第332話 お久しぶりですね。えーと、何年ぶりですかね?
私は今、森を歩いています。
よく言えば足腰を鍛えるのに良い道、悪く言えば一切整備されてない獣道、そんな道を歩いています。
時々、泥濘んだとことか、小石に足を引っかけて転びそうになったりもします。
もうちょっと整備するべきなんじゃないかな、って思います。
整備するお金がない、もしくはここの政府からお金が下りないのかな?
まあ、確かに短期的に見ても、長期的に見ても此処からお金を生み出すのは難しいからな。
侯爵家の屋敷からは遠くはないけど、近くもないし、別に特産品もなさそうだし。
此処にお金が使われない理由を考えつつ、私は獣道を歩いた。
(えーと、ここら辺だよな)
辺りを見渡しながら。
(ていうか、えーと、・・イレーネとイリナの二人に会うのは若干気まずいな)
と心配事が湧き始め、
「てか、私、地味に髪の色も変えてなくね?」
視界の端に映る銀髪に気付いた。
(えーと、そうだな。・・・黒色に染めるか)
前回と同じ色にしよう、と思って髪に魔法を纏わせた。
そして、視界の端に映る髪が黒色に変わったところで呟いた。
「完璧」
と。
・・・ふと、思ったのですが、私が髪の色を黒に変えたら、まるで背負ってるレイと姉妹みたいですね。
体格的、年齢的に私が妹となりますが、今の状況的に言うと私が姉みたいですね。
なんだか、レイの姉はスッゴい嫌ですね。年寄りのおばあちゃんって言われるようで。
これも余談なのですが、おばあちゃんって呟き思ったのですが、私の祖父、祖母ってどんな人なのでしょうかね?
聞く話によると、父方の方はどっちも討ち死にしたらしいのですが、母方の方は一切知らんのですよね。はい。
お母様曰く、公爵様と私達よりも地位は上らしいのですが、お母様も会いに行きませんし、公爵様からも会いに来ないことから考えて、仲が悪いのですかね?
不思議な事です。
お母様、ちょっと性格がイカれてる印象はありますが、魔法は使えますし、基本的に優しいですし、嫁入りしたブランドー侯爵家自体は、一応は西方貴族連合でしたっけ?たしか、そこの盟主ですし、一応は、帝国議会でも影響力持ってるはず、と関わって利益は大きそうなのに。
それに、欠点と言えば、こんな私が言うのは失礼ですが、身体が貧相なのと、先程も行ったとおり、少しだけイカれてる程度だというのに・・・。
「うーん」
(単純に嫌われてたのか、もしくはお祖父様が忙しいって感じなのかな)
等と色々と会ったことも、名前を聞いたこともない、ていうか私の人生に一度たりとも影を落としたことがないお祖父様の事を考えた。
まあ、でも結局、
「分からんな。お母様の旧姓を知らないから、何て名前の公爵かも分からんし。諦めよ」
とお祖父様の情報が、公爵の位を貰っている、だけなので諦め、黙々と歩いた。
そして、
(あっ、あそこだな。たぶん)
木が途絶え、耕された畑を見つけ、
(えーと、どうやって話しかけようかな。・・・知らない人の可能性もあるし、・・・『やあ、こんにちは。カシワギ、と呼ばれる男を出してくれないかな?』で良いかな)
話しかけ方を決め、森から飛び出した。
「誰かいないかなー」
と呟きながら、辺りを見渡した。
けれど、いなかった。
(・・・声はあっちから聞こえるな。老人の声かな?)
と思い、声の方に歩いて行こうとしたら、
「あっ、アリスちゃん?」
久しぶりに聞く声が聞こえてきた。
(アリス?・・・あっ、そうか、私はアリスか。此処では)
そう言えば、そんな偽名もあったな、と思いつつも、
「お久しぶりです。イレーネさん」
確か、記憶が正しければ、姉貴分みたいな人だった旧友に返事をした。
「そっ、そうね」
「どうかしましたか?」
「そのっ、久しぶりね。本当に」
「そうですね、久しぶりです」
「何処に行ってたの?」
「お家に帰っていました」
そうなんだ、という言葉を聞き終えたあと、
「良ければ、カシワギの元へ案内して貰っても構いませんか?」
彼女にお願いをして、
「勿論良いけど」
承諾の言葉を聞き、そして、言葉に引っかかりを感じ、
「どうかしましたか?」
と質問を投げかけた。
「えっと、その子はだれ?」
「その子、とは?」
「背中の子」
「・・・嗚呼、この子は私の友人です。諸事情で、寝てしまったので背負っています」
(ビビって気絶した、って伝えるのは流石に恥ずかしいだろうし、やめておいた方が良いよな)
などと考えながら、彼女にレイのことを説明すると、
「大丈夫?」
心配の言葉を言われた。
(何を言う、私が少し身長が小さいからって)
心中でふざけつつも、
「大丈夫ですよ。この子くらいは」
レイの事を少しだけ見ながら返した。
「そっ、そう」
「イレーネさん。私は大丈夫なので、案内して貰っても・・・」
「うっ、うん。ごめんね」
このまま会話をしていても、主目的は果たせないな、っと思ったので、閑話を中断し、歩き出した彼女の背中を追った。
(・・地味に、イレーネのこと任せれば良かったかも。やっぱり重いわ)
と後悔をしながら。
っで、五分くらい歩いて、ちょっとした木の小屋の前に到着した。
「ここよ。アリス」
イレーネは私に言うと、扉を叩きながら、
「カシワギ、お客さんよ」
と声を張った。
すると、
「開いてる。入れ」
との久しい声が聞こえてきた。
「開いてるみたい、アリス一人で行く?それとも、私も付いていった方が良い?」
気遣ったように言われ、
「あっ、大丈夫です。一人で」
と迷惑を掛けるのもなんなので、彼女に言い、
「そう。分かった。それじゃあまたね。アリス」
「はい。またいつか」
って感じに、彼女と別れました。
(ふぅ、入るか。ヨシッ、ヨシ、入るぜ)
覚悟を決めるために心中で呟き、
「失礼します。お久しぶりですね、自由解放軍総司令官カシワギ殿」
扉を開けながら、声を張った。
そして、
「おっ、お前は・・・久しぶりだな。アリス、いや、エミリー・ブランドー侯爵様だったかな」
予想より驚いてない声を聞くのだった。
あっ、あともう少しで、この編終了です。
自由解放軍関係が終わったらですね、あとは社交界の奴で終わりです。
っで、その次にはですね、『コネ作り』編かな?たぶん相応しい名前は。
・・・なんていうか、ちょっとだけコネを作ったりします。
高等部編には多分、その後に入れます。
中等部二、三年は書くつもりないので。この作品で言うのはなんですが、盛り上がりに欠ける都合。
修学旅行とかもないので。てか、友達いないし。




