第308話 よし!策のための罠を仕掛けるぞ!
どうも皆さん、本日も私は学校に来ています。
昨日、担任のマティアスには、
「休んでも良いよ」
的な事は言われたのだが、休んでしまったらなんだか彼の伯爵令嬢達に負けたような気がするので、本日も元気に登校している。
少しだけ顔の傷が恥ずかしいが。
腕とか足とかに付けられた傷に関しては、制服に隠れてるので特に問題はない、骨が折れているわけではないし、多少の擦り傷、打撲程度だから。
でも、顔の傷にはだいぶ問題があった。
学校の制服には顔を隠すための物が、不法侵入とか、不審者の乱入のとかを防止する為に存在しないし、さっきあげた理由で顔を隠すことは出来ないので、顔の傷に張った湿布が悪目立ちしていた。
すれ違う人達に一瞥を毎回のようにされるので大変に恥ずかしいです。
多分、貴族だってこともあるでしょうけど、私が女であるという事が大きな原因なのでしょうね。
男爵位、騎士爵位、一般の平民の男の子達が顔に傷をこしらえているのを学校内で何度か見たことがありますが、周りの人達は特に気にしている様子はなかったですし。
(くっ、女ではなく、男であれば)
とも思ったりしましたが、よくよく考えれば、私が男だったら多分これ程までに自由に好き勝手は出来なかったでしょうから女で良かったと思います。
私、お茶会とか舞踏会とかパーティーとか全て参加していませんもん。
多分、きっと私が男だったら許されなかったと思います。
まあ、今の性別でも変わらずに大きな問題ですけどね。
・・・本当にどうしようかな、社交界デビュー。
「はあ」
溜息が漏れる。
社交界デビューのこと、顔の傷のこと、こいつらに加えて、私に嫌がらせを行う最後の一人のこと、悩みの種が多すぎる。
社交界については、私の行動が原因のような気もするが、きっと違うはずだ。学院からの招待を見落としたのは私のせいではない、うん、きっと、うん。
悩みが沢山あることを悩んでいると、チャイムが鳴った。
(あっ、終わった。お昼の休みだ)
心中で思い、先生に、
「ありがとうございました」
と御礼を言い、食堂に走ってご飯を食べ、急いでトイレの中に駆け込み、人がいないのを確認した。
そして、
「レイ、出てきてください」
と小さく漏らし、現れた黒髪の少女を一瞥した。
「サヴィア伯爵令嬢の取り巻き達、彼らになんならかの動きはありましたか?」
「いっ、いえ、特にありませんでした。何もせず各々生活をしていました。一部、混乱した様子が見てとれ、一部は登校していないようでした」
「そうですか」
(一夜で新たな指導者が出るとは思えないし、もし教会から指示を受けているなら、流石にこの期間では新たな指示は出せないだろう。・・・良し!敵を一つ黙らせることに成功したな)
嬉しさのあまりに思考放棄をしそうになったが、頑張って耐えた。
喜ぶばかりでは何も変わることはないのだ、だったら考え続けるべきだろう。
「・・・今後とも彼らの監視を続けつつ、最後の一人も特定を進めてください。・・・あっ、明後日に相手方に対し、罠を仕掛けようと思うので、罠を仕掛けた後の追跡お願いいたします」
「罠、ですか?」
「ええ、罠です。一回限りの警戒心の薄い馬鹿にしか通じない罠です」
…………
はい、と言う事で自宅に帰ってきました。
今からは、明後日の罠の準備をします。
さて、準備をする前に、何をするのかを説明します。
ええと、端的に言うとロッカーに色々と仕掛けるになります。
詳しく言うと、ロッカーに開いたら開いた人に絵の具とだいぶ前に使った人の位置を追跡する、えーと、何て言うのか、自由解放軍のリーダーのカシワギさんに使ったあの魔法をぶつけて、絵の具で相手の位置が浮き彫りになるのなら、それでレイに追跡して貰って、無理だったら後者の策で追跡するっていう計画です。はい。
単純すぎて成功するのかどうか、と疑われるかも知れませんが、私的には多分成功すると思います。
今の所、こちら側からの反撃は最後の一人が教会、最初に潰した伯爵令嬢さんの人間ではなければ、行っていないはずなので、相手からはこちらは『何をしても動かない臆病者』だと思われていると思うのでね。
多分、いけると思います。というか、そう思いたいです。これ以上の策は思い付かなかったので。
・・・この作戦を思い付いた経緯とかは、伯爵令嬢さん達にロッカーが酷いことにされて、白い絵の具であってほしい物が掛けられていたことがあったのですが、そこから『相手が姿を隠していたとして、絵の具を被せれば、その絵の具ごと隠されることさえなければ、相手の位置は浮き彫りになるのではないのだろうか?』と考えて、この策は出来上がりました。
(・・・こんなもんかな、色々なまとめは)
誰かに対する説明・・・多分私の深層心理かな?まあ、良いか、取り敢えず頭の中で今回の策を纏め終え、
「ええと、絵の具、絵の具・・黒で良いか」
と色々と考え始め、
「絵の具は、黒。追跡の魔法は、前回使ってまだ飛ばし続けてる奴の流用で良いか。と言う事は、相手に付けるGPS的な物を絵の具の中に溶け込ませて───」
てな感じで色々と考えを出していきました。
そして、翌日、
「えーと、これとこれを紐で結んで、空けたら飛んでくるようにして、・・・よし!完成」
放課後に罠の仕掛けを終わらせた。
扉を開くと、立て掛けられていた重めの支柱が倒れ、支柱に付けられている紐が引っ張られ、紐が付けられた絵の具と追跡魔法が混ぜられたバケツが飛んでいく、そんな至って簡単な仕掛けだ。
良い感じの物が思い付かなかったために、バケツの勢いがそこまで出ず、大体私で言うところのおへそのまでしか絵の具が付着することはないが、まあ一般的な身長でも足くらいには付着するはずなので大丈夫だろう。うん。きっと。うん。
「よっ、よ~し!終わり。帰ろ。帰ろ、失敗したらそんときはそんときだ」
色々と心配事はあるが、成り行きに任せることにした私は、若干心配の気持ちを残しつつ、明日の成功を思い浮かべ、取らぬ狸の皮算用と言われるかもだが、捉えた者をどうしようか、と思案しつつ帰路につくのだった。
たぶん、次か次らへんで犯人さんは捕まります。主人公に。
でも、手駒編は続きます。夏休みの色々な調べごと+教会についての調べごと、などがあります。




