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第328話 忌み嫌われてるってのは分かります。

 昨日、やってくるはずであったお父様達を待つために、ずっと屋敷から出られませんでした。

 今日も同じになるかなー、お父様達まだ来ないし、と思っていたのですが、早朝に手紙が届き、アリアさんから渡されました。


 内容は、

『すまない。諸事情により、到着が遅れる』

 ってのをちょっぴり長く書いてある物でした。


「・・・諸事情、諸事情って何だよ!」

 文中では一切詳細が語られない三文字に声を出す。

 意味が分らない。普通、遅れるのだったら理由をしっかりと書くものではないのか?


「何かあったのかな・・・」

 ふと呟き、

「あっ、私、馬鹿すぎる」

 と気付いた。

 何かあったのだから、遅れているわけで、それが分かっているはずなのに、疑問を漏らすなんて、なんて馬鹿なのだろうか。


(何があったんだろう。諸事情って・・・)

 起きたことを考えようとした。

 だが、

(最近の領地の事なんて知らないし、絶対に思い付くことは出来ないな)

 と思ってしまったので諦め、

「取り敢えず、お父様、諸事情の解決頑張れー」

 今頃、問題の解決に奔走している、・・かも知れないお父様を応援するのだった。


「・・・さて、今日は何をやろうか?」

 屋敷で待機する必要がなくなったので呟く。

(別に帝都で遊びたい、って感じも今日はないし・・・)

 色々と考え、そして、

「学院、行くか」

 御者のおじさんとかに迷惑を掛けるのは申し訳ないのだが、本日はまだまだ時間があるのに加え、暇つぶしを思い付くことがなかったので、学院で調べ物をすることにした。


 アリアさんに、

「申し訳ありませんが、今から学院に行く事って出来ますか?」

 何時もよりちょっとだけ遅い時間のために、申し訳なさを感じながら言うと、承諾の返事が普通に下り、少し待ちはしたものの普通に学院に登校する事が出来た。


「何時もありがとうございます」

 御者のおじさんにお礼を言い、図書館の方に歩いた。

 うーん、ふと思ったのだが、研究室とかには『魂』について研究してる部屋はないのかな?

 調べて、見つけることが出来たら、入ろうかな?

 ・・・でも、大抵は高等部から進学した研究員の人達だよな。

 ・・少しは高等部の人も居るよな。・・・中等部の人は居るのか?


(やっぱ、やーめよ)

 先程考えた研究室についてはやめることにした。

 ・・・何て言うのか、恥ずかしい、というか、怖い、というか何というか、そう言う。はい。


 さて、そんなこんなで、図書館に到着しました。

 何時も座ってる席の辺りに行くと、

「やっ、エミリーちゃん」

 先に居たアッシュが声を掛けてきた。


「どうも。アッシュさん」

「渡した本、読んでくれた?」

「・・・あっ」

「忘れてた?」

「アハハ、すいません」

「いいよ。いいよ。いつでもいいよ」


(申し訳ないな。えーと、何時くらいで読みきれるかな・・・)

 少しだけ逡巡し、

「えーと、一週間後。一週間後には神に誓って絶対に返します」

 彼女に返す日を示した。


「そこまで重く考えなくても良いよ。あれくらいは」

「貴女に取ってはそうかもしれませんが、私にとっては絶対に『返さねばならぬ』と思うほどには重要な事なのです」


 へっ、へぇー、と若干引いた声を聞きつつ、

「それでは調べ物しましょうか」

 と声を掛け、調べ物を始めるのだった。


 _____視点変わります。大賢者さんに______


 長い銀髪を翻す生徒が図書館にやってきた。

 確か大賢者としての知り合いの娘だったはずだ。

 名前は良く覚えていないが、あの特徴的な髪色は覚えている。


 彼の娘が目の前を通り過ぎ、数秒の後小さな声が響いた。

 どうも、とどうやら挨拶をしているようだ。


 だが、その挨拶への返答はなかった。

 聞き取れなかったのだろうか、疑問には思うが違うだろう。

 此処には紙を捲る音以外響く物は無く、それに以降の言葉も返答はなかったのだから。


 私が彼の娘と対話を行う者を観測できていないのか、彼の娘に遺伝している病が原因なのか、それとも新たに病が発現したのか。

 稀代の嫌われ者の娘であることも不幸だというのに、それに加えて()()()であり、更に新たな病が発現するとは、(畜生)に余程愛されているらしい。

 試練が連続する運命などと苦痛と苦悩を並べられるほどに。


 安寧の時代に合わぬ残酷な事だ。

 本当に運命は愚かしい。


 _____視点戻ります______


(見つからない。本当に見つからない。うーん)

 幾つかスクロールを読んだのだが、めぼしい情報が見つかることはなかった。

 魂が複数あるのは前世の悪行の為、そんなものを考えるのはバカバカしい、などとやはり『忌み嫌われている』という事実を補完するだけでした。


「ハア」

 欠伸混じりの溜息を吐き、

(さて、どうしたものか・・・)

 ちょっと考えて、ふと、

(そう言えば、私に魂が複数個あるのって勘違いじゃないよな)

 と考え始めた。


 私の魔法の腕を疑っているわけでは、決してないのだが、もしかたら間違った変な魔法を使っていた可能性もあるし、それに覚え待ちがい、見間違いの可能性だってある。

(・・・魔法書探すか。・・・此処にはたぶんないよな。今の所、それに類する物は見たことが無いから)

 さて、どうした物かと、少し考え、

「決めた」

 月桂樹商店、ルナとレイへの金の工面のために訪れた店を訪れることにするのだった。

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