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第302話 久しぶりに思い出した。

 食堂で席が見つからず、ラーラ先輩に席を譲って貰った同日、家に帰ってきた私は、

「お嬢様、御手紙が届いております」

 という旨をメイドのアリアさんから言われ、手紙を貰った。


「えーと、なになに」

 部屋に帰り、適当な椅子に腰を下ろし、手紙を見る。

 手紙の封蝋は、ブランドー侯爵家の家紋だった。


(何かな。何か、いけないことしたっけ。何もしてないよな?)

 心当たりはないので、悩ましく思いつつ、

(逆に何もしてないのが問題なのかな)

 そんな事を考えた。


 現状だが、私は本当にマジで貴族らしいことをしていない。

 社交界にも出たことはないですし、学校でも殆ど会話はしていません。

 それに、学校に寄付したり、中立を維持するためだったりでヒルビア正教会に寄付したりとか、そう言ったこともしておりませんしね。


(・・・いや、これは駄目だわ。流石に、何もしなさすぎだわ。怒られるわ。これ)

 よくよく考えると、だいぶ怒られる要素があった。


「やっべぇ、どうしよう」

 怒られる可能性がある事がわかり、徐々にお腹が痛くなり始めた。

(大丈夫だよな。うん。きっとそのはずだ。・・・大丈夫だ)

 幾ら考えても怒られない余地はないが、怒られない微々たる可能性を信じることにした。

 信じないよりも信じていた方が、精神衛生上良いですし。

 ・・・それに、覚悟も必要だとは思いますが、気張っていると大変に疲れます。


「・・・よし、読むか」

 久しぶりにキリキリと弱音をあげる胃に活を入れ、前回その辺に置いたはずのナイフを探す。

 ・・・何故だか分からないが、見つからなかった。


(地味に今日、やらないといけないことあるのに時間が)

 先程まで思考の隅にすらなかったが、昨夜考えた外枠だけ銃器を作り、内部機構を魔法で代用するという方法を試さなければならないことを思い出し、意味もなく焦った。


 そして、数分間探した。

 っで、結局は見つけることが出来なかった。


「あれれ、可笑しい」


 記憶が正しければ確かに置いた場所、そこには何もないし、その辺りにも何もないのだ。

 可笑しい、可笑しい、何でだよ、溜息が漏れそうになる。

 ・・・はあ、何か代用品なかったかな、と思い、代用できそうな刃物を探そうとしたのだが、先程の調査で室内を隈なく調査した時、見つけることは出来なかったし、まず私はこの部屋にペーパーナイフ以外の刃物を持ち込んだ記憶はないので、探すのをやめた。


「はあ、創り出すしかないよな。うん」

 それが良いのだろうが、なんだか、そんな気分ではなかった為、闇魔法の倉庫の魔法、それに刃物を入れてないか、と記憶を探ってみた。


 まず、いつか創り出したナイフを思い浮かべた。

 けれども、あれは投げナイフとして全て使用し、全て折った記憶があったので、あれらについては考えるのをやめた。

 ふと、投げナイフ出来るようにしないとな、だとか、補充しようかな、等と思ったりもしたが、以降は頑張って思考領域から追い出した。


 そして、次に思い付いたのは、割れた瓶だった。

 何時かは私にも分からないのだが、確かに複数回入れた記憶はある。

 けれど、何故に”刃物”ではない物達を思い出したのかが分からない。

 確かに切ることは出来るけども、出来るけどもだよ。刃物とは違うやん。


 ・・・えーと、えーと、次は、次は・・・。

 思い付かん。えーと、何か無かったけ?

 良い感じに刃物してて、凄い良い感じの奴。


 ・・・───・・・あっ、思い出した。

 えと、えーと、何時か、何歳頃のことかは忘れたけど、水晶が付いた魔法の杖、それを手に入れるときに拾った高そうな意匠で刃こぼれもしていないナイフサイズの魔剣、ここ最近、というより拾った時以来思考の片隅置くことすら無かった物だ。


「えーと、何処に入れたっけ」

 倉庫に入れた記憶はあるのだが、正確に何処にしまったかの記憶はないので大変に頭を悩ませながら、物を探す。

 ・・・二時間と三十一分、それと多分約三秒後、やっと見つけることが出来た。


「やっとか」

 忌々しげに呟き、ナイフを手に取り、キラッと鋭く、でも何処か鈍く光る刀身に指を当ててみる。

「いっ」

 当てて直ぐ、指先に熱のような物を感じ、血の雫が滲み出てきた。


「イッてぇ」

 切った指先を咥え、鉄臭い血を舐めながら、

(ちょっと刀身が広くて厚いくらいだな。欠点は)

 と呟き、口に咥えていた指を出し、適当に服で拭き取り、机の上に投げ置いていた手紙を取る。


「お叱りの手紙でありませんように」

 と漏らしつつ、手紙を開き、一通り読んでみた。


 要点を纏めると、

 ・最近の調子どう?

 ・アルもアンリマも元気だ。

 ・夏の休みには帰ってこれる?

 ・第三子ももう直ぐ生まれそうだよ。

 って感じの内容だ。


(うーん。返事を書かないと)

 すぐに魔法の実験に取りかかりたいのも山々だが、出来るだけ直ぐに返事の手紙を書かないと忘れそうなような気が凄くします。はい。


 そうして私は、

『拝啓 向暑の──────────』

 って感じの書き出しで適当に書いていった。


 内容を端的に纏めると、

 ・調子は良いです。

 ・皆さんが元気で良かったです。

 ・夏休みは少しやりたいことがあり、ブランドー侯爵領に戻れません。

 ・新しい家族が増えることを嬉しく思います。

 etc.って感じに書いていき、アリアさんに手紙を渡して出して貰いました。


 ・・・よし、やること終わったな。

「やるぞー!やるぞ!」

 私は昨日考えた魔法の実験を開始するのだった。

魔剣くんについて。

コヤツ、どっかで主人公は使わず部下にあげる、的なのかきましたが、出したんなら折角だし使おうぜ、精神で使うことにします。まあ、杖で殴る方が多いですが。


・・・元々コイツ、可哀想な奴なんです。

第三部の繋ぎ+第二部の補足のために突っ込まれた『自由解放軍編』コイツのせいで役割が奪われちまって、可哀想な奴なんです。

・・・ちな、コイツの元の役割は、主人公が人生で二度目の殺人に使うはずでした。

コイツの犠牲者は、攫われた主人公を買おうとした人です。

あっ、一回目は、主人公を攫った人を瓶で殴りつけて、割れた部分で刺しまくる予定でした。

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