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第324話 不安になるからやめてくれよ。何なのですか?

 帝都に遊びに来ました。

 そして、声を掛けられました。


「えっ、あっ、はい」

 驚きながら、声がした方に視線を向ける。

 すると、そこにはこの前図書室で知り合ったアッシュさんが居た。


「何やってるの?」

「あの店の物を買いに行って貰って、今は帰ってくるのを待っているところです」


 指を指しながら言うと、

「へぇ、そうなんだ。・・・あそこって何を売ってるの?」

 と私も分からないことを聞かれてしまった。


「さあ?」

「知らないの?」

「はい」

「知らないのに買うって変な挑戦するね」

「まあ、そうですけど、気になったのですよ」


(いやあ、このまま会話をするのは辛い。雰囲気が悪くなったから、空気を元に戻すために一度距離を置いた、などと恥ずかしく言えない事を漏らしそうになる)

 と悪い予感がしたので、

「それで、アッシュさんは何をしていたのですか?」

 無理矢理な気もするが、話を変えると、

「私は、本を買ってたら、エミリーちゃんが見えてって感じ」

 手に持った袋を見せびらかす様に言ってきた。


「何の本を買ったのですか?」

「エミリーちゃんと調べてることがあるでしょう。アレについて、私も色々と調べようってね」

「その為に本を買ったのですか?高いでしょうに」

「まあ、私も気になったからね」

「その本のお金、返しましょうか?」

「大丈夫、大丈夫。さっきも言ったけど、私が気になったってのもあるからね」

「そう、ですか」


 うん、そうそう、と返す彼女に申し訳なさを抱いてると、あっ、と彼女は声を上げた。

 一体何だろうか、と疑問に思い彼女の顔を見ると、良いことを思い付いたような顔をしていた。


「どうかしましたか?」

「私、本を何冊か買ったんだけど、読み切るのに時間が掛かると思うんだ」

「そうですか」


(それがどうかしたのだろうか?)

 疑問を抱いていると、

「だからさ、エミリーちゃん。何冊か貴女に任せて良いかな?」

 と言われてしまった。


「いや、ですね。高価な物ですし、汚してしまうかもですし」

「大丈夫、大丈夫。全然汚してくれても良いよ」

「でもですね───」

「それじゃあ、お願いねー」

「あっ、っちょ」


(行ってしまった。・・・てか、足速いな)

 どう足掻いても追いつけないほどに遠くにいるアッシュに驚きつつ、

「これ、どうしようかな?」

 押しつけられた本の表紙を見た。


(・・・多いな。三冊って。・・・何冊買ったんだよ)

 明日も図書館に行くので、その時に返そう、と思っていると、

「お待ったせしましたー」

 何らかの食べ物をお買いに行かせたアースベルトの声が聞こえてきた。


「あっ、どうも。ありがとうございます」

 手渡されたことに御礼を言い、

「これって何だったのですか?」

 手に持った物について質問すると、

「パスティって言うパイみたいな料理らしいです」

 との返答が帰ってきた。


「へぇ、パイですか。・・・何のパイですか?」

「知りませんね」

「聞いてないのですか?」

「いやあ、教えてくれなくて」


(企業秘密って奴か。なるほど、そう言うこともあるわな)

 心中で思いつつも、

(さて、美味しいのだろうか)

 前世でも食べたことがないので、手に持った物を半分に割り、

「貴男に味見の仕事を授けましょう」

 と半分をアースベルトに手渡した。


「えぇ」

「さあ、食べてみて下さい」

「・・・分かりましたけど」


 若干嫌そうな顔をした彼は、溜息を一回吐くと、パスティと呼ばれる料理を頬張るのを見て、

(さて、どうだろうか?美味しかったかな)

 すぐさまに知りたかったので、

「どうです?美味しいですか?」

 と問いかけた。


「えぇ、はい。美味しいですよ。ミートパイみたいな感じで」

「ミートパイですか、分かりました」


 味見をしてくれた御礼を言い、私もパスティを頬張った。

(ふむ、ふむ。・・・うん、美味しいな。・・・でも、若干味が濃いな)

 若干塩辛かったが、結構私は好きな味であった。


「美味しいですね」

「もう一個食べます?」

「いや、食べませんよ。私、そこまでお腹が空いているわけではないので」


 半分に割っても結構大きい物を見せびらかすように言うと、

「ああ、確かに大きいですもんね」

 との返答が帰ってきた。


 そして、黙々と食べ続けていると、そういえば、と話が切り出された。


「何ですか?」

「その本なんですか?」

「本?・・・嗚呼」


 太股に置いてある本を一つ手に取り、

「これですか?」

 と聞き返すと、肯定の返事が返ってきた。


「これはですね。先程、貴男を使い走りにしていたときに、友達と会ってですね、読んどいてと言われたんですよ」

「友人、ですか?」

「はい。友人ですよ。・・・何故にそんなに疑問形なのですか?」


(もしや、私に友人などいないと思ってるのか?)

 沢山友達は居る、と考えを改めさせねば、と思っていると、

「はあ、そうですか・・・いや、勘違いだと思うんですけど・・・いやっ、まあ、たぶん僕の気のせいなので忘れて下さい」

 なんだか言い淀んだ返事が返ってきた。


「言ってくださいよ?不安になるんですけど」

「すいません。忘れてください」


(えぇ、無理なんだけど。えっ、こっわ。なに?)

 若干の恐怖を抱き、そしてそのまま、本日は帰りました。

 なんだか再度、変な雰囲気になって楽しめなくなりましたので。


 ・・・不安なのですけど、アースベルトは何を言い淀んでいたんですかね?

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