第275話 利益、不利益を鑑み、夢想をする。
昨日、色々あって報復を完了した私は、
(ほうほう。知ってるー)
と呟きながら、普通に授業を受けていた。
・・・本当は、出来ることならもう一、二日くらい休みたい。
だが、それは出来ないのだ。
何て言ったって、私の通う学校は休みは月一だからね。
(嗚呼、ふざけてる。休みくらいもっとあっても良いだろう。だってさ、一日程度で一月の休みは取れないだろ。普通に考えて)
文句を喚きながらも、適当に板書された内容、教師が話す内容をノートにメモる。
ちなみに今習っているのは、社会科の歴史だ。
まあ、皇族の発展とか、貴族に関するお話だ。
たいして楽しくはないぞ。
だって既にもう覚えてることだからな。
そんなこんなで、時折挟まれる雑談以外はたいして楽しくはない、そんな授業が終わり、それ以降にあった二,三,四限の授業もあっ、という間に終わり、昼放課になりました。
(よーし。ご飯食べるぞー。沢山食べるぞー)
心中で意味のない言葉を呟きつつ、何時もの素朴なご飯を貰い、適当な席を探した。
(良い感じの席。良い感じの席)
呟きつつ、食堂を見渡す。
食堂には人が沢山居た。
でも、ぼっち飯は殆ど居なかった。
(くっ、私。悲しい奴だ)
いつも通りなのだが、いつもより不思議と淋しさを感じ、
(誰か知り合い居ないかなー。マリーちゃんとか、ロナルド君とか)
人を探すために再度食堂を見渡す。
すると、
(あっ、ラーラ先輩だ)
私が珍しくも関係がある先輩が、一人寂しそうにご飯を食べていた。
(よし、凸するか)
覚悟を決めるために宣言し、
「あっ、あのぉ~ラーラ先輩」
彼女が座っている席に近づき、ちょっと小さくなってしまった声で話しかける。
・・・小さくなってしまったのは、環境のせいだ。
私は悪くない。私は決して悪くないのだ。
私のせいでは決してないのだ。神に誓っても良い。
絶対に、絶対にコミュ障のせいではないのだ。
だって、私、貴族なんだぜ。
そんなのあったらまともに外交とか、茶会とか出来ないだろ?
まあ、私そんな貴族らしいことなんぞ殆どやった事がないのだが。
私が色々と考え、ちょっとだけ恥ずかしい思いをしていると、
「どうしたの?エミリーちゃん」
と私が続きを言うのが遅かったせいなのか、問いかけてきた。
「あっ、えと。一緒にご飯を食べたいな、と思いまして。・・構いませんか?」
焦りながらアタフタしないように、出来るだけすぐに答えると、
「吾~うん。そうだな・・・」
若干気まずそうに悩んだ様子だった。
(やめた方が良かったかな。何か嫌そうだし)
後悔をしながら、彼女の回答を待っていると、彼女は椅子から立ち上がり、私の耳元で、
「ごめんね。エミリーちゃん。いいよ、と即答したいけど・・・。私は貴方と違って平民だから、貴方が私と付き合ったことで馬鹿にされるかも知れないから・・・・。ごめんね」
と申し訳なさそうに言ってきた。
(ほうほう。平民と貴族が関わると、私の品位が疑われて、他の貴族連中に馬鹿にされると言いたいのか)
彼女の言っていたことを纏めて、私は考える。
(まあ、確かに品位が疑われるのは不味いな。今後の貴族としての活動にも、制約が掛かるかも知れない。金で買えない物、得られない物を失うのはちょっと不味いか)
彼女と一緒にご飯を食べるべきか、そう頭を悩ませていると、
「それに、私。教会の人だから、更にエミリーちゃん。貴方を貶す話題になるかも知れないの」
ラーラ先輩は注釈をするように言ってきた。
(教会って事は、えーと。ヒルビア正教会か)
と考えた所で、
(確かにそれだったら不味いな)
私は更に頭を悩ますことになった。
今まで学校に来るまでは知らなかったのだが、ヒルビア正教会は、正直言ってだいぶ嫌われている。
平民や奴隷は別だが、貴族と皇族がだいぶ嫌っているのだ。
理由としては貴族院、元老院色々な組織に口出しをしたり、議席を強制的に作ったりしていることや、大昔、聖戦とか言って侵攻された事が原因らしい。
地味な話だが、お父様含めブランドー侯爵家もヒルビア正教会側の人間のため、色々と私は変な目で見られている。
(まあ、でもまだ、ギリッギリ貴族として認められては居るんだよなー・・・。たぶん、今此処で関わったら、私、完全に敵になりそうだよな・・・。聞く話によると、教会への風当たりが年々強くなってるとも聞くし・・・)
悩ましい。非常に悩ましい。
私は悩みに悩み抜き、
「そうですね・・・」
言葉を発しつつも悩み、結果、
「また何時かご飯を一緒に食べましょう。先輩」
一人の惨めさをなくせる、というメリットの割にデメリットが、大きすぎるためにそう言うしかなかった。
(申し訳ないことをしちゃったな)
心中で思った私は、
「先輩。いつかは絶対に一緒に食べましょうね。それじゃあ」
と彼女に言い、だいぶ離れた席に腰を下ろし、冷めたご飯を急いで口に居入れた。
(やっべぇ、早く食べないと遅れる)
という焦る気持ちと、
(何時か本当に一緒に食べれたら嬉しいな。先輩と。来るか分からないけど)
先輩への申し訳ないという気持ちと共に、色々とあるかもしれない未来を夢想するのだった。
主人公関連の宗教。
ブランドー侯爵家はヒルビア正教会です。
勿論、主人公もです。
ですけど、どっちかというと主人公は、科学や魔術を信仰しています。
ちなみに、ブランドー侯爵家が正教会を信じている理由は、お父様が元々第三の勇者の仲間だったからです。
あっ、あとちなみに、勇者は第一から第三までで信じてる宗教違います。
一番目の人は、武神さん。
二番目の人は、まだ秘密。言えるのは大賢者様やら、後の主人公が信仰します。
三番目の人は、ヒルビア正教会さんです。




