表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
338/385

第333話 協力ありがとう。それと謝礼とお礼です

 久しぶりにカシワギに会いに来ました。

 っで、対面したら、そこまで驚かれませんでした。

 もっと驚かれると思っていたので、逆に私が少し驚きました。


(もうちょっと驚いてくれても良くないか)

 と思っていると、

「本当に久しぶりだな。侯爵様」

 珍しい呼称をされた。


「ハハハ、どうも。私も閣下とよんだ方が良いかな?」

「いや、遠慮しとく。僕は君よりも身分が低いからな。呼び捨てにでもしてくれ」

「身分が低い、ですか。そう言う割には、敬語は使わないのですね」

「それくらい構わないだろう?侯爵様」

「まあ、構いませんよ」


(さて、どうやって本題を切り出したものかな。てか、レイのこと起こさないと)

 ちょっとだけレイの身体を揺すっていると、

「ソイツは誰だ?」

 との質問が投げかけられた。


(ヨシ、起きたな。レイ)

 少しだけモゾッと動いたのを感じとりつつ、

「私の友人で、腹心ですよ」

 彼女を少しだけ見つめながら言った。


「腹心、ね」

「引き抜こうと何てしないで下さいよ」

「しないさ。犬は飼い主に似る、と言うだろう」

「信用できない、と言いたいのですね」

「ご名答」

「酷いですね。少しくらい信用して下さいな。昔は仲間だったでしょう」

「昔は、な。っで、今日は何のようだ?」


(まあ、昔はってだけだけど、そこまで強調しないでくれても良くないか)

 溜息を噛み殺しながら、

「本日は、お願いがあって参りました」

 本題を切り出しやすいようにしてくれたことを喜んだ。


「願い、ね。・・・どんな無理難題だ?」

「そんなもの出しませんよ。私は、意味もなく手駒をすり減らすほどの大馬鹿ものではありませんよ」

「っで、それはなんだ?」

「貴男の『魂』を見せて頂きたいのですよ」

「狂ったか?スピリチュアルなことでも信じ始めて」


(はあ、酷い。確かに、頭が可笑しくなったのか、と私も思うだろうけど。信用してくれよ)

 今度は溜息を吐き、

「狂ってなんか居ませんよ」

 カシワギに返事をし、

「ていうか、貴女はいい加減起きて下さい。レイ」

 背中に背負った寝ぼすけを床に下ろし、頬を軽く叩いた。


「はえ、なんれすか?」

 惚けたような、馬鹿みたいな声を聞きつつ、

「レイ、起きて早々申し訳ないのですが、魔法は使えますか?ちょっと前に使ったあれです」

 と彼女に問いかけると、はへ、という阿呆らしい、たぶん覚えていなさそうな返事が返ってきた。


「それが腹心ね」

「馬鹿にしてます?この子、これでも結構凄いんですよ」

「へぇ、そうかい」

「信じてませんね」

「それを見て信じられるとでも」


(はあ、能ある鷹は爪を隠す、と言うだろうに。・・・この子は完全に、違うけど)

「レイ、これです。この魔法です」

 取り敢えず、カシワギを無視して、この前買った魔法書の魂を見る魔法のページを彼女の眼前に開いた。


「出来ますか?」

「・・・あっ、はい。分かりました」


(ヨシ、オーケーだ)

 心中で呟いた後、

「貴男はそこで立っていて下さい」

 カシワギに動かれても面倒なのでお願いをして、

「レイ、使って貰っても良いですか?」

 と魔法を発動させて貰った。


 そして、

「・・・はあ」

 溜息を漏らした。


「なんだ?失敗でもしたか」

 という問いに、

「いえいえ、成功はしましたよ」

 適当に返事をしつつ、

(さて、予想が外れた。カシワギは私の同類では決してなかった。・・・私の状態というのは、転生者、動く死体の中でも特異である、と考えるのが妥当かな)

 との結論を出した。


「それじゃあ、なぜ溜息を?」

「何というか、予想が外れたのですよ」

「どんな?」

「まあ、良いじゃ無いですか。追求をしなくても」


 追求され続けた場合には、開示する必要性のないことを漏らしそうだな、と思ったので話を断ち切り、

「さて、一応突然押しかけた事の謝礼、それと協力して下さった事へのお礼の品物をあげましょう」

 お礼をあげるぞ、という話に変えた。


「えーと、ですね。用意したのは、少し薄いビールと大量のナイフなのですけど・・・」

 と此処まで言ったところで、

(お金も必要だったかな)

 ふと思ったので、

「お金も必要ですか?三十万までは出せますが」

 彼が必要だ、と言ったら渡すことにした。


「いや、お金はいらないな。何処かの誰かが、勧めたここでは殆どお金を使う機会がないからな」

「ハハハ、・・・でも、お金を使う機会はあるでしょう。本当に必要ありませんか?」

「塩と多少の嗜好品程度は、手に入れれるくらいの金はあるんでね」

「そうですか。分かりました。・・・ちょっと持ってきますね。ビールとナイフ」


 突然取り出すのはやめた方が良いかな、と思ったので外に出た。

 ・・・彼は記憶が正しければ、私が魔法を使えることを知っていると思うのだが、何が出来るか、までは知られていないはず、なので取り敢えず手札を開示しておきたくないな、と思ったのです。

 ないとは思うのですが、もし裏切られたら大変ですし。


「ヨシ。ここら辺で良いかな」

 少しだけ森の中に入り、用意した物を取り出した。

「これでオーケー」

 と思い、運ぼうとした。


「運ぼう、と思ったのだけど、こいつらをどうやって運ぼうか」

 絶対に私の体重以上ある荷物を見上げながら呟くのだった。


 ______視点変わる______


 裏切り者の協力者がやって来た。

 僕らと同じ不幸な平民のフリをした、殿上人の侯爵様。


 いけしゃあしゃあと姿を現した奴は、魂だとなんだと言った。

 たぶん頭が可笑しくなったのだろう。

 昔はもう少しまともであった気もするのだが、たぶん貴族特有の責務にやられでもしたのだろう。


 スピリチュアル信仰などと狂った行いをし始めていた。

 魔法などと言う物がある、とは言うが、きっとそれに毒されたのだろう。


 それに、いつの間にか協力したことにされてしまった。

 僕はただ突っ立ていただけなのに・・・


 そして、もう一つ気になる点がある。

 目の前でオロオロと迷ったような少女だ。


 少しだけ、あの狂人よりか身長が少し高い、姉妹のように思える女を見ながら呟く、

「奴はどうして、腹心だ、と宣った部下を置いていったんだ」

 と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ