええ、本当に意味がわからないことに」
少し笑った調子で返すと、
「う〜ん、そうだね」
妙案が思いついたようだった。
「君に安眠の呪いをかけてやろう」
「それって呪いというより祝福では?」
「いや、呪いだね。僕は祝福がかけれないからね」
「神様なのに?深淵の」
「まあ、昔色々とあったんだよ」
色々あったって何があったのだろう?
少しの疑問と好奇心で、
「何があったんですか?」
と質問をした。
「まあ、色々は色々だよ」
「神話から存在が除されるくらいのですか?」
「うん、そうだね」
モンド先生の称号『深淵の神』を今まで一度たりとも神話で見かけず、神話の研究でも見たことがないので、予想していたことを問いかけると、やはりその通りだったようだ。
「そういえば、モンド先生の名前って何ですか?」
「君が名付けたモンドだけど?」
「いや、それは私が七歳の時、適当に名付けたものですよ。本当の、神様としての名前ってなんなのですか?神様ならあるでしょう?最高神からつけられるって奴」
私が少し気になったので問いかけると、
「・・・ないよ。そんなもの」
回答は短いものだった。
「ないんですか?」
「うん。ないよ」
「どうして?」
「僕は他の神達とはルーツが異なるからね」
「へえ、そのルーツというのは?」
「あっ、僕はもう行くよ」
逃げられそうになり、
「待って!せめて、そこだけでも教えて!」
尻尾を掴もうとしたのだが、虚を掴むだけだった。
「・・・ちっ、逃げられたか」
悪態をつきながら、ベッドに寝っ転がる。
少し眠いなって思ったから。
そして、
「お嬢様ー、遊びませんかー!」
喧しい声が響いた。
「うるさいです。アースベルト。というか、ノックをしなさい」
普段より少し馬鹿っぽく見える彼にいうと、
「ハッハッハ、ごめんなさい、ごめんなさい」
愉快に謝ってきた。
「お酒でも飲みました?」
「飲んでませんよ」
「それじゃあ、賭け事で大勝ちでもしました?」
「いえ、大負けしました」
「大丈夫ですか?」
「はい、勿論!少し身包み剥がされただけです」
(だっ、大丈夫ではないのでは?)
心配になりつつも、
「それではどうしてそれほど元気なのです?」
理由を問いかけると、
「アリアに喧しい馬鹿と話せば、多少は元気も出るだろう、と言われたからです」
馬鹿正直に教えてくれた。
「だから、そんな煩く?」
「はい、その通りです」
「少々、気になるのですが、その気遣い私に伝えてよかったのですか?」
「・・・あっ」
「ダメ、ですよね。やっぱり」
「ひっ、秘密にしてもらっても?」
「ふふふ」
少し彼の馬鹿の演技に笑いを漏らしつつ、
「ええ、勿論です」
と返事をして、
「あっ、そうです。折角ですし、外に出ませんか?」
自室で過ごすのも若干飽きてきたので、提案をした。
「唐突ですね」
「ダメですか?」
「僕は構わないです。でも、外出が禁止されてます」
「・・・そういえば、さっき賭け事で大負けしたって言ってましたね」
(正気でこれだったら不味い気がするよ。この人、一応次期領主でしょ)
だいぶ心配になりながらも、
「そうですね・・・。もし責められたらこう返してください。無理矢理に連れ出された、と」
免罪符を与え、ベッドから飛び起き、
「それでは行きますよ。準備を」
アースベルトの姿を視界に入れた。
「・・・準備してくださいよ。剣とか。私は玄関で待ってるので」
いつまで経っても動かぬ彼を急かし、眠気覚まし代わりに、少し飲んで放置していた冷たい紅茶を一気に飲み、部屋の外に飛び出していった。
そして、玄関で十分ほど待っていると、
「お待たせしました。お嬢様」
と何か言いたげなアースベルトがやってくるのだった。
補足
一応の説明として、モンド先生の言う『ルーツが異なる』というのはヒルビア正教会の神様達とです。
先生以外にも、北方のヴァイキングがいる大陸の神さまだったり、東方の島国だったりと結構ルーツが異なるのはいます。設定的に。




