第32話 私は、裏切り者を許さねー、絶対に
風邪完全に治りました。
明日から頑張ります
『氷の公爵令嬢』
この凄く恥ずかしい呼び名の由縁を騎士団長は独り言で話し始めた。
「彼奴は、『公爵令嬢』の通り王家の血が通っておったんじゃが、
殆ど人話している姿が見られなかったのじゃ、
それに加え彼奴は、婚約者がいなかったし噂も無かったのじゃから、
貴族の令息子息達は、『担ぎ上げて利用しよう』その一心ですり寄って言っていたのじゃ、
それを全て断り続けていると『氷の公爵令嬢』という通り名が囁かれるようになったのじゃ」
と独り言を区切った。
「その話しだけでその通り名が付いたのですか、
それ以外の理由はあるのですかね」
この言葉を騎士団長に聞こえるように私は、呟いた。
「くふふ」
私の質問を聞いたであろう騎士団長は変な笑い声を上げた。
「彼奴は、水魔法の派生形氷魔法が使えるのじゃ」
騎士団長はそう呟いた。
(水魔法に派生形なんてあるんだ、
ってか、魔法に派生形があるなんて聞いたことが無いんだけど、
母様そんな凄そうな物使えたんだ、何か、私よりも主人公のキャラっぽくない)
私は、そう思って少し、ほんの少し悲しくなっていくのを感じた。
「彼奴の氷魔法は、他の者の魔法と異なり生み出す場所、形、大きさを自由に変化させることが出来たのじゃ、それが知れ渡った後数週間後、彼奴の元の家、公爵家に暗部の人間が差し向けられたことがあったんじゃ」
そう当然かのように言った。
(何で、当然かのように言ってるんだこの騎士団長は、
暗部の者って暗殺者とか、そこら辺でしょ知らんけど、それって当然かのように言うようなことじゃ無いでしょ、この世界では、よく公爵家とかの貴族が襲撃を受けるのか、怖いな)
と思ってしまった。
「その暗部の人間の襲撃の時には、誰一人と被害が出ることが無かったんじゃ、
何故だか分かるか、エミリー嬢」
誰が原因かが簡単に分かってしまう問題を騎士団長は出してきた。
(お母様だろうな、何をやったんだ、まあ、さっきの話しから考えて魔法関係なんだろうな)
その事が何となくだが分かってしまった。
「お母様が、魔法を使って何かをやったのです、かね」
私が独り言を忘れて咄嗟に付け足しを間に合わせて言うと小さく頷き
「彼奴は、氷の魔法を使い襲撃者を一人残らず氷漬けにしのじゃ、
あれには、驚いたわい、救助に向かっていった先遣隊もやられたのじゃからな」
と笑いながら言った。
(はっ、今なんて言った、先遣隊も襲ったの)
私は、自分の耳を疑い聞き直すことにしようと思ってしまった。てか、聞かなければいけないそんな気がした。
「騎士団長、お母様は、救助の隊も襲ったのですか、本当に」
と疑わしい声で独り言という言い訳を忘れて問いかけると
「本当じゃよ、奴は、先遣隊だけじゃ無く儂と、お主の父がいた本隊も敵だと思って襲ったんじゃよ、彼奴に襲われた奴はもう氷がトラウマって言うのも少なくは無いじゃろう」
と答えられてしまった。
(本当なんだ、ていうか、どうして私の両親はどちらも血の気が多い人なのかな、まあ、それは一切遺伝していないけど)
私は、そう思った。
「それで、お父様とお母様はよく結婚なさいましたね」
私が言うと
「そうじゃろう、そうじゃろう、彼奴らの婚約は、その当時救助隊の隊員は全員が驚いたものじゃ」
と笑いながら返された。
「本当にどうしてお父様達は、婚約しようと思ったのですか」
私が気になった事を問いかけると
「それは、知らぬよ、知りたければ、扉の前で聞き耳を立てて待っているであろう両親に聞くのじゃな」
そう言い残し「ワハハ」のような笑い声を上げながら部屋の外に逃げていった。
(あれ、今あの人、扉の前にお父様達がいるって言っていたよね、あの人、裏切ったの、マジ)
その事を頭が冷静に理解し始めると私は、直ぐに逃げようと思い扉の方に行こうと思ったが、扉の方に両親がいるのに加え、そこ以外に逃げ道が無い事に気付いた私は、膝をつくように倒れるような感覚があった。あと、血が冷えていくような感覚も。
(よし、そうだ、こんな時こそ冷静になろう、
前世では、美人な人に怒られるのが良いって言う人がいるとネットで見たことがあるし、
これもある意味有益なのでは)
そう思ったわたしは、
(私、前世から怒られるの誰だろうと好きじゃねーよ)
この言葉で直ぐに自分の思考を否定し
(絶対騎士団長許さねー恨んでやる)
と心の中で誓いを立てた。
何も解決策が思い付かないまま騎士団長が出て行って数秒がたった。
冷静になろうそう思い私が深呼吸でもしようそう思い息を大きく吸ったところで扉の方向に二つの人の姿が見えた。
そう、お父様とお母様の二人だ。
「ごめんよーエミリー、詰め寄られてしまって」
とどうして、聞き耳を立てて待っているかの理由を原因さんが開口一番で話した。
(どうして、お母様は、お父様に詰め寄ったんだ)
そう思っていると
「貴方のことを聞いたらこの人、戸惑ったのよ、ほんの一瞬だけど、それで私が優しく聞いたらお足得てくれたのよ」
とお母様はそう言い
「エミリー、貴方にも聞きたいことがあるの、何も文句なんて無いわよね」
そう笑顔なのか、よく分からない冷たい笑顔で言われた。
(そんなに自分の昔話聞かれたくないのかよ)
私はそう思いつつも
「はい、分かりました」
と恐怖に染まった声で答えた。




