第273話 あ~あ。見くびりすぎだったかもな。反省。反省。
「ひぃ、イッてぇ。痛すぎる」
私は布に滲む血を見ながら呟き、
「てか、なんでコイツは起きないんだよ。死んだフリでもしてるのか」
疑問を呟きながら、黒いドレスに身を包んだ黒い髪の少女を見つめる。
(地味によく怪我しなかったな。コイツ)
心中で思い、
「気付け薬でも使ってやろうかな」
何時までも眠られていると困るので呟きながらも、
(炭酸アンモニウムだっけ。覚えてないけど、確かクッソ危なかったような気がするんだよな)
昔どっかで聞いた話を思い出したため、
「気付け薬はやめるか。死なれたり、意識障害起こされたら困るし」
と呟く。
(どうした物かなぁ)
心中で思いながら、彼女の胸ぐらを掴み、持ち上げ、持ちあっげ、もちっ。・・・・持ち上げられなかった。
「コイツ体重重すぎ」
若干悪口のようなことを呟きながら、彼女の胸ぐらから手を離し、
「どうしたものかなぁ」
悩み、色々と考えていると、
「あっ、そうだ!」
妙案が浮かんできた。
___________
「うっ」
私は小さく声を漏らしながら、意識を覚す。
・・・どうして眠っていたのだろう?
この事を考え始めると、私の耳の奥からは、
『バキバキ』
と言う木がなぎ倒される音と共に、
『ヴォー』
の様な音を立てながら、凄まじい早さで迫ってくる黒い礫の存在を思い出した。
うっ、思い出したら悪寒が・・・・。
当たった後の記憶がない、私は大丈夫だろうか?
鳥肌を立てながら、恐る恐る目を薄く見開く。
すると、私は、
『ズル ズル』
と音を立てながら引きずられていた。
「んっう」
声を上げようとすると、私の口には猿轡がはめられていることが分かった。
___________
(あっ、ヤベ。目覚めちゃったか。魔法で運べば良かったな)
背後から発せられた声に、若干の後悔を抱きながら、彼女の足から手を離し、
「やあ、元気かい。私は超元気だよ」
彼女の横に腰を下ろし、顔を見ながら言うと、
「うぅ!うっぐっうぅ」
くぐもった声と、涙を流されてしまった。
(猿轡外さないと駄目だな。何て言ってるのか、分からん)
心中で思いながら、彼女の猿轡を外すと、鋭く睨まれてしまった。
(・・・そう言えば、彼女を襲撃して、拘束したは良いけど、何をすれば良いんだろう。この後)
その事に頭を悩ませることになった。
何故なら、私は彼女に対する”報復”が目的だったのであり、それ以外に彼女させたいこと、したいことは一切ないのだ。
「どうしようかな」
小さく呟き、少し考えたあと、
「そうだな。君。何て名前なの」
問いかけると、
「貴方に答える名前なんてない」
と返されてしまった。
「まあ、そうだよな」
呟きながら、
(お酒でも飲ませようかな。バカみたいに沢山ある在庫処分にもなるし、多分口も軽くなるだろうし)
そう考え、
「貴方に選択肢をあげましょう。素直に名前を言うか、もしくはこれを飲むか」
笑顔でお酒の瓶を持ちながら言う。
すると、彼女の顔が結構な恐怖に染まった。
(いや、なんでそんなに恐れるんだよ。これ普通にお酒なんだけど)
心中で思いながら、
「早く。答えてください。あと十秒以内に答えないと、これを貴方の口に直接突っ込みますよ」
と宣言をし、
「チクタクチクタク」
相手を焦らせるために言うと、
「分かった!言うから」
数秒後、涙ぐんだ声で返された。
(そこまで怖がらなくて良いのに・・・もしかしたら、お酒が苦手だったのかな。酷いことしちゃったな)
心中で思いながら、
「何て言うんですか」
彼女に迫り問いかけると、
「ない」
と返答がされた。
(・・・『ない』っていう名前なのか。それとも、名前は存在しないって言ってるのか、どっちなんだ』
心中で迷いながら、
「貴方の名前は存在しない、その認識で宜しいでしょうか」
と問いかけると、
『コクコク』
と首が縦に振られた。
「そうですか。分かりました。・・・それじゃあ、そうですね。貴方には何が出来ますか」
取り敢えず魔法が使えるのは分かるが、それ以外には何が出来るのか分からないので問いかけると、
「すっ、少し。考えさせて」
と言われた。
(まあ、突然言われたら、答えられないよな。私だって多分、無理だろうし)
心中で思いながら、
「分かりました。私は少し離れますので、一人で考えてみてください。十分後程度後に返ってくるので」
彼女に言い、背を向け歩いて行く。
すると、
(あっ、死ぬ)
そんな予感と共に、索敵魔法に飛んでくる物が映った。
死にたくはないので、背後に結界を張ると、背後から爆音が響き、
(うん。突っ込んでくるな)
このことが索敵魔法で分かったので、ちょっとだけステップで移動し、久しぶりに取り出す魔法の杖を手に持ち、
(これでいいか。別に)
と思いつつ、先程まで私が居たところに、ナイフ程度の大きさの魔法を突き立てる少女を、勢いよく殴りつけた。
「ぐっあ」
彼女は喘ぎながら、豪快に吹っ飛んだ。
(さて、どうして彼女は元気に動いているんだ?・・・手足の拘束を魔法で千切られたか。いつの間に使われたんだ)
自己の疑問を解決しながら、
「さて、次はどう動くんだい?」
若干間を開けながら、彼女を見下していると、彼女はこちらを睨みながら、犬畜生の様に唸り声を上げ、立ち上がった。
(フフフ。楽しいね。どうしてだろう?)
心中で思いながら、
(恐怖が足りなかったのかな。それとも、ただの見くびりすぎだったか)
反省点をあげるのだった。
久しぶりに登場した魔法の杖は、これからは鈍器として使われます。
理由は、主人公の魔法の威力を倍増させると、普通に人が死ぬからです。
それと、この杖と同時に手に入れた魔剣は、後々部下にあげます。
理由は、切るよりも殴る方が主人公が好きだからです。




