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第343話 皇帝陛下ー!・・・はい、構いませんよ

 昨日、ブラット公爵家のアイビー様とお勉強をして、本日は皇帝陛下とお話をする日です。

 舞踏会の日では、政治が関わるらしく、話せなかった話題なので、だいぶ緊張しますね。はい。


「ハア、ふぅ、大丈夫さ、うん、きっと」

 深呼吸をしながら馬車に揺られる。

 今日は何時もより多く眠ってしまったために、出発前に何もすることが出来なかったのだ。

 覚悟の準備をしておきたかった・・・。


(怖い。怖いなー。何か要求されるのかなー。政治だし、お父様と敵対でもしろ、と言われるかも知れないし、怖いヨー)

 祖国の味方になるのか、それとも敵に転ぶのか、どちらを選びのかが不明なお父様の闇討ちでも命じられないだろうか、と戦々恐々とした思いで深呼吸を繰り返した。


 結構好きなお父様が死んでしまうのは嫌だし、それに『人を殺す』なんていう一線を越えれば、もう帰って来られないような気もする。

 だから、絶対にそうではない事を祈りながら、馬車に揺られ続けた。


 そして、城門を通り、王城に到着した。

「ふぅ」

(大丈夫だ。大丈夫)

 何度も繰り返しながら、

「アリアさん、行きましょうか」

 行きたくない、という言葉を期待して声を掛け、

「はい、お嬢様」

 無情に破れ、王城の執事についていった。


(ハア、・・・頑張るかー)

 表情に出さないように溜息を何度も漏らし続け、

「こちらです」

 と言われた部屋に一人で入った。

 メイドのアリアさんは止められました。


(あっ、ダメなんだ)

 と驚きながら、扉の方を見ていたら、

「やあ、おはよう。舞踏会ぶりだな」

 背後から声を掛けられた。


(やらかした)

 焦りとともに、

「おっ、おはようございます。陛下」

 急いで挨拶をした。


「そこまで畏まらなくても構わぬよ、これは公的な場ではないのだから」

「いっ、いえ、公的な場でなかろうと、敬意を持つのが貴族でありますから」

「そうか、ならば宜しい。そこに座りなさい」

「はっ、はい」


 皇帝陛下に対面するようなソファーのような椅子に腰を掛け、

(ふぅ、落ち着け、落ち着け)

 小さく深呼吸をしながら、こちらを見つめる皇帝陛下を見つめ返した。


「まず、来てくれてありがとう。・・・其方の名前はエミリーであっておるか?」

「はい、その通りです」


(何故名前を問われたのだろうか?)

 疑問を抱いていると、

「ならば、エリーかエムか、どっちで呼ばれたい?」

 短縮形の名前を出された。


「いえ、そのっ、・・・エリーとでもお呼びください」

「ハハハ、ありがとう、エリーよ」

「構いませんよ、陛下」


(どうして突然、このような事に)

 疑問を思い浮かべながら、少し宙を仰ぎ見ていると、

「さて、エリーよ、其方は現状の婚約についてどう思う?」

 それまでとは異なる声に驚いた。


「婚約、と言いますと、カイル皇子殿下とのものですか?」

「その通りだ」

「どう思う、というと、一体?」

「其方は何か不満はあるか?」

「不満ですか・・・。特にその様な物はありません。殿下にも大変に良くして貰っていますから」


(あっ、『話』というのは婚約に関するものだったのか)

 何となく気付いたことを確信に変えるために、

「あのっ、陛下、婚約がどうかしたのですか?」

 質問を投げかけると、その返答は予想通り、

「エミリー・ブランドー、其方と皇室との婚約を解消したいのだ」

 というものであった。


「こちら側、ブランドー侯爵家側、もしくは私個人の問題により、でしょうか?」

「いや、今回の件は我ら皇族、国家の問題だ。すまぬ」

「いえ、頭をお上げください」

「ありがとう。エリーよ」


(国家の問題、国家の問題か。一体なんだ?)

 疑問を抱き、

「質問宜しいでしょうか?」

 許可を求めた。


「構わぬ」

「国家の問題、というのは?」

「財政破綻を何度も起こした貴族が倒れそうなのだよ。故に、皇室との仲を生み出すことにより、直接的な支援を行いたくてな」

「・・・その貴族というのは?それと、直接的な支援は婚姻を結ばなくても、可能ではないのですか?」

「ブラット公爵家だ。彼の公爵家への支援には、厳しいものがあるのだ。議会での支援金が下りない為に、血の繋がりを作らねばならない」


(・・・そういうことか)

 納得をしつつも、

「それならば、わざわざブランドー侯爵家との婚姻を結ぶ必要性はありましたでしょうか?」

 少し純粋な疑問を呈した。


「カイル、あれは我の一番の末の子なのだよ。立場的に弱く、簡単に、赤子の手をひねるよりも簡単に蹴落とすことが出来た───」

「だから、ブランドー侯爵家を後ろ盾に立場を固め、容易には潰されないようになったため、本来の目的のために婚約を解消したい、と言う事ですか?」

「あっ、嗚呼、その通りだ」


 少し下を向いた陛下を見ながら、

(私達は『手段』であった訳か)

 確かに色々と納得できる。

 西方随一の力を持つ侯爵家に皇族の血を与え、国家が転覆される可能性を看過するのは確かに可笑しかった。


「・・・あの、その事はお父様はご存じなのですか?」

「ああ、知っているとも、彼奴には最初から話していた」

「そうですか、分かりました。それならば、私は構いません」


(いやあ、最近仲良くなろうとしていた人が、・・・ハア)

 少し衝撃的な、悲しい気持ちになっていると、

「エリー、其方が嫌だと申すならば、なかったことにも出来るが、本当に構わないのだな」

 最終確認のようなものをされた。


「ええ、構いませんよ。私は尊き貴族の血に生まれたのですから。・・・国家を害する我が儘は言えません。国家は私達貴族のためのものではなく、臣民を護り、導くものなのですから」

 心配してくれなくても、大丈夫だ、という旨を載せた笑顔で返すのだった。

はい、『第99話 やってしまったよ。私、やってしまったよ』の伏線、前振り回収です。

たぶん9ヶ月と3日かな、回収に掛かったのは。

一応、カイル皇子と会う回数が妙に少なかったりだとか、色々と伏線は張ってたのだけど、結構婚約破棄が唐突になりました。ごめんなさい。

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