第330話 十五ページと、へえーっていう感心、それと魂を見る魔法
魂を見る魔法が載っている、という魔法書を月桂樹商店で手に入れました。
少し高くて、スッゴい色々と努力が一瞬で消し飛び、辛くはなりましたが、大丈夫です。たぶん。
「さっ、さて」
店主のローレル曰く、若干黒魔法よりの魔法書を手に入れた翌日、私は声を漏らしながら、魔法書を手に持った。
昨日、手に入れて直ぐには、なんだかやる気が起きなかったのに加えて、ちょっぴり具体的には七割ほど魔力がなくなっていて、怠かったので出来なかった魂に関する検証をやろう、と思ったのです。
(えっ、えーと、何ページかな)
ぶっとい軽く五百ページは超えそうな本の目次を開くと、
(えーと、・・・うわー、これは若干黒魔法じゃなくて、バチクソにアウトやん。グレーではなく、真っ黒、先が見通せないくらいの真っ黒や)
という感想が漏れました。
何というのか、基本的にアウトな事しか書いてないよね。うん。流石だなって思いました。
うへぇ、人間を甦らす魔法、死んだ人間の幻影を見せる魔法って怖え、てかやべぇ。
「倫理観とか道徳とかないのかな?」
ふと、疑問を呟くと、更に疑問が湧いてきた。
・・・てか、此処に書かれてる魔法って誰が作ったんだ?
使わん過ぎて忘れてたけど、精霊言語だとか、魔術言語だとかはどうなってるんだ?
精霊と呼ばれるレイの同類が作ったのか、はたまた人間が作ったのか・・・
「・・・分からん。一切合切分からない。・・うん、無理やな」
書かれている魔法の書き方も含めて、何にも情報が分からない状況で考察していた自分に嗤いが漏れそうだ。
「えーと、魂については・・・。結構早いページだな」
探していくと、どうしても声を漏らさずに居られなかった。
最初に気づけなかったのが不思議でしかないのだが、魂に関するページは十五ページだった。
(さて、どうやって書いてあるのかな?)
普通に読める字で書いてあって欲しいな、との思いでページを開いた。
そして、
「はあ」
溜息を漏らしながら、私には読むことの出来ない字を見つめた。
分かったかも知れないが、書かれていたのは精霊さんの文字であった。
「さて、どうしたものかなー?私、このタイプの魔法は使った事がないぞー」
今まで使った事あるのは、人間の言葉で書かれたものと、魔術用の言葉、それと詠唱なしのもののみの為、使い方が一切、本当に一切合切分からなかった。
「使うのかあー。使わないと思って、練習してないのだけど・・・。えーと、魔力を辺りに放出して、寄ってきた精霊に代わりに読んで貰うんだっけ・・・」
昔教えられたやり方を思い出した後、
「レイ、来て下さい。早急に」
と空に声を漏らした。
そして、四秒後くらい、
「しっ、失礼します」
部屋に声が木霊した。
「ありがとうございます。レイ。来て貰って早速で悪いのですが、貴方は精霊の言葉は読めますか?」
「せっ、精霊の言葉、ですか。読めます・・・何となくですけど」
「あれっ?貴方って、精霊なのでは?」
「あっ、その、ですね。・・・何となくは分かるのですけど、しっかりとそのっ、内容が詳細に分かりはしない、というか。ちゃんと読めるわけでは、ないというか・・・」
色々と言葉選びに迷っているようだった。
「えーと」
声を漏らしながら、少しだけ
(・・・分かりづらい。意味は分かりはするのだが、理解は出来ないって感じか)
という様に考えて、何となく状況が分かった。
「えーと、それで肝心なことなのですが、魔法は発動させれますか?イエスかノーで答えて下さい」
「たっ、たぶん『イエス』です」
(よしっ、やっぱり仲間にしといて良かった!)
過去の自分の選択に感謝をしつつ、
「そうですか、・・・それで、質問です。これって、発動できますか?」
魔法書をレイの前に広げた。
そして、帰ってきた返答は、
「はっ、はい。たぶん・・・出来ます」
と言う物であったのだが、
(若干、不安げだな。ナニカ不安要素でもあるのだろうか?)
徐々に小さくなる声量に疑問を抱いた。
「何か不安でもありますか?」
「そのっ、えーと、古い言葉なので、少しだけ不安、です」
「古い言葉、ですか?」
「たぶん私が生まれるよりもっと前の時代の物、です」
「へぇー。貴方はいつ生まれたのですか?」
「・・・大賢者さんよりは前です。詳細は忘れました」
(大賢者様より前か・・・それって、何百年前の話なんだ?)
取り敢えず分かりそうにないので諦めることにした。
(ていうか、この魔法書ってそんな古い魔法取り扱ってるんだね。驚き)
等と考えていると、
「・・たぶん、ですけど、原初の精霊様が生きていた時代のものだと思います。はい」
情報が追加された。
「原初の精霊、ですか?・・・ていうか、精霊って死ぬんですか?」
「ほんのちょっと寿命が長いだけで、この世に生まれ落ちたものなので死はあります」
「へえー、それで原初の精霊って?」
「最初の精霊様です。二つに割れてた世界を繋いでたそうです」
(何か面白そう。・・・でも、魂の方が本題やし・・・えーと、後で聞こう)
大変に興味があるのだが、取り敢えず後で聞くことにした。
「えーと、本題に戻しますね。えーと、これを使って貰って良いですか?」
魂を見る魔法、『霊視』と銘打たれた魔法を指し示しながら彼女に問いかけ、
「もっ、勿論です。・・・ちょっと魔力を分けて下されば」
との返答を受けた。
「どうやって分ければ良いですか?手でも握って、渡せば良いですか?」
「ただ魔力を出して下されば、拾います」
「あっ、そんな適当なんですね」
という感じに、魔力の渡し方も決まりました。
そして、
「いきますねー」
「どっ、どうぞ」
随分と雑ではあるが、魔力を出した。
・・・昨日の減らした分が回復しきってないような気がした。
ちょっとだけクラッて立眩みもしたし。
えーと、目眩も治り始め、視界が良好になってきた。
だが、目の前の景色には変化がなかった。
(まあ、魂を見る魔法なんだから当然か)
心中で呟きつつ、自分の胸の辺りを顔を下げてみた。
そして、魂については記憶通りで、複数個見えた。
一つの大きめの物を下敷きに、大小様々な物が乗り掛かっている。前回と相違はない。
・・・・いや、若干の相違点は見つけた。
記憶と照らし合わさなければ気付かなかったのだけど、どうやら下敷きになってる魂が一回り程度だが大きくなっていた。
(これが私なのか?)
ちょっとの疑問を抱いたのだが、よく分らなかった。
果たして一度死んだと思われる人間の魂は、成長するのだろうか?
はたまた既に成長することはあり得ないのだろうか?
「・・・分からん」
小さく声を漏らし、魔法を解いて貰うのだった。
私は一番大きいものであるのか、それとも沢山ある有象無象達の中の一つなのか。
・・・身体、思考を操作するのが、最も大きな魂であると考えるならば、前者になるだろう。
だが、大きな魂に人格があり、私に身体と思考を委任してる可能性も捨てきれない。
本当にどっちなのだろうか?
何故に十五ページにしたの?
って気になる人も居ると思うので、説明するとタロットの大アルカナです。




