第279話 何処行ったんだ?・・・はあ、阿呆らしい
「うーん」
今日も今日とていつも通りに学校に登校した私は、椅子に腰を掛け唸り声を上げる。
(さっきまであったよな。机の上に。何処行ったんだ)
二限目が終わり、付けの上に筆箱を出したままおトイレに私は言っていた。
それで、帰ってきたときには、不思議な事に筆箱はなくなっていた。
(うーん。今週二回目か)
もう一度どっかに行ったノートを思い出しながら呟き、
(多分、犯人は1週間前に、私の制服を損壊した奴だよな)
と考えながら、辺りを見渡す。
だが、まあ当然、私の筆箱を持っている人などいるはずも無く、
「どうしようかなぁ」
と更に頭を悩ませることとなった。
創造魔法で創り出すこと自体は出来る。
だが、なくなった、これがだいぶ厄介なのだ。
何故ならば、創り出した後、もしなくなった筆箱が見つかったとしよう。
分かると思うが、そうしたら、色々と面倒な事になってしまうのだ。
まあ、何て言うのか、言い訳が面倒なのだ。
誰かに、何か言われる可能性もあるからな。
・・私、友達いないから、可能性は限りなく低いのだが・・・。
えぇと、まあ、可能性を減らすのが大事だから。うん。
「さて」
(まあ、色々置いといて)
思考を切り替えるために、声だったり、心の中だったりで呟き、
(どうした物かな。私の筆箱。ゴミ箱に捨てられてたりしたら、色々面倒だよな。多分、犯人捜しが始まる。・・・一番良いのは、売り飛ばされているか、もしくは川とか池に捨てられてるパターンだが)
と面倒な想定をしながら、
(取り敢えず、ペンとか重要な物だけは創っておくか。授業で、筆記用具を出さないと、色々言われそうだし)
こう考えた。
「よし」
小さく漏らしながら、鞄に手を突っ込み、開いた。
そして、開いた手の中にペンを創り出し、机の上に置く。
そんな事を繰り返し、重要な道具を一通り出した。
(ふぅ。終わり。それじゃあ、真剣に考えるか。誰が私にこんな事をしたのかを)
頭を必死に動かし、過去の記憶を甦らせた。
そして、
(皇子殿下関係か)
心当たりを見つけてしまった。
(皇子殿下に図書館に連れて行ってもらったあの日、私達を付けて、私に奇妙な視線を向けてきた奴がいたはずだよな。多分、奴か)
奴、犯人の目的を考えると、
(・・皇子殿下目的か)
とすぐに目星を付けることが出来た。
(うん。たぶんそうだよな。一端これを土台にして考えるか)
更に考えを広めようとしたところで、
『ガラガラ』
と扉が開く音が鳴り、
「座りなさい。始めますよ」
国語の先生が入ってきた。
(・・・あれっ。まだ放課の時間あるくね)
時計を見て思っていると、
「先生!まだ休み時間は、終わっていませんよ」
と言う声が教室から湧いて出た。
国語の先生は、その声を聞くと、
「はい。そうですね。それがどうかしました」
当然の事に言い、
「貴方達みたいに授業態度の悪い子達はね、他のクラスよりも早く授業を始めないといけないのだよ」
早口になりながら、諭すような馬鹿にするようなことを言ってきた。
(私達、態度悪くしたことあったか)
疑問に思っていると、
「一体全体何を申しているのですか?先生。私達が、授業をしっかりと受けなかったこと、そんな事ありましたでしょうか?」
先生に対し、その言葉が飛んでいった。
「してるでしょう。今だって現に」
先生はヘラヘラとした様子で、答えを返すと、
「一体何が、先生の言う『授業態度が悪い』に属するのか、それを説明して頂いても宜しいでしょうか」
皇子殿下が珍しく声を上げた。
(珍しいな。皇子殿下が声を上げるなんて)
と感じながら、先生の反応を見ていると、はあ、と欠伸を漏らし、
「皇子殿下と、その他の方々。私が、言っているのはそういう所です。そういう私のような、貴方達より立場が上の人間に対し、疑問を呈し、話を聞かず、邪魔をする。そういう所ですよ。貴方達みたいな子供は、私達のような立場が上の大人に、ただ従っていれば良いのですよ」
若干怒ったような声で言ってきた。
(うえぇ。怒るなよ。血圧上がるぞ)
ふざけたことを呟きながら、
(その思想はやめた方が良いと思うけどな)
と思っていると、
「先生。それはこの学院の理念より、逸脱しているのではないでしょうか?」
この言葉が先生に投げかけられた。
(確か、『平民、貴族どんな立場の物であっても、知識を学び、深め、探求する者は全てが平等である。
自由に思|案し、発言し、皇帝、国家、行政、臣民の為によりよいことを成せ。
自由と探求、それらを誰も犯すことは出来ず、犯すことは許されない』だっけ)
教育の基本理念を思い、
(多分、皆が言ってるのは、『自由な思案と発言』の部分と『自由と探求は犯すことは許されない』の部分なんだろうな)
クラスメイトが反論している部分を思う。
反論が成されてから、数秒間先生は、石になったかのように固まり、
「チッ」
と舌打ちをし、
「そうですか。そうですか。よく分りました。よーく分かりましたよ。貴方達は私の授業を受けたくないのですね」
飛躍した考えを見せ、
「それでは私は帰らせて頂きます。それでは」
入ってきた扉を勢いよく開け、壊れそうな程の勢いで閉めた。
(うわーお。スゲーな)
若干、耳鳴りがする事に驚きつつも、
(どうしよ。自習でもするか。えぇと、今はどれくらいやったけ)
と呟きながら自習を始めた。
そんなこんなで数十分間、クラスメイトの皆が大人しく自習をしていると、勢いよく扉が開かれ、
「授業を始めます。はい。起立。気を付け。着席」
不機嫌そうに先生が戻ってきて、如何にも面倒くさい、という態度で授業を始めた。
授業は正直言って、受ける意味を感じなかった。
大半が意味のない嫌みだったのに加え、重要であろう所を飛ばしたり、無駄なところを深掘りしていたりしていた。
(はあ、阿呆らしい)
私はそう思わざる終えなかった。
第7話 闇の神様
の最後に文章追加しました。
一応は伏線なので、気になる人は見てみて下さい。
タグ『中世』を『定義的には中世』に変更。
技術力的観点では既に逸脱し始めておりますが、宗教的、文化的、経済的に考えた結果、ギリ中世の暗黒時代の定義には当てはまるのでは?と思いました。




