第297話 杜撰で幼稚で、稚拙な計画
「はあ、疲れた」
学校が終わり、私は疲れ果てたように溜息を漏らした。
「先生。先生。せんせー」
私は瞼を固く閉じ、うわごとのようにモンド先生を呼んだ。
数日前、色々問題はありはした物の洗脳の魔法を使おうと色々試行錯誤をした。
そして結果としては、失敗した。
その後もずっと頑張ってやろうとした。
でも、失敗の連続だった。
精神干渉をする『精神』その概念が理解できなかったのだ。
簡単に言うと、実際に物質として存在しないから、干渉、観測の仕方が分からないのだ。
だから、先生に教えてもらおう、と思ったのが現状。
「せんせぇ、せんせー」
ずっと呼んだ。
だが、
「あれ、来ないな」
一切来なかった。
「無視か」
小さく呟き、
(諦めるか。精神干渉)
無理な気がするし、普通に口だけでもしっかりと脅迫できる自信があるので、非常に惜しいのだが諦めることにした。
「一人で幾ら考えようとも、成功する様子がないしな。しょうがない。しょうがない」
なんだか自分が嫌になる気持ちが湧いてきたので、言い訳の言葉を吐露し、
「・・・洗脳なしなら、舞台も必要だし、演出も必要になるよな。ついでに、予防線も・・・」
考えている物は、脅し文句だけな状況のため、必要な物を数える。
そして、
「面倒くさすぎ」
と声を漏らし、冷たくなったお茶を飲む。
「っにが」
冷めて強い渋みを持ったお茶に声を漏らしつつ、
(いっその事、中立の立場を捨てでもやろうか・・・良いかもしれないな、ブランドー侯爵家から独立して、領なしの騎士だとか、男爵として公務員やるの)
冗談を心中で並べる。
「・・・放課後の少し前に迷子になった所」
先程の話に戻し、脅迫を行う舞台を決め、
「そう言えばだけど」
最近見ない先輩のことを頭に浮かべる。
「ええと、・・・ラーラ先輩と会ってないな。最近、一切」
最後にあったのだが、だいぶ前だったの為、
(会おうかな。明日とか)
と心中で述べる。
「まあ、良いや。一端」
思考が大きく逸れたのを感じ、
「ええーと、後は演出、予防線」
まだまだの物を考え、思考を戻す。
「演出、演出・・・演出、演出」
壊れたレコードのように同じ言葉を繰り返しつつも、
(演出はそうだな。容易に出来るものに加え、ダメージを与えられそうな物だよな・・・)
敵方を出来る限り嫌な気分にさせる方法を考える。
そして数分後、ついに、
(忠臣からの裏切りって、ダメージ高いかな)
と思いついた。
詳しく説明すると、貴族の子女が学院に連れてくると言う事は、そいつが相当に優秀で、それに加え子女もしくは、その当主のお気にの可能性が高い。
まあ、適当に選出された、子女の子は好きではない、このどちらかならば作戦は失敗終わるが・・・。
それは、まあ、さておき、その従者から裏切られたら相当にダメージはあると思うんだよ、精神の。
だからね、その従者に、
「君の親、どうなっても良いのかな?」
だったり、
「お嬢さんがどうなっても知りませんよ?」
とかの脅迫をし、寝返ってもらおうかなって思ったのだ。
・・・畜生かもしれないが、こも作戦は大変に合理的なのだ。
まず一つめ、令嬢の精神に裏切られたことによるダメージを与えられる。
次に二つめ、主犯の令嬢と、実行犯が仲違い起こして共倒れを狙えるかも。
最後に三つめ、多分裏切りで従者は解雇されるので、証人がいなくなって、権力の差で私の脅迫した事実、をなかったことにできる可能性が高まるから、ハッピーって感じに凄い合理的なのだ。
「ええと次は、予防線か。難しいな」
適当ではあるが、他の物を決め、最後の一つとなった。
(従者・血縁者とかだったら、ちと言い分が弱いよな。・・・私と同じか、それ以上の力を持ってて、それに加えて騙すことが出来る、もしくは私のために嘘を吐いてくれる人)
当てはまる交友関係のある人を考えてみた。
けれども、
「いないな」
友達が居ないために、そんな人は居なかった。
「マジかぁ」
(裏切られるのは怖いし)
最悪の想定のために、赤の他人は頼ることが出来ない。
「・・・もういいや。いっそのこと、予防線を張らずに簡単に責任を追及できるようにするか」
ともしもの時、責任追及から逃れるための道を完全に捨てると同時に、
(稚拙で杜撰、そんな印象を相手に抱かせ、出る杭は打たれる、とは言わないけど、馬鹿なガキ、と思わせることも重要だろうさ)
頑張って正当性を持たせていった。
若干、未だに納得してない、そんな感じが不思議にした。
だから、それに、と言葉を続ける。
「最悪責任追及が激化したのなら、飛べば良いんだ」
と。
(・・・ちょっとだけ話がズレてるな)
先程の発言は、だいぶズレているように思えるので、更に付け加える。
「それに、公に批判をする事はできないしな。だって、そんな事をすれば嫌がらせに関することも露呈するわけだし・・・」
これもまた何処かズレた発言を。
そうして、また付け加えようとしたところで、
「・・・まあ、良い。もう良い」
とてつもなく面倒臭くなったのでやめ、
「取り敢えず」
決めたことを纏める。
「まず、下準備で、主犯格の主導してる人の従者に脅迫を行い、手紙でも渡して、従者含め、放課後の体育館からちょっと逸れた林の中に呼び出す。そして、従者を裏切らせ、取り押さえて貰って、そこからは脅迫をして・・・」
言葉に出すと改めて思う。
稚拙で幼稚、杜撰でどうしようもない計画だ、と。
「・・・だが、まあ、良いだろう。物事における計画は、往々にして崩れ去る物なのだし、それに失敗し、不幸が連続して、飛ぶことになっても、ただの民として生きれば良いのだ。瘋癲のエミリー、とでも名乗ってな」
主観でも、阿呆らしい事を呟くのだった。
余談。《この作品中最強は誰?》について。
書いたような気もしますが、書きます。
ええと、一番強いのはモンド先生こと深淵の神様です。
その次に作中登場予定のない神様達は続きます。
人間で一番強いのは、大賢者様です。
主人公は、比較的強めだけど、程度です。




