第339話 皇帝陛下、お初にお目に掛かります
舞踏会の会場にやって来ました。
古い知り合いに会ったりして、今はまた一人になりました。
・・・あっ、メイドのアリアさんはいます。
なので、二人ですかね。語弊がありました。
「ふぅ」
息を漏らし、飲み終わったコップを適当なお城の従僕に手渡し、
(あと手頃に話しかけれそうな人は・・・)
暇そうな人を探した。
そして、
(あっ、大公達だ。・・・てことは、あれが皇帝陛下かな。・・・皇后陛下はいないな)
会場の一番奥、玉座と思われる椅子が置かれている辺りに、数人の見知った人達がいた。
(えっと、カイル皇子殿下もいるな。・・・あの老年の男達は誰だ?)
皇帝と話している男達に思う。
(・・・ていうか、あの人って皇帝だよな)
一瞬自分が信じられなくなったのだが、赤色のローブに金の刺繍が施され、ついでにアーミンも袖部分に着いてることから考え、あれは皇帝だろう、と確信した。
「・・・大公殿下か?」
皇帝と親しそうに話しており、それに加え老年という事実から考え、
「いや、違うな」
自分で否定した。
大公家は現状は三つある。
でも、大公と思われる男は二人だ。
一人足りない。
もしかしたら、病欠とかの可能性もあるが、たぶん違うだろう。
色々と考察をしていると、皇帝陛下はお話が終わって居たため、挨拶をしに行こう、とすると、
「諸君」
大きな声が響いた。
皇帝と思われる男から。
(うっわ、声デッカ)
反響したのか妙に響く声に驚きつつ、足を止めて、皇帝陛下の方を向く。
そして、会場の皆の注目をかっさらったところで、
「諸君、今宵も会えたことを嬉しく思う。前年以来あっていない者、昨日あった者といると思うが、変わらずに楽しんで貰いたい。今宵の為に、貴族議会議長、庶民議会議長も参ってくれたのだ。社交の娯楽とし、肩の力を抜き、過ごして欲しい」
という事を厳しめな声で言い、
「だが、羽目は外しすぎてしまわぬよう気を付けてくれ、皆まで言うつもりはないが、先年では倒れてしまった者もおるからな」
楽しそうな、おちゃらけた声で言うと、ドッと笑いが起こった。
(えっ、へっ、そんな、えっ、笑って良いんだ)
少し戸惑いつつも、挨拶に行こう、と皇帝陛下へと歩を向けた。
そして、数十分後に対面することが叶った。
直ぐに挨拶に行こう、と思っていたのだが、私よりも早く他の人達が話を始めてしまったために、だいぶ時間が掛かってしまった。
「陛下、この度はご招待頂きありがとうございます。ルイ・フォン・ブランドー侯爵の娘、エミリー・ブランドーと申します。お話をしても宜しいでしょうか?」
スカートを少しだけ摘まみ、軽く一礼をした。
「おお其方は、彼奴の娘か。会ったことはあったか?」
「いえ、お初にお目に掛かります」
差し出された手を握り返し、握手をした。
手袋を外しておいて良かった。
「そうか、そうか。それで、何用であるか?」
「こちらを。ささやかなものではありますが、お渡し致したい、と思いまして」
贈答品を手渡すと、
「おお、そうか。其方は律儀だな」
と言いながら、受取ってくれた。
「社交界に出でて、陛下の元に参るのが遅れてしまったために、多少なりとも、と」
「そうも重く考えずとも良い。其方の親、ルイ侯爵は特に何も行わず、我の言葉を無視したのだからな」
「・・・お父様が申し訳ありません」
「いやいや、構わないとも。其方が謝ることではあらぬ」
「ですが、お父様の事ですので・・・」
大変に申し訳なさを感じ、お父様の事を少し心配に思った。
あの人は一体何をやっているのでしょうか?
「構わぬ、構わぬ。彼奴のことは既に許しておるし、今となっては良き思い出だ」
「あっ、ありがとうございます」
笑い話にしてくれているようなので、感謝の言葉を述べると、
「其方、礼儀正しいのは分かるが、少し肩の力を抜いても構わぬのだぞ」
と訝しげな表情で言われた。
「申し訳ありません。私はこう言う性分の者で」
「そうか、そうか。そのいきだ。よくできておる」
一切肩の力を抜いていないのだが、少しだけ抜いたように思われてしまった。
疑問は残るが、今は気にしなくても良いだろう。
「光栄です」
と返事をすると、先程までと打って変わって、楽しげな声とはかけ離れた如何にも君主然とした声で、
「其方に頼みがあるのだが、余暇を後に教えてはくれぬか?」
耳元に口を寄せてきた。
「勿論構いませんが、どうしてですか?」
「それは此処では伝えられぬ話だ。・・・少し、政が関わってしまう故にな」
「しょっ、承知しました。後に、文書を送ります」
「そうか、そうか、頼むぞ。・・・あそこにおる我が子カイルが其方と会いたそうにしとる、会いに行ってはくれぬか?」
(えっ、あそこって何処だろう?)
指差された方を少し見て、婚約者のカイル皇子様らしき姿を見つけ、
「お目にかかれて光栄でした。陛下」
スカートを摘まみ、礼をして婚約者の元へと歩いて行った。
そして、
「申し訳ありません、ご挨拶が遅れてしまいました」
と謝った。
「いや、大丈夫だ。僕もちゃんと予定を伝えてなかった訳だから」
「ありがとうございます。カイル殿下」
「嗚呼」
・・・何というか、気まずい。
少し重たい面倒な沈黙が私達を包むのだった。
エッセイ書きました。
逆説とか色々と難しいですね。良ければ読んでみてください。
臆病な『陰口』と強気な『罵倒』
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