第292話 ほほう。楽しいな。ハッハハ
若干、下ネタあり
皆さん、私は私に対し、嫌がらせをしている人々に”注意”の手紙を書き、それを送りつけました。
(これでなくなったら良いな。嫌がらせ)
そして、楽天的思いで四日程経ちました。
さて、嫌がらせはなくなったのでしょうか?
皆さんは、どう思います?
ええ、ええ、なくなった、と思いますよね。
はい。ええと、結果としては否でした。
(くっ、どうして!どうして、いじめがなくなるどころか、多少激化したんだ)
嫌がらせがなくなる、もしくは若干の沈静化が起きる、と思っていた私は、自分の席で密かに頭を抱え、その直後、
(てか、私、誰に話しかけてるんだよ。馬鹿かよ)
先程まで自分が、頭に浮かべていた言葉の数々を切り捨てるように漏らし、
(可笑しい。意味が分んないよ。何故。何故?)
ふざけたようで、本気の数々の疑問を頭に浮かべる。
勿論、この疑問は嫌がらせについてである。
断じて、誰に話しかけていたのだろうか、という疑問ではない。
・・・まあ、何というか、おふざけは終わりにして、先程までの疑問を纏めると、
(普通、自分たちがやっている、それがバレた状態でやるかよ)
と言う物だ。
彼ら、彼女らに送った手紙には、一応はしっかりと私の名前を書いていた。
だから、奴らは自分の行為がバレている、その事実を知っているはずなのだ。
(私、あいつらより爵位上だぞ。ヤバすぎだろ、決死の覚悟で嫌がらせしてるのか?・・・それか、もしかして私、とんでもなく舐められてて何も出来ないと思われてる)
嫌がらせの覚悟が決まりすぎていること、それに若干、・・・いや、だいぶ恐怖を抱きつつも、
「次は」
(警告だな。若干、脅迫気味にもなるけど、今回はブランドー侯爵家公式の手紙を偽ってやろうか。・・・いや、バレたら不味いからやめとこう)
はやる気持ちを声に漏らす。
「うーん」
(内容はどうしようかな。えーと、拝啓────────)
そんなこんなで、手紙の内容を考えきり、家に帰った私は、学校で考えた内容を手紙に書きました。
そして、その後は特に何をするでもなく、本を読んでいつも通りに寝ました。
…………
今日も今日とて出校。
(どんな嫌がらせしてあるかな)
胸を躍らせながら、ルンルンとした気分で学校の校門を潜る。
最近、具体的には今日の朝に思ったのだ。
いちいち嫌がらせを真に受け、悲しい気持ちになるよりも、折角なら嫌がらせを楽しんだ方が良いと。
だって、受けた度に悲しんでいたのなら、流石に精神が持たないのだ。
それに、相手が真剣にこちらを悲しませようと動く様、頑張って仕掛けてくる嫌がらせ、それらを考えると自然と嘲笑が漏れ出し、大変に楽しい気持ちになるんだ。
(さて、どんな物かな)
色々と考え事をしつつも、歩は着実に進め、私はロッカーの前に着いた。
(どんな感じになってるかな)
ワクワクとする気持ちを抑えつつ、周りを確認する。
(よし、居ないな)
周りを雑にだが、見渡したので、
「さあ」
(ご開帳)
ロッカーの扉を開き、
「うわお、結構凄い。・・・でも、昨日の方が凄かったな」
感想を漏らす。
今回は、中に入っていた物を破いており、時々よく分らない液体が掛かってる。
多分、絵の具だと思う。
ていうか、絵の具だと思いたい。特に白い液体とか。
(・・・イカ臭くないよな。大丈夫だよな)
気持ちの悪い事を考えつつも、
「てか、あいつら隠さなくなったな」
ロッカーの背に大きく描かれている奴らの象徴を見る。
(円を貫くように縦に走る一本の線。・・・雑だなあ、円とか楕円じゃん)
とか思いつつも、
「なんだろうこれ」
グチャグチャに千切られ、彩られたロッカーの中で一際異彩を放つ物を手に取る。
異彩を放っていた理由は、唯一殆ど汚れてもなく、千切られてもなかったからだ。
(・・・地味に手に持って良かったのだろうか)
疑問と、若干の恐怖が湧いたので、手に取った物をロッカーの中に戻して考える。
(手紙かな、だとしたら内容は何だろうか。謝罪?・・・な訳ないか。やってることと矛盾してる・・・)
置かれていた物の内容を考えつつ、
(毒、とか仕込まれてないかな)
その心配をして、手をハンカチで拭き、カバンの中から白いハンカチを取り出す。
あっ、ちなみにこのハンカチはお父様から入学祝いでもらったものです。
純白で、手のひらの腕よりのところに小さく家紋があります。
閑話休題、話を戻そう。
私だったら、多分毒仕込むけど、大丈夫かな?
気化するタイプとか。
・・・何仕込むかな。リシンとかかな?
嫌な想定をしつつ、
「なになに」
一度ロッカーの中に戻した手紙を再び手に取り、その封筒を破る。
わざわざナイフとかを持ってきて、封蝋を壊さないように気を張ったりするのは面倒だったのだ。
・・・ちなみにだが、封筒に使われていた封蝋は、教会の紋章が思いっ切り描かれていた。
(バレてるって分かってるのかな。それとも単純に、教会がバックに着いてるんだぞ、って脅す意味なのかな)
彼らの行動の理由を考察しつつ、
「えーと・・・くっふ」
彼らからの手紙を読もうとしたところで、どうしても笑いがこみ上げてきてしまった。
何故か、それは至って簡単で、一目見ただけで面白かったからです。
手紙の紙を開くと、何と驚き赤い大文字で、
『死ね 売女め』
『死ね死ね死ね』
やらなんやらと、罵詈雑言が沢山書いてあったのですよ。面白い事に。
「ハッハッハ」
(こんな手紙マジで送る人居るんだ。笑える。・・てか、良くこんなに沢山悪口思い付くな)
とんでもなく笑える仕掛けに、笑いを漏らしつつも、
(こっちからも御礼をしないとな。しっかりと御礼を)
警告で相手がやめなかった時、その際の脅迫の言葉を考え始めるのだった。
・・・あっ、この後は特に何もなく学校生活が始まりました。
物が隠されるなどの些事はあるにはあった物の、大変に楽し・・くはないな。普通でした。
警告の手紙は普通に前回と同じく、彼女らの従者に頼みました。
「渡さなかったら、どうなるか分かってますね」
と脅したうえで。
前回も届けてくれたので、今回も届けてくれるだろう、と思ったのだ。
ちなみに、届けてくれたかどうか、それを知ってるのは、レイに監視して貰ったからだ。
あの子凄いよね。
複数人居るかのように、何人も監視できるのって。
(ふむ。・・あの子、結構これからも重宝しそうだな)
色々と彼女の今までの功績を考え、未来のことをちょっと想像した。
明るい未来があると良いな、と思って。
小話
したことあるかも知れませんが、教会の象徴について。
えーと、円の中心を垂直に貫く一本の線ですね。
本当は十字架を使ったりしたかったです。
けれど、正教会+十字架は完全にキリスト教なので、言い逃れが出来ないのでやめました。




